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2021/10/22
NPO法人マンションサポートネット8周年記念シンポジウム 「マンションの居住価値を決める『持続可能な管理』とは」を開催
続きを読む7月31日(土)、キャンパスプラザ京都(京都市下京区)において、NPO法人マンションサポートネット主催のシンポジウム「マンションの居住価値を決める『持続可能な管理』とは」が開催されました。 コロナ禍の状況を鑑み会場での参加人数を絞り、オンラインとの併設で約90名の参加となりました。不動産としての「資産価値」のみならず、マンションに住まう人たちの今や未来の幸せを見据えた「居住価値」という考えを、多角的に捉えるための講演とパネルディカッションが行われました。 基調講演に登壇したのは、日本マンション学会会長で京都橘大学教授の鈴木克彦氏。『持続可能な管理とはマンションの居住価値を決める「持続可能な管理」は?』と題し、京都市内の分譲マンションの実態や海外の居住価値の高いマンションの実例などを交えて、参加者に語りかけました。 日本マンション学会会長・京都橘大学教授の鈴木克彦氏 マンションのストック戸数が約675.3万戸に達し(令和2年末時点)、国民の1割超がマンションに居住する時代。「戸建住宅に住むまでの仮の住まい」から、永住思考の高まりにより、「終の住処」という存在として捉えられるようになりました。住民の年齢層が高くなるほどその傾向は顕著で、高経年のマンションに住まう人たちの高年齢化がもたらす、建物と住人のいわゆる「2つの老い」が進行している現状が浮き彫りになっていると鈴木氏は指摘します。 それにより「区分所有者の減少」「役員の担い手不足」が加速し、管理組合の機能が低下しているマンションが増加。適切に維持管理されず「管理不全」に陥るマンションの増加を鑑み、令和2年6月に「マンション管理の適正化の推進に関する法律」(平成12年法律第149号)が改正されました。ここに地方公共団体が管理組合に対して必要な助言及び指導ができる旨の規定などが盛り込まれたことで、自治体と管理組合との関係性がドラスティックに変化。「マンションの価値は管理で決まる時代」への対応が急務となりました。 そんなマンションを取り巻く状況を知るべく、京都市内の分譲マンションの実態調査(令和元~2年)に調査員としてかかわられた鈴木氏。「築30年以上の高経年マンションが10年後に全体の半数以上になる」「住戸数50戸以下の小規模マンションが他都市に比べて多い」という地域性を把握したうえで、「築年数が古いほど計画的な維持管理・修繕が十分でない」「住戸数の少ないマンションほど『要修繕』と判定される比率が高い」という傾向が表れていると説明しました。しかし一方で、「問題なし」とされるマンションの割合が築年数を40年を超えても大きな変化が見られないことから、築年数そのものよりも、持続可能な管理体制が建物の整備状況を左右すると強調しました。 それでは、マンションの居住価値を決める持続可能な管理とは、一体どのようなものでしょうか。鈴木氏は経済効率ではなく、精神的な豊かさや生活の質の向上を目指すのが21世紀の「成熟社会」であるとし、成熟社会におけるマンションの価値とは「不動産の価値を、時間の蓄積で得られた資源や生活の価値、すなわち『暮らし(居住)の価値』に置き換え、共有していくこと」と強調しました。 そのためのキーワードに「サスティナビリティ=持続可能性」「インクルーシブネス=多様な人材を排除せず受け入れる包摂性」「レジリエンス=想定外のことを乗り越える回復力」を挙げ、「お互いが寛容の心をもって多様性を受け入れるコミュニティを形成し、様々な社会的危機をともに乗り越えるしなやかな強さを持ち、誰もが永く住み続けられるマンションにするための管理を実現することができれば、必然的にマンションの居住価値は高まります。それこそが私たちが目指すべき、持続可能なマンション管理ではないでしょうか」と語りかけ、参加者の理解を求めました。 「誰もが永く住み続けられるマンションにする管理により、マンションの居住価値は高まる」と話す鈴木氏。 休憩に引き続き行われたのは、「管理計画認定制度に備える管理組合の取り組み」と題した、NPO法人マンションサポートネット理事長・佐藤武氏による講演です。佐藤氏はマンション管理士、一級建築士の資格を持ち、これまで様々なマンション管理組合のコンサルティングを手がけてきた経験から、マンション管理適正化法改正にともなう「管理計画認定制度」の実施をにらみ、管理組合が留意すべきポイントを解説しました。 