理事会や専門委員会の運営に関する使用細則~理事会傍聴細則、専門委員会細則、文書管理細則~

理事会・総会管理規約・細則
理事会や専門委員会の運営に関する使用細則~理事会傍聴細則、専門委員会細則、文書管理細則~

 理事会が管理組合の執行機関であることは言うまでもない。しかし、理事のなり手不足などの問題や居住者から寄せられるクレームへの対応など、理事会の悩みは尽きない。今回は、こうした理事会の葛藤が見え隠れする使用細則を紹介しよう。

1.理事会の傍聴に関する使用細則

 理事会運営細則を定めている管理組合は多い。ここで紹介するのは、役員ではない区分所有者が理事会を傍聴したい場合について定めた使用細則である。
 区分所有者が理事会に参加しようとするなら、その都度、理事会にその旨を通知し、承認を受ける必要がある。例えば、特定の事項について理事会に審議してほしいと要望する区分所有者が、その理事会に出席することを希望した場合も、理事会に対して参加したい旨を通知する必要がある。
 区分所有者の理事会への参加については、ポジティブな意思をもって参加する場合と、ネガティブな意思を持って参加する場合に二分される。
 まず、ポジティブな意思というのは、例えば輪番制で来期の理事の候補となっており、今期の理事会の様子を見学したいと言う場合や、専門委員会の委員になっており、委員会が具申した内容を理事会がどのように審議しているかを確認しようとする場合などである。こうしたポジティブな参加の場合はあまり問題は生じない。
 一方、ネガティブな意思をもって参加する区分所有者がいた場合、理事会との間で軋轢が生じることがある。例えば、なかなか解決しない特定の問題について理事会に対応を迫る区分所有者がいたとしよう。何度も繰り返される強硬な要望に、理事は心理的負担を感じることもあるだろう。また、理事長が許可していない不規則発言を繰り返すなど、区分所有者の傍聴が理事会の議事進行の妨げになる場合もある。
 しかし、明確な規定がないと、理事会は区分所有者からの理事会の参加の要望を断りにくい。こうした場合に、区分所有者の理事会参加について使用細則を定めることも有効だろう。
 下記の使用細則は、ネガティブな意思をもって理事会に参加する区分所有者の存在を発端として制定されたようである。理事会での発言は認めないなどの厳しい規定を置いている。傍聴しようとする区分所有者への情報公開の範囲などは、ポジティブな意思をもって参加する区分所有者に対して規定を置く場合にも参考になるだろう。

理事会の傍聴に関する使用細則
第1条      (目 的)
 理事の会議(以下、理事会)の公正かつ円滑な運営、及び透明性の確保を目的に、理事会の傍聴に関し必要な事項を定める。

第2条      (理事会の公開条件)
 理事会は、理事会運営の透明性を確保するため、第3条第1項に定める非公開事項を除き、原則としてこれを公開するものとし、理事・監事以外の組合員の傍聴(以下「傍聴人」という)の参加を認めるものとする。

第3条      (非公開事項)
 理事会は、区分所有者の個人情報を保護し、公正な業者選定を行うなどの目的のため、次に定める場合は理事会を非公開とすることができる。

 一      規約第〇条(管理費等の徴収)に定める管理費等に滞納がある区分所有者等の個人情報を含む事項を審議する場合
 二      使用細則第〇条(専有部分及び専用使用部分の使用)に定める事項に違反するか、違反する可能性のある区分所有者または居住者の個人情報を含む事項を審議する場合
 三      修繕工事、保険更新、設備品購入等、公募を含む見積価格、並びに業者選定を審議する場合

2. 理事会で理事・監事に配布する資料(以下「理事会資料」という)は原則として傍聴人は閲覧することができない。また、複写は配布しない。

3. 議長は、以下に定める事項に該当する場合、傍聴人の退席、あるいは傍聴人に指示を命じることができ、傍聴人はこれに従わなければならない。

 一      前項第一号から第三号に定める事項を審議する場合
 二      前項の他、区分所有者の個人情報に関わる事項を審議する場合
 三      傍聴人が直接的、間接的に利害関係にある事項を審議する場合
 四      傍聴人の不規則発言・拍手等、議事進行の妨げとなる行為があったとき
 五      議長が正常に議事を進行する上で、傍聴人の同席が不適切と判断した場合

