【世界のマンション~バリ島編~ 】発展し続ける世界のリゾート

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【世界のマンション~バリ島編~ 】発展し続ける世界のリゾート

バリ島・サヌール

 インドネシア・バリ島、世界的に有名なリゾート地だ。今回は、島の東側に位置するサヌールという街を紹介する。

 高級ホテルが立ち並ぶ、ヌサドゥアやクタとは異なり、サヌールはやや地方都市感のある街である。バリ島は農業と観光で成り立つ島であるが、サヌールにはその両方の風景が広がっている。繁華街は世界各国から訪れる観光客で賑わっている。中国や韓国、日本からの観光客が多いのかと思っていたが、隣国であるオーストラリアからの観光客がそれ以上に多いように感じた。現地の方々はとても親日である。治安も比較的良く、滞在中に街中で怖い思いをすることはなかった。夜は、観光客をターゲットにした数軒のバーを除き20時くらいには大体のお店が閉店してしまうため、ひっそりとしている。

 インドネシアでは法律上、外国人が不動産を所有することはできないそうだ。外国人がインドネシアに居住しようとするなら、賃貸するしか方法はない。今回私と同行した友人たちは、この話を聞くと「日本も日本人だけしか所有できないようにしたらいいのに!」と反応する。日本では最近、外国人が多くの部屋を所有する一部のマンションなどで、所有者の所在がわからなくなり、管理組合の決議に支障をきたしている等、さまざまな問題が報道されていることが背景にあるのかもしれない。

 サヌールの街は、にぎやかな商店が並ぶ大通りから1本横道に入ると、オレンジ色のレンガ屋根が続く住宅街となる。サヌールに滞在したのは2月下旬。まだ雨期にあたるそうだが、夕方のスコール程度でほとんど雨は降らない。とにかく熱いので日中に外を歩いている人はあまりいない。ほとんどの人は車やバイクで外出しているようだ。

サヌールの街並み

サヌールの街並み

 道路はバリアフリーと言うにはほど遠く、歩道は「ここは階段ではないか」と思うほどデコボコである。車道にはバイクがずらりと並んで駐車している。もしここが日本なら、このすべてが即座に駐車違反でレッカー移動されてしまうに違いない。

サヌール繁華街の通りの様子

繁華街の通りの様子

サヌールの住まい

 現地のバリ人に「住まい」について聞いてみる。写真にあるようなオレンジ屋根の家には、1軒あたり1家族、おおよそ6人から10人くらいで居住しているそうだ。私がお話を伺ったのは、日本人観光客向けのサーフガイドをされている方である。流暢な日本語で「うちは、お父さん、お母さん、奥さん、わたし、子供2人の6人です」とのこと。2世帯、3世帯で一緒に暮らすのが一般的であるようだ。

 「コンドミニアムやアパートメントはありますか?」と聞いてみる。「マンション」という単語は日本人しか使用せず、外国人は使わないと何かの本で読んだことがあるためだ。

 「はい。マンションね。ありますよ。」とあっさり日本語で返される。それでも彼は旅行でしか日本に訪れたことがなく、日本語はほとんど独学で勉強したというから驚きだ。YouTubeの動画を何度も見てひらがなも書けるようになったと言う。日本語ができると給与が高くなるらしく、勉強熱心だ。何十年たっても英語すら習得できない私からすると頭の下がる話である。

 「マンションは、田舎のバリ人が街に働きに来るときに住むところ。だから一人暮らしの人が多いし、お金を稼ぐと田舎に帰ってしまう」そうだ。

 街中を見回すと、確かに集合住宅と思われる建物は、ドアとドアの間隔が狭い。日本のワンルームマンションと同じような外観である。「For Rent」の看板が工事中の建物の門の前にはためいていた。日本で言うところの出稼ぎ労働者が、サヌールの観光産業を支えているのかもしれない。

サヌール建築中のワンルームマンション

建築中のワンルームマンション

 さらに街中を進んでいくと、だんだんと寂れてくる。「これ以上進むのは怖いかな」というあたりで引き返す。大通りから離れるほどに空き家が多くなる。これだけ人口の多い国で、空き家というのも不思議な気がする。アジアの発展途上国の特徴なのであろうか、今まで訪れた東南アジアの国々でも、同じエリアににぎやかな街区と寂れた街区が混在する。

 現地の人に「なぜ空き家が多いの?」と聞いてみたが、「住む人がいないから」という答えにならない答えが返ってきた。私たちのように空き家に対する問題意識を持っていないのかもしれない。インターネットで検索してみても、外国人向け高級コンドミニアムに関する空き家情報は多く見かけるが、住宅の空き家問題についての情報は得られなかった。私の推測ではあるが、現地では新築住宅の建設がそこかしこで進められており、古い家を壊さずとも、新しい家に住み替えることは可能だ。そんな事情が古い家を放置することにつながっているのではないだろうか。

バリ島の空き家

バリ島の空き家

 日本でもバリ島でも、津波の危険に関する意識は高いようだ。海岸沿いの建物に求められるのが津波避難場所としての機能である。バリ島でも街中に津波に関する標識が立っている。「TSUNAMI」という日本語が浸透しているのが分かる。

バリ島の津波避難用標識

バリ島の津波避難用標識

津波の標識デザインは、世界各国で共通と知ってはいたが、日本のものと同じであることを確認するとなんだかうれしくなる。

沖縄県にて撮影した津波避難用標識

沖縄県にて撮影した津波避難用標識

 海岸沿いには、多くの飲食店やサーフショップが立ち並ぶ。サーファーはボートで外洋に出て、波を楽しむ。岸ははるか遠い。日本の湘南海岸のようにビーチからサーフボードを浮かべるスタイルではない。「津波が来ても逃げようがないよね」バリのサーファーの多くがそう言って笑う。

バリ島サーフショップ

サーフショップ

 今日もサヌールの海岸には、世界中から観光客が押し寄せ、その観光産業に携わろうとバリ島中から人々が集まっていることだろう。日本から少し目を離して、諸外国の住宅事情を見聞してみると日本のマンションの新しい側面が見えてくるかもしれない。


【世界のマンション】シリーズ

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久保 依子

執筆者

久保 依子 マンションみらい価値研究所 所長

マンション管理士、防災士。不動産会社での新築マンション販売、仲介業を経て、大和ライフネクストへ転籍。マンションフロント担当、賃貸管理担当などを経験したのち、新築管理設計や事業統括部門の責任者を歴任。一般社団法人マンション管理業協会業務法制委員会委員を務める。著書『マンションの未来は住む人で決まる』が第15回不動産協会賞を受賞。

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