NPO法人マンションサポートネット理事長・佐藤武氏 今回の法改正は、国によるマンションの管理の適正化の推進を図るための基本方針の策定を目的としており、①管理適正化の推進に関する方針の明確化と役割の強化②地方公共団体による能動的な関与の円滑化③地方公共団体によるマンションの実態把握、専門家派遣等の支援が柱となっています。 「マンション管理適正化推進計画制度(任意)」「管理計画認定制度」を実施し、必要に応じて地方公共団体が管理組合に対して助言指導や勧告を行うことができるとするなど、行政がマンション管理により深く関わる姿勢を示したものといえます。 佐藤氏は、昨年12月に神戸市が決定した「神戸市マンション管理の適正化の推進に関する要綱」を例に、地方自治体によるマンション管理の実態把握と評価に対して備えるべきポイントを挙げていきました。神戸市の「マンション管理状況届出書」では①管理形態(全部委託/一部委託/自主管理)②管理組合の有無③管理者(単独/理事会方式/第3者管理方式)④管理規約(有無/最終改正年)⑤区分所有者名簿(請求一覧表/連絡名簿)の有無⑥居住者名簿(緊急連絡名簿/要援護者名簿)⑦空き住戸の割合⑧占有者(賃貸化等)住戸の割合などが問われており、マンション管理の運営実態について、行政としてこれまで以上に突っ込んで知ろうとする意図が伺えます。 佐藤氏は「マンション管理標準指針に沿っていれば、行政からの一定の評価は得られる」とし、「大切なのは、建物設備の管理とともに日常の管理が適正に運営されていること、民主的な意思決定システムが継続されている管理組合であること、公正・公平・公開の原則により組合間の信頼度が高いことであり、それによりマンションの居住価値を向上させることです」と強調しました。 シンポジウムの最後に開催されたのは『最近の相談事例から〜管理組合あるあるFAQ〜』と題したパネルデスカッション。パネリストに講師の鈴木氏、佐藤氏、さらには弁護士でマンション管理士の小林靖子氏、コーディネーターに北海道からリモート参加した丸山氏を迎え、多くのマンションで起こりうる問題を解決に導くための考え方や、落としどころに持っていくためのプロセスを共有するための議論を展開しました。 北海道からリモート参加のマンション元気ラボ主筆コラムニスト・丸山肇氏をコーディネーターに行われたパネルディスカッション 最初の質問は「標準管理規約が見直されたこともあり、『管理費からの自治会への支出は、明確に除外すべきでは』と管理会社からアドバイスをもらった。しかし、理事の中には京都のマンションでは、自治会との関係や実情を考えると、難しいのではという意見も多い。さて、どう考えればいいのでしょうか?」というもの。 京都のマンションコミュニティの実情に詳しい鈴木氏は「京都は明治時代から引き継がれている『学区制』に基づき、独特な自治会活動が行われている。その学区内にあるマンションでは管理組合活動の一つとして、祭などの自治会活動に積極的に参加することが慣例となっており、他の地域と比べると自治会との結びつきが強いことから、管理費と一緒に自治会費を徴収することも無視できない状況にあるのではないか」と説明。 小林氏は「法的な観点からすると、管理組合と自治会は目的や団体の性質が異なるため、切り離して考えるべきではあるが、それが難しい実態があることも事実。管理組合は地域のコミュニティ形成に重要な位置付けにあることを加味し、個別かつ具体的に検討していくべき」としました。 佐藤氏は自身の豊富な経験から「管理費から自治会費を払う慣例は、徐々に是正していくべきではあるが、管理組合が管理費等といっしょに自治会費を自治会に代わって徴収する場合でも、入って来る自治会費に対して自治会に支払う自治会費を同額にするなど、補填が発生しないように収入と支出のバランスを維持し峻別を図ることが大切。」とアドバイスしました。 2問目は「平置き駐車場の空きが数台分あり管理組合の収支を圧迫していた。理事会で、外部貸しで収入を得るために住民の車両を移動してもらい、外部者に使いやすい場所を区分し確保する案を総会にかけることにした。議案書配布の直前になって理事長が「普通決議ではなく特別決議にすべき」と思い直したが、改めて理事会を開催する時間がないため書面にて理事全員の合意をもって理事会の決議としたが、総会を招集し特別決議に変更することはできるだろうか?」