第4条      (傍聴の申請・承認)
 理事会の傍聴を希望する組合員、またはその組合員と同居する配偶者又は成人に達した一親等の親族は、様式〇による「理事会傍聴申請書」(以下、申請書)を理事会開催日の3日前までに理事会に提出し、理事長の承認を得なければならない。

2. 理事長は、傍聴申請の承認または不承認を行う。

第5条      (傍聴人の数)
 公正かつ円滑な理事会運営に支障が出ない範囲において、理事会の許可した人数とする。

第6条      (傍聴人の発言)
 傍聴人は、理事会の議事中、発言することができない。

第7条      (遵守事項)
 傍聴人は次の事項を遵守しなければならない。

 一      理事・監事と同等の守秘義務を負うこと。
 二      傍聴人は、不規則発言(不規則発言に近い意見表明等も含む)や野次、拍手等、議事進行の妨げとなる行為や、討論・決議に対し公然となる可否を表明する行為をしてはならない。
 三      理事会の録音、録画をしてはならない。
 四      携帯電話は電源を切るか、着信音等が鳴らないようにしなければならない。
 五      理事会で知り得た情報をもとにした意見募集等をしてはならない。

第8条      (規定外事項)
 本細則に定めのない事項については、規約又は総会の決議で定めるところによる。

第9条      (細則の改廃)
 本細則の変更又は廃止は、総会の普通決議を経なければならない。

2.修繕委員会細則

 マンションの専門委員会の中で最も設置が多いのが修繕委員会である。
 委員会の設置にあたり、委員会細則を定めている管理組合は多い。規定の内容としては、概ね招集の方法、決議の方法、役員の役割などであり、マンション標準管理規約の理事会の規定を下敷きにしているようである。ここで紹介する修繕委員会には、専任委員のほかに理事会と兼務している委員がいる。理事会とは異なるメンバーのみで構成されるケースもあるが、この管理組合はメンバーを重複させることによって情報の共有を図ろうとしている。

修繕委員会細則
第1条      (総 則)
 この細則は、〇〇マンション管理組合規約第〇条の趣旨に基づき、理事会の下部組織として理事会を補佐し助言する諮問機関の必要事項を定めることを目的とする。

第2条      (名 称)
 諮問機関は、〇〇マンション管理組合修繕委員会(以下「修繕委員会」という。)と称する。

第3条      (目 的)
 修繕委員会は、マンションの維持管理上、都度発生する大規模修繕に際し、修繕に関する事項について調査・検討・協議し、工事の円滑な実施に向けて理事会を補佐するものとする。

第4条      (組 織)
 委員会は、管理組合の修繕委員(以下、「専任委員」という。)約〇名及び理事会役員(以下、「理事委員」という。)〇名で組織する。

第5条      (役 員)
 修繕委員会に次の役員を置くものとし、互選により選任する。
 〇委員長   1名
 〇副委員長  1名 
  原則として当該期の副理事長が任にあたるものとする。
  またその選任については、当該期理事会の決定で変更することができる。
 〇広報・書記担当委員    約〇名
  原則として当該期の書記担当理事が任にあたるものとする。
  またその選任については、当該期理事会の決定で変更することができる。
 〇計画・技術・予算担当委員 約〇名

第6条      (公 募)
 修繕計画に基づき、必要とされる大規模修繕工事が予想された段階で、当該期の理事会は専任委員の公募を実施することができる。
大規模修繕工事の規模や、想定期間により、理事会の判断で適時妥当な人員の公募を実施することができる。

第7条      (任 期)
 専任委員の任期は公募による選任後、当該期計画の大規模修繕工事施工が終了した時点(概ね1年を想定)とし、理事会と修繕委員会の協議により決定する。理事委員は管理規約に定める理事会役員任期に従うものとする。
 2) 前項による理事委員の任期途中の交代は、理事会選出の理事が委員に就くものとし、任期を継承する。
 3) 専任委員の管理規約第〇条第〇項に定める理事会選任は妨げないものとし、理事会理事、委員会委員を兼務する。
 ただし、専任委員が理事長となる時は委員会の委員を辞任し、理事会選出の委員を補充するものとする。

