韓国の主な住宅形態はマンション
マンションは韓国で主に供給される住宅の形態である。韓国の住宅法では、一つの建物の中で共用部分があり、各住戸が独立して生活ができる住宅を共同住宅と定義している。さらに5階以上のアパートと4階未満の連立・多世帯住宅で分けることができるが、その中でもアパートは鉄筋コンクリート造で、共用部の管理のために住民組織を作って、専門的な管理を行うという点で日本のマンションと似たような形であり、ここではアパートのことを韓国のマンションとして紹介したい。
韓国の大都市部では、至るところ団地のように1箇所に複数棟のマンションが立ち並んでいる様子を見かけることができ、海外からの訪問客にとっては非常に印象的な光景に映ることだろう。
その理由は最新の住宅統計から説明することができる。韓国の総住宅1,881万戸のうち、アパートは1,195万号(※戸と同等)で63.5%を占める。また、平均的に7棟、約600号である。
マンションとコミュニティ
韓国では住宅不足の時期に住宅供給の手段として、複数棟が立ち並んだかたちでマンションの供給が多くなされており、たくさんの人たちが集まって同じ建物の中で生活するということで起きる管理問題や生活問題に対応するため、管理に関する法律が制定され、管理の効率化が必然的に望まれてきた。
特に法律では、昨今、社会的にも問題である騒音、ペット飼育、タバコの匂いなどを最小化するため、住民が共通のルールを守りながら顔が見える距離感で生活するようマンション内コミュニティの活性化を図る規定も設けられているのが印象的だ。
マンション供給時からコミュニティを考える
その一環として定められた「住宅建設基準等に関する規定」では、新しく建てられるマンションの場合、多様なコミュニティ空間を設置して住民間の交流を進めている。ちなみに、同規定では100戸以上の住宅を建設する場合、戸当たり約2.5平米の面積を住民共同施設として設置するように義務付けている。(1,000戸以上の場合は戸当たり2平米の面積に500平米を合わせた面積)
また、500戸以上の団地の場合は、敬老堂※やプレイロット、保育所、住民運動施設、スモールライブラリ、小学生放課後保育センターの設置を義務付けている。
こういった行政の施策を追い風に、マンション生活におけるコミュニティ空間への社会全体の関心はさらに高くなりつつあり、マンションの供給者は法規定に提示された空間以外にも、写真にあるような映画上映室や入居者専用食堂など、さまざまな機能を持つ空間を提供している。大手の建設会社はコミュニティ施設の計画のためのガイドラインを作成し、最新の施設トレンドやマンション購入検討者側の要求を反映することでブランドアイデンティティを強固にする傾向にある。
※ 共用施設(部屋)であり、高齢者を対象としたカルチャースクールなどが開催される。
空間から広がるコミュニティ活動
その中で住民間の交流を進めて実際のコミュニティ活性化を図る活動が注目される。スモールライブラリは図書館の役割だけではく、さまざまな交流イベントが催されてコミュニティ活性化のためにも活用されている。
スモールライブラリで行われるコミュニティ活動は階層や世代を問わない。住民の交流によってマンション生活で起こりうる共同生活問題や管理問題を賢く克服できることが期待される。そのため、(前述の通り)韓国では共用施設の設置を法制度として定めている面がある。
今回は韓国のマンションで生活する中で重要なキーワードとなるコミュニティについて述べた。こうした共用施設の充実を背景にした各種のコミュニティ活動は、入居者におおむね好意的にとらえられている。
日本と韓国のマンション管理は、同じような部分もあるが、マンション管理の根拠となる法律が異なり、管理現場の人(責任者)の配置などが大きく違うところだろう。例えば、一定規模以上のマンションには、国家資格を持つ責任者が現場業務にあたることが義務付けられている点などだ。機会があればそうした韓国のマンション管理状況についてもご紹介したいと思いながら文を終える。