というもの。 丸山氏はこの問題を①駐車場の外部貸し、そのための駐車区画の変更も含め、普通決議か特別決議かという点②開催の時間がない場合の理事会の書面決議は有効かどうかという点③総会の場で、普通決議から特別決議への変更は有効かどうかという点に分解し、それぞれパネリストの見解を聞きました。 ①について佐藤氏は「駐車場の形状や効用の著しい変更を伴うか否かの判断からすれば、同じ駐車場であり普通決議でも可能という見方もできるが、このケースでは事業収益を得ることや管理規約の変更なども含めて議論するする内容のため、特別決議が相当」という見解を示しました。 ②③については小林氏が解説。「標準管理規約では、理事会では理事が集まり意見交換をしたうえで結論を出すことが原則となっており、書面での決議は認められていない。また共用部分の変更、規約の設定変更という管理上重要なトピックスについては、総会を招集する通知に議案の要領を書いておかなければならず、総会の場で変更することは不適切。慎重な判断が要求される議案でもあることから、仕切り直して新たな総会の場で特別決議として扱うべき」としました。 3問目は、多くの管理組合にとって身近な質問。「相続人全員に相続放棄されて塩漬けになっている部屋を何とかしたい。何か良い方法は無いのか?」というものでした。 これに対し小林氏は「相続放棄となれば、管理費等が入ってこないことになることから管理組合が利害関係者にあたる。裁判所への予納金を用意して申し立てを行って相続財産管理人を選任。売却を図ることで区分所有者を変更することは可能」としました。 佐藤氏は「相続放棄がされた物件でも、マンションとしての流通性があれば売却などにより所有者不在は解決する。問題は相続すること自体が“負”動産になっているケースだ。売るに売れず、貸すに貸せず、管理費等や固定資産税などを負担し続けることになってしまう」と警鐘を鳴らしました。 これに対し鈴木氏は「空き家問題は深刻さを増している。新たな区分所有者を探すという目先の解決ではなく、住み続けたい気持ちが湧き上がるようなマンションにすることで解決していくべき」と強調。さらに丸山氏は「マンション全体として、現在の居住価値や次世代を担う人が住み着いてくれる建物であるかを見定めて考えないことには、本質的な解決にならない」と付け加え、このシンポジウムの主題である持続可能なマンション管理の重要性を改めて説きました。 最後は「一人住まいの70歳くらいの女性から嫌がらせを受けている。管理組合名で厳しめの勧告書を提出したり、警察から直接注意してもらったり、行政の担当者にも訪問対応してもらったりしたが、一向に収まらない」という相談。この女性が仮に認知症を患っているとした場合どう扱うべきかについて、それぞれの意見を交換しました。 佐藤氏は「マンションの高経年化と住民の高齢化に起因する問題は多い。まずは地域包括センターとも連携し、このような住民を日常的に気にかけ、第一連絡先を管理組合として把握することが重要」と語り、小林氏は「認知症の方は、ゴミ捨てなどちょっとしたことの仕組みがわからず、悩みを抱えていることが多い。その人の行動を責めるのではなく、一緒に助け合える関係性を構築していくべき」としました。このテーマの最後として鈴木氏は「歳を重ねれば誰にでも起こりうる問題。自分自身の問題として、様々な事情を寛容な気持ちで理解し、受け入れるコミュニティを構築することが解決につながる」と力説しました。 会場内では企業によるブースが設けられ、大和ライフネクストがAIを駆使した新しいマンション管理技術を紹介するなど、多くの参加者の関心を集めていました。
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2020/11/11
「令和2年度 第2回マンションネットセミナー『節約の美徳が管理組合の“貧困”を招く』」を開催
