「マンションコミュニティ」ってなに?――さぁ、どうする

コミュニティ
「マンションコミュニティ」ってなに?――さぁ、どうする

辞書を引く。
Community――「同士・同志の集団」「共同体」「目的を共有している仲間」
同じ共通点を持った人間の集まり・生活を共有している仲間という意味だ。
ワークショップにおいて、コミュニティを訳すと、どんな言葉になるかと問いかけてみる。すると「共同生活」「仲間」「地域社会」「行動を共にする者たち」など、いろいろな回答が飛び出す。どれも当たっているが、微妙に解釈に違いがあるのは拭えない。コミュニティとは非常に便利な言葉だが、便利であるがゆえになんとも曖昧だ。
管理組合では、「マンションコミュニティ」という言葉をよく使う。しかしそれを、マンションに住まう人の共同体と表現したところで、どうもぴんとは来ない。ましてや、コミュニティをマンションに住まうすべての人が、同じ意味合いでとらえているかは、いささか疑問だ。

コミュニティ、それを一言でいえば「縁」

さて、私が尊敬する、あるコミュニティ活動のファシリテーターが、「コミュニティ」を日本語で一言、「縁」という言葉で説明してくれたことがある。まさに「袖触り合うも多生の縁」といったところだ。
たまたま生活の場が一緒になった、たまたま隣同士の部屋になったなど、つながりそのものを一言で「縁」と言い現したのだ。たとえば、子供同士が友達で親同士も仲良くなる「子供縁」、PTAの会合で友達になる「学校縁」、たまたま偶然にも同じマンションを購入した者同士の「マンション縁」、SNSや趣味の領域でつながっていく関係も「縁」という言葉に集約される。

マンションコミュニティの4つの領域

この「縁」でできているマンションコミュニティ。それを分析してみると、さまざまな状態があることがわかる。わかりやすくするため、下記のイメージマップを参照いただきたい。
たとえば、縦軸に「全員参加」と「任意参加」、横軸には「共同体型」と「価値観型」とする。

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「全員参加×共同体型」
まず管理組合活動の領域は、ここに位置する。そもそも管理組合とは、区分所有法で全員が加入するものと定められている。また、管理費等を収めなければ、最悪、競売にかけられコミュニティから排除されてしまう。

「任意参加×共同体型」
一方、近所付き合いや挨拶などは「任意参加」といえる。挨拶をしなくても「変わった人」と思われることは否めないが、管理費未納のように競売にかけられることはない。しかし、騒音など、多大な迷惑を隣近所にかけてしまえば、訴訟などの大問題に発展してしまうことから「任意参加×共同体型」という領域なのだろう。

「任意参加×価値観型」
続いて、「任意参加×価値観型」だが、「同じマンションに住んでいるのだからみんなで一緒に楽しみたい」「喜びを分かち合いたい」という領域になる。マンションで開催される夏祭りやクリスマスパーティなどのイベントがそうだ。生活していく上での相互の利害という関係だけでなく、価値観でのつながりを深めることにより、管理組合運営や近所付き合いなどのより良好な基礎を築いていくきっかけになる。これが、「価値観」というつながりになるのだ。

「全員参加×価値観型」
この領域については非常に重要になるので、次項にて詳しく紹介する。

「全員参加+価値観型」の領域

“任意ではなく、全員が価値観でつながっていく”とは、一体どんな状態なのだろう。
代表例のひとつは、大地震がマンションを襲ったような場合だ。大地震ともなれば全員が被災者になり、必然的に全員参加という状態になる。被災生活期をマンション内で助け合い、建物の復旧のために全員が強い意志を持って臨まなくては、これからの生活復興もままならない。なんとかするためにみんなで助け合わなくては、という価値観でつながるべき領域といえるのだろう。
もう一つは、高経年マンションのケースだ。建物も人も老いる中で、次世代に繋ぐための策を立て再生していかない限り、空き家が増え建物の修繕もままならず、そしてマンションとしての寿命が尽きることになる。全員の問題として、マンションとしての将来のビジョンをすりあわせておかないと、いつか切迫した時がくることになるわけだ。
もちろん、震災における生活復興も、高経年マンションの再生においても、紆余曲折を経て結論を出すまで大変な時間と労力を要することになる。もちろん、ハッピーエンドになるかどうかはわからないが、それぞれの価値観をすり合わせ、なんらかの結論を導き出す場面なのだ。

イメージマップから「コミュニティ」という言葉を整理してみると、改めて深い言葉だと気づかされる。マンション住民は、これら4つの領域のコミュニティと付き合いながら暮らしていくことになる。共同住宅であるマンションは、個人の財産であり、また全員の財産でもある。一つの不動産に複数の所有権を持つマンションという存在。そこには日々を営み人生を謳歌する多くの人間がいる。だからこそコミュニティが重要になってくるのだろう。

丸山 肇
執筆者丸山 肇

マンション管理士。株式会社リクルートにて住宅情報北海道版編集長、金融機関への転籍を経て、大和ライフネクスト入社。管理企画部長・東京支社長などを歴任。マンションみらい価値研究所にてコラムニストとして活動。

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