第8条      (修繕委員会)
 修繕委員会は、委員長が必要の都度招集するものとする。
 また必要な場合は、委員長の了解を得て理事長も招集できる。
 2) 理事会への提言に関する議事の議決は、出席委員過半数の同意をもって決するものとする。

第9条      (活動内容)
 委員会は施設の維持管理を目的とする大規模修繕計画にかかわる次の事項を審議、実施し、理事会に活動をその都度報告、提言するものとする。
 ①      総会で承認された工事予算内での修繕工事の仕様及び修繕箇所の決定。
 ②      施設維持のための調査、点検及び補修箇所の指摘。
 ③      計画実施に関する情報収集及び進捗等問題点の検討と対策。
 ④      専門業者選定に関する理事会への助言。
 ⑤      その他、理事会から諮問された上記に付随する事項及び管理組合員の要望に関するもの。

第10条    (経 費)
 修繕委員会の運営に必要な経費は、管理組合が負担するものとする。
 ただし金額の多寡にかかわらず、事前に理事会へ通知し承認得ることとする。

第11条    (附 則)
 この修繕委員会細則の改正は、総会の承認を必要とする。

3.文書管理細則

 マンションの管理事務室の多くは、十分な面積が取られていない。狭い場所に引渡し書類、毎年の決算資料、理事会資料や脚立や清掃用具、防犯カメラのモニターなど、あらゆる書類や備品が置かれる。年を追うごとに増加していく書類や備品に悩む管理組合は多い。
 こうした状況を解消するために文書管理細則を設け、書類の保管期間を決め、期限が到来したら廃棄している事例もある。当社受託管理マンションのうち、1,697組合を調査した結果、文書管理細則を置いている管理組合は10.8%であった(図1参照)。
 さらに、費用はかかるが、竣工図など永久的に必要な書類はスキャニングして電子化するなどの工夫も有効である。

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文書管理細則
第1条      (目 的)
 この細則は、〇〇マンション管理規約(以下「規約」という。)第〇条に基づき文書の整理、保管および保存ならびに廃棄等(以下「文書管理」という。)に関して、必要な事項を定めるものとする。

第2条      (定 義)
 この細則において、文書とは、管理組合の業務に係わる書類のうち、管理事務室で保管するものをいう。

第3条      (保存制限)
 保存制限とは、文書が廃棄されるまでの年限をいい、その基準は別に定める「管理事務室保管文書保存年限基準」による。
 2. 保存年限の起算は、原則として文書の成立した日の属する会計期の翌期の初めから行うものとする。ただし、別に定める場合は、その定めに従うものとする。

第4条      (廃 棄)
 保存期間の満了した保存文書は、理事会の責任において廃棄する。
 2. 文書の廃棄は、不正利用、秘密漏洩に十分に留意し、焼却または溶解もしくは裁断等の方法により行うものとする。

第5条      (個人情報の管理)
 組合員等の個人情報が記載されている入居届、転居届、その他各種届出書類については、施錠保管等の方法により厳重な管理を行うものとする。

第6条      (細則の改廃等)
 この細則の変更又は廃止は、総会の決議を経なければならない。ただし、この細則の変更が規約の変更を必要とする事項であるときは、規約の変更を経なければすることができない。

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 理事のなり手不足が管理組合の課題になって久しい。理事の業務負担を減らすために、会議の開催に関する使用細則などを定め、その都度、理事会を開催して協議せずに済むようにすることも有効な手段だろう。

理事会や専門委員会の運営に関する使用細則~理事会傍聴細則、専門委員会細則、文書管理細則~[0.5MB]

久保 依子
執筆者久保 依子

マンション管理士、防災士。株式会社リクルートコスモス(現株式会社コスモスイニシア)での新築マンション販売、不動産仲介業を経て、大和ライフネクストへ転籍。マンション事業本部事業統括部長として主にコンプライアンス部門を統括する傍ら、一般社団法人マンション管理業協会業務法制委員会委員を務める。

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