続きを読む主催:NPO北海道マンションネット 9月26日(土)、札幌資料館(中央区大通西13丁目)にて「令和2年度 第2回マンションネットセミナー『節約の美徳が管理組合の“貧困”を招く』」が開催されました。 本セミナーは、コロナ禍の緊急事態に鑑み、定員数は三密を避けた20名を最大とし、それ以外の方には“ネットセミナー”としてオンラインによる情報を提供する形式で実施しました。これまでに経験したことのないセミナー形式であり、問題なく開催できるのか、またどのような反響があるのかなど関係者にとっては実験的なセミナーとなりました。 会に先駆け「NPO北海道マンションネット」の理事長代行・佐藤慎二氏が開催の挨拶をし、コロナ禍のご時世を憂うと共に、今だからこそ新しいチャレンジをしていきたいという意気込みを露わにしました。 その後の基調講演では、マンション管理士の丸山氏が登壇。「節約の美徳が管理組合の“貧困”を招く」というテーマに於いて講演しました。「節約」と「倹約」という、一見すると似たような意味を持つ言葉の“行き違い”をテーマの軸に据え置き、行き過ぎた「節約」の間違いについて事例を交えて解説しました。 念のためおさらいしておきますが、「節約」と「倹約」という言葉の違い──あなたは明確な説明ができますか?まず「倹約」から見ていきましょう。この意味は「費用を切り詰めて、お金の無駄を省くこと」──しかし転じて「貯め込んだお金はここぞというときに投資する」と解釈することができます。一方「節約」を見ていくと「無駄を省いて切り詰める」ということではありますが、「お金だけでなく、なんでもかんでも切り詰めること」とも捉えることができます。 今回はこの「行きすぎた節約」が招く貧困について紐解きます。 管理における「節約とは何か」を考えるにあたり、まずはセンセーショナルな言葉で喚起します。大ヒットとなった著書『金持ち父さん 貧乏父さん』(ロバート・キヨサキ著)の一節を引用し「マンションはあなたにとっての負債なのか」と呼びかけます。この本によれば、たとえ住宅ローンを支払い終わっていたとしても、持ち家とは負債であり、固定資産税然り、管理費や維持費など必ずお金は出ていく。しかし「お金と人生に対しての姿勢」が正しければ、“節約の仕方”を間違わないと解説しました。 さらに丸山氏は、「マンションを所有していることは、すでに“負債”を抱えていることであり、その節約の仕方が今後、負債を大きくするかどうかの鍵を握っている」と語りかけます。 では間違った節約の仕方とはなんのなのでしょう。それについて丸山氏は「悪い節約例」として下記の通り3つの事例を挙げました。 ① 「積立金を値上げしてでも工事ができる費用の準備をすべきなのに、問題の先送りをしたことにより、費用 が かえって 増加してしまった」という 事例 ②「総会で質問や文句が出ることを恐れ、長期修繕計画の時期を変更したり、工事単価を調整したり、資金が足りていることを演出してしまった」という事例 ③「管理費会計が赤字になったことで、安い管理会社にリプレイスし、ついでに各戸が支払う管理費も減額してしまった。しかし管理品質の悪化はもとより、それに気づき元に戻そうと思っても管理費を増額できなくなってしまった」という事例 いずれの事例も、最終的には建物の価値を下げる結果となり、次世代が住み継承してくれない空き家だらけのマンションに陥ってしまうということ。行きすぎた節約が貧困の連鎖を生んでいることに気づいてほしいと、丸山氏は訴えかけました。 また、休憩を挟んだ後半では、「“with”コロナとマンションコミュニティ」をテーマにパネルディスカッションを開催。Zoom(WEB会議システム)によるリモート受講者の皆さまからは「チャット」機能を利用し、質問を受け付けました。 コーディネーターには前出・丸山氏、パネラーには前出・佐藤慎二氏(NPO北海道マンションネット)、沢登正一氏(大和ライフネクスト 札幌支店長)らが登壇。新型コロナ時代におけるマンション内でのコミュニティをどうすべきか話し合っていきます。 そんな中、丸山氏は「本日のように、セミナーや講演をオンラインでやってみようという発想自体なかったこと。こういう時代になったからこそ新しいアイデアが生まれたのであり、今後もプラスになることもあると思う」という持論を展開しました。 ディスカッションの途中、リモート参加者の方々からの質問も紹介。 「総会の延期は理事会で決定できるのでしょうか、またその根拠はありますか?」 「インターネットを利用した会議システムで、総会を開催することができますか?」 というお二方の質問に対し丸山氏は「管理規約や区分所有法に鑑みると非常にもってこいの質問」としながら、一つ目の質問に対し佐藤氏が回答。「理事会で決議することは可能。理事会は管理組合の執行機関であるし、ましてや今回のようなコロナ禍においては緊急事態の対応になるので決定権があるだろうと考える」としました。 また二つ目の質問には沢登氏が、「できなくはないが、現実的には難しい。なぜなら区分所有法45条に『区分所有者の全員の承認を得た場合には、書面または電子的方法による総会を行うことができる』とある。裏を返せば全員の合意がなければリアルな集会以外の開催ができない為、この法律がある以上、現時点ではなかなか難しいと思う」と回答しました。 このようにラジオ番組さながら、ディスカッションの途中でも、都度寄せられた質問を紹介することで、タイムリーな話題を掘り下げることができた今回のオンライン同時並行によるセミナー。パネラーと視聴者の双方向でのやりとりができるというメリットが生まれたことはもちろん、札幌での開催にも関わらず、東京など距離の離れた場所にいる方とも同時に受講できるという点で、より多くの方に情報と熱量を同時に届けられるという機会に恵まれたようです。
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2020/02/18
令和元年度第1回 京都市マンション管理セミナー 「失敗しない管理組合マネジメント〜これからの時代の管理会社とのステキなおつきあい〜」を開催
続きを読む11月24日(日)、キャンパスプラザ京都(京都市下京区)にて「令和元年度第1回京都市マンション管理セミナー 〜これからの時代の管理会社とのステキなおつきあい〜」が開催されました。 本セミナーは、京都市とNPO法人マンションサポートネットが共催し、分譲マンションの適切な維持管理を推進するために実施している勉強会です。参加者は、現在ご自身のマンションで管理組合の理事長または役員を務めていらっしゃる方を中心に、地元で管理会社を経営している方または社員の方、その他今後の参考のために勉強にいらっしゃった方など。今回は募集開始早々から応募が殺到し、想定を上回る総勢80名の方にご来場いただきました。 講演の第1部では、本企画の主催者であるNPO法人マンションサポートネットの理事長を務める佐藤武氏が登壇。「知っておくべき! マンション管理適正化法の基本!」をテーマに講演しました。 第一声として佐藤氏が語ったのは、「マンション管理適正化法 第3条」に規定されている「マンション管理適正化指針」の理念だ。マンション管理適正化指針は国の分譲マンションに関する基本方針が掲げられている。「マンションの管理の主体は、マンションの区分所有者で構成される管理組合」である、とは有名なくだりだ。更に同指針では、マンションの区分所有者は、戸建とは異なり相隣関係に配慮を要する住まい方であることを十分に認識し、マンションの快適かつ適正な利用と資産価値の維持を図るため、管理組合の一員として進んで管理組合の管理運営に参加し、定められた管理規約や総会での決議事項を遵守する義務があると記載されていることを紹介した。 しかし現実は理念とは異なる。佐藤氏が専門家として管理組合役員から相談を受けるトラブルは、この同指針の居住者義務が遂行されていればけっして起きないだろう「管理組合の運営トラブル」「建物設備の不具合トラブル」「居住者間のマナートラブル」などが多く、同指針がマンション居住者に広く一般に伝わって欲しいとの認識を示した。 次に佐藤氏は、マンション管理適正化法に関連する法律として「区分所有法」に触れた。同法第3条には「区分所有者は全員で」「管理を行うための団体」つまり、管理組合を構成すると規定されていることにも触れた。区分所有者一人ひとりが組合員であるという意識が希薄なのではないかと指摘した。 また、マンション管理適正化法は、平成12年に施行され、マンション管理士資格とマンション管理業者の登録制度が定められたが、つい最近まで管理組合と管理会社の関係に関する法律がなかったという点も覚えておいて欲しいと述べた。 特にマンション管理適正化法は、これまでは「私有財産」として行政が立ち入れなかった分譲マンションの分野において消費者保護の観点から、不適格者の参入阻止や委託契約書自体を作成しないなどの悪習にもメスを入れることができるようになったことは、大きな収穫となった。また、マンション管理士資格制度が創設された結果、マンション管理の専門家として区分所有者と管理組合、管理組合と管理会社との様々なトラブルがより円滑に解決に向かう事例も多くなってきたと紹介した。 このように、法の施行や資格創設の背景・目的を紹介し、「私が思う理想の形は『管理組合と管理会社は対等なビジネスパートナー』であらねばならないということ。『管理会社がやって当たり前』という発想は違う。管理会社とのよりよい関係性を築けるかがこれからの鍵になる」と締めくくった。 第2部で登壇したのは、丸山氏(マンション管理士/大和ライフネクスト株式会社)。「少子高齢化が原因?? 管理会社との劇的な関係変化が訪れる!〜社会環境の変化がもたらす管理会社との新たな関係。“協働”する時代がやってくる!!〜」というタイトルで講演を行った。 ここで注視して欲しいのが、タイトルにもある「劇的な関係変化」という点。丸山氏は今まさにマンション管理の現場で起きている“劇的”な関係変化について、赤裸々に現状を解説した。 講演の第1部で佐藤氏が、「管理会社がやって当たり前という発想は違う。管理組合と管理会社は対等なビジネスパートナーでいなくてはならない」と締めくくったが、これまでの管理組合と管理会社の関係性に鑑みると「管理組合>管理会社」というパワーバランスにより「やって当たり前」という買い手市場の時代が続いていた。 しかしここ数年──いや今年に入ってからというもの、状況は一変。一気に売り手市場へと転じているとした上で丸山氏は、「管理組合との折り合いが付かず、撤退する管理会社が後を絶たない」と現状を述べた。 その背景として、本サイトで何度も紹介している“2つの老い”の影響はもちろん、それに加え管理会社自体に“3つの劣化”が生じ始めていると指摘した。“3つの劣化”とは、 ①管理員などの管理現場やフロントマンの人材不足 ②最低賃金上昇による人件費の高騰 ③管理マンションの2つの老いによる生産性の低下・リスクの増大 つまり、2つの老いにより管理組合とマンションに対する手間が増え、管理会社の人材不足と賃金上昇という条件が重なり、管理業界では現在、営業利益が減少し損益分岐点が上昇しているという状況に陥っている。管理の続行が不可能と判断せざるを得ない現状が急ピッチで進んでいることを示唆した。 管理員のなり手不足は、定年退職の年齢が引き上げられたことが大きな原因で、応募する絶対数が激減し、また応募してくる年齢層も従来の管理員の定年に近い方しか来なくなった。 理事会の支援業務などを行う若手のフロントマンも、管理組合との関係がBtoBではなくBtoP(パーソン=個人)となっていたことも否めない。さらにいえばPtoPという、極めて個人的なやりとりをせざるを得ない現場も多々生じていた。夢や希望を持って就職した若者たちにとっては、そういった関係性に疲弊し“クレームが多い産業”というイメージが定着。就職先としての人気が落ちてしまっているのではないか。 こうした問題は、起こるべくして起こったといえるが、管理会社から管理続行を拒否されてしまえば、管理組合にとっての現実的な問題は、管理会社のサポート無くしてどのようにして自分たちの財産価値を守っていけばいいのかということにもなりかねない。 この事態に丸山氏は「とはいえ、これまで管理会社は管理組合に寄り添ってやってきた。お金だけの関係で片付けられるものではない」とし、「論法ではなく皆さんなりの答えを出してほしい。それにはマンション内の風通しの良さや良好な人間関係が大事」と投げかけた。 第3部はパネルディスカッションとなり、「失敗しない管理組合マネジメント」というテーマで議論された。登壇者は、座長を務める折田泰宏氏(けやき法律事務所 所長)、第1部の佐藤武氏、第2部の丸山氏に加え、中谷秀彦氏(伊藤忠アーバンコミュニティ株式会社)、柏勇次氏(大和ライフネクスト株式会社)の5名。 第2部で丸山氏が“劇的な関係変化”を告白した内容を引き継ぐ形で、座長の折田氏が「平たくいえば管理会社の逆襲が起こっている。(今だからいえるが)管理会社は可哀想な立場だった」と切り込んだ。「どこで儲けを出せるか、マンションの管理は利益が薄い業界でもある。しかし値上げもできないという現状があり、それに輪をかけて過度の要求やクレームを突き付けている人物、いわゆるカスタマーモンスターも少なからずいる。」と付け加ええ、立ちゆかない構図を歯に衣着せぬ批評で展開しました。 それに対し、先頭バッターとなった柏氏は「これまで30年以上に亘りこの業界に携わってきた。折田先生の言葉をお借りすればいわゆるカスタマーモンスターの事例もあるが、昔は理事長と力を合わせカスタマーモンスターに対応するケースもあった。また、大きな山を越えたようなときは、理事の奥様が手料理をふるまってくれるなどアットホームな関係性もあった。しかしその当時と今を比べると、趣は変わり、苦労を共有していくムードは少なくなったような気がする」と分析する。 また座長からの「管理会社として管理組合のどのようなあり方が望ましいか」という問いに対しては、中谷氏から、「管理会社が区分所有者個々の意見を集約するのは不可能。決議の執行機関である理事会で結論を出してもらわないといけない」と話した。これには同じく管理会社としての立場で柏氏も「同意見です。実は理事会役員ではない方からの管理組合運営に関する個人的な電話というのはよくある。会社としてはBtoPへの対応はできかねる。区分所有者は理事会に意見を提案し、理事会は管理組合の意見として理事会として協議した結果を、代表として理事長から管理会社には連絡をして頂きたい」とし、理事会が適切な運営を行う健全な管理組合のあるべき姿を示した。 その後、話題はさらに踏み込んだ内容となりました。「事実上、管理費の引き上げはやむを得ない」というテーマで中谷氏は「理事会に弊社の社員が何回出席しているか、どれくらいの頻度で工事発注されているかなどを判断基準にさせてもらっている。そこに達していないマンションには『損益分岐点まで引き上げて欲しい』と交渉している」と毅然とした対応を口にしました。その一方で、「とはいえ、マンションと管理会社は契約での事務的なもの以外の付き合いがあるのも事実。日々実務に携わっている管理会社の社員からすれば(冒頭で座長が発した)逆襲とは思っているわけではなく、『企業として努力はするので協力してもらえませんか』というのが本音だ」との発言がありました。 また、現場の様子について佐藤氏は「顧問をしている先は10件ほど。そのほとんどが管理会社から値上げの要請をされているものの、管理会社と良好な関係を築けていれば値上げ幅が少ないなど、バラつきもある」との見方をコメント。同様に丸山氏も「管理会社として誠意は尽くしたい。解約の申入れには理由を説明する必要はないが、解約も値上げも説明がなければ管理組合としても釈然としないのも事実だろう」と苦しい胸の内を明かしました。 2〜3年前までは、管理組合が声をかければ喜んで管理会社が寄ってきた時代がありました。しかし、今は「お金ありますか?」と“足下を見られる”時代。しかしながら、パネラーの話からは、“人と人”という温度感は残っており、管理会社として管理組合に寄り添い続けたいという想いものぞかせている。いずれにしろ、まずは良好なパートナーシップを築くことが大切なようだ。 昨年の同セミナーとは打って変わり、管理会社からの“三行半”といった厳しい話となった今年のセミナー。これを聴講した参加者はどのような感想を抱いたのか数名の方に話を伺ってみた。 数回理事長を経験し、先日退任した女性 「私としては、今日の内容は“当然のこと”であると受け止めています。今まで私たちは当たり前のように“管理会社バッシング”をしてきたのではないでしょうか。うちのマンションでもそうです。管理費の値上げも、決して管理会社だけが儲けようとしてのことではないことはよくわかります。セミナーの中でお話もありましたが、管理会社には適正な価格をお支払いして、良好な関係を築いていかないといけないと思いますよ」 理事長1年目の男性 「今回初めて理事長になりましたので、いろいろ勉強していかなければいけないと思って参加しました。(話の内容は厳しいものでしたが)逆にうちのマンションは“これでいいんだ”という確認になりましたね。うちのマンションは非常に風通しが良くて、話し合いも活発なんですよ。なので、今日の話を持ち帰って報告しますし、マンション内でしっかり決議できていけば管理会社にも負担をかけることなく、共に向かい合ってやっていけるんじゃないかなと思いました」 と、上記2名の方に関しては肯定的な意見であり、管理会社が理想とする理事会の体制がとれているように思える。しかし、次に紹介する2名の方に関しては、まったく違った感想を聞くことができた。 地元・中小企業の管理会社にお勤めの男性 「話を聞き、大手さん(管理会社)がある程度お金のないマンションをふるいにかけるという強い姿勢を示されましたので……我々のような中小企業としてはどうしようかなと考えてしまいましたね。大手が手放したマンションのおこぼれをリプレイスしにいくことができるでしょうが、結局今日話にあったような問題に直面し、いずれ立ちゆかなくなることは目に見えてますよね。なので大手さんと同じようなスタンスでいくべきなのか、現時点での判断が難しいところです」 初めて管理組合の理事になったという男性 「自分が理事長になったら、こんな難しい問題を引き受けなきゃいけないのか!と思ったら怖くなりました。理事になったのだから勉強に……なんて気軽な気持ちで来たらとんでもない。マンションを自分が経営していけるのか、という不安しかありません。正直、分譲マンションに住み続けていていいのかな、売却した方が将来ラクに暮らせるんじゃないかな、そこまで想像してしまいました」 という不安や、今後の方針に迷いを感じる意見も伺うことができた。いずれにせよ、避けては通れない事態を目の前にして、自分たちの資産であるマンションをどう活かしていくのか、一人ひとりが真剣に考えなければいけない岐路に立たされている。
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2019/12/18
「機械式駐車場の課題と解決策を考える」埼玉マンション管理支援センター主催セミナーで登壇
続きを読む11月9日(土)、埼玉県内のマンション管理組合をサポートするNPO法人「NPO埼玉マンション管理支援センター」主催のセミナーが開催され、上野英克氏(大和ライフネクスト東日本技術サービス工事部)と宮﨑栄治氏(大和ライフネクスト事業開発部)が登壇し、講演を行いました。 今回のセミナーのテーマは「機械式駐車場の課題と解決策を考える」。自動車の収容方式が多様で、しかも昨今の自動車所有家庭の減少により利用率が低下しているマンションの機械式駐車場については、そのメンテナンスや収益性の改善に苦慮している管理組合も少なくなく、マンション管理の中でも関心が高い分野です。講師の上野氏はこれまで、機械式駐車装置やエレベーター等の機械設備の維持・修繕を長年担当し、現在は更新工事と技術者教育などの業務にあたっています。その経験に基づき、マンションの機械式駐車場の課題と解決策をわかりやすく解説しました。 機械式駐車場は公共・商用施設等での使用が多い「垂直循環方式」「エレベーター方式」「多層循環方式」「水平循環方式」「エレベーター・スライド方式」「平面往復方式」などの大型装置と、小規模向きでマンションでも多く設置されている「多段方式」「二段方式」などの方式があります。1987年からの20年間で、機械式駐車場自体の数は増加していますが、ここ10年間ではその増加台数が半減。マンションに多い「多段方式」「二段方式」も1997年〜2006年の設置状況(合計885千台)に比較して2007年〜2016年の設置状況(合計426千台)は大幅に減少しています。 この要因には社会的な自動車離れの傾向や、それに伴う取り扱いメーカーの減少などが考えられますが、上野氏は「今後、少子高齢化による自動車台数の減少が見込まれることから、機械式駐車場の需要はさらに減ることが予想されます。これからはその管理の方法も含めて、従来とは違った視点から改めて考えていく必要があります」と説明。メンテナンス業者(メーカー系vs非メーカー系)や長期修繕計画における修繕の金額および時期の見直しの必要性を力説しました。 また参加者の関心がもっとも高い「収益性の課題・解決策」では、長期修繕計画上の装置更新までにかかる費用に点検・塗装費用などを盛り込んだ全体コストを、期間と総台数で割った1スペースあたりの月間維持費用をベースにし、それ以上の賃料設定をすることが基本であると述べました。また、未契約の区画が生じた際には、車両を詰めて駐車位置を再配置し、未使用区画の装置を廃止するといった改善策で収益が最大化できるとし、具体的な駐車スペースの部分廃止事例などを挙げて詳しく説明しました。 さらに、これまで上野氏が実際に担当した事例から、改造や装置の入れ替え、機械式駐車場から平面式への転換、全廃止+近隣の土地の購入、外部貸し(サブリース)の採用などの様々なプランを紹介。自分のマンションの参考にしようと熱心にメモを取る参加者の姿が見受けられました。 セミナー終了後には参加者からの活発な質疑が寄せられ、上野、宮﨑両氏が応答しました。宮﨑氏は「機械式駐車場に関する問題では、使用者へのアンケート調査などに基づいて、それが全体の問題なのか、一部の住民の不満に基づくものなのかなど、現状を正確に把握することが大切です。それにより場合によってはハード面の改修をせずとも駐車位置や料金の見直しだけで、問題解決に導くことが可能です」と述べ、幅広い視点から問題解決を図る姿勢が重要であると強調しました。 参加者からの質問に答える、宮﨑栄治氏(大和ライフネクスト事業開発部) 参加者からは「機械式駐車場に関しては、理解しきれていない問題がたくさんある。管理組合担当者にとっては、このような機会を通じて知識を深められることは大変ありがたい」との声が聞かれ、このセミナーの満足度の高さが伺えました。