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2023/01/12
第4回 マンションみらい価値研究所セミナー 「マンション管理士が語る第三者管理者方式」
続きを読むオンラインセミナー第4弾が2022年12月7日に配信された。今回はマンション管理士の親泊哲(おやどまり さとる)氏を迎え、これまでの研究とご実績を伺う。 親泊氏は、自身も区分所有者として管理組合の役員を担っていた経験を通じて、管理組合運営の面白さと、専門知識を持たない一般の住民がそれを行うことの難しさを実感し、マンション管理士の資格を取得した異色の経歴の持ち主だ。マンションで起こっているさまざまな問題を“自分事”として捉える姿勢は多くの共感を得ている。現在は第三者管理者としても尽力しており、セミナーではその活動内容と、そこで感じたことを中心に話が展開された。 そもそも第三者管理とはなにか──。これまでのセミナーでも折りに触れ解説してきた話題だが、冒頭で司会が、マンション管理のトレンドが第三者管理へ移行しつつある背景を紹介。「住民の高齢化」や「賃貸化による理事のなり手不足」等の問題を抱えるマンションが導入に至っていると解説した。 「マンションみらい価値研究所」所長 久保依子の「マンション管理士として行うコンサルタントと管理者とで意識の違いはあるのか?」という質問に対し親泊氏は、「日常から心掛けていることで、ある意味当然のことであるが」と前置きした上で、「コンサルタントとは、管理組合の一員ではなく第三者の立場から助言指導することになる。これに対し第三者管理とは“第三者”であっても管理者であり管理組合の一員であるということで、自分で実行することだ。つまり、他人の立場なのか当事者の立場なのかという意識の違いがある」と説明した。 その上で、現在の主流である理事会方式の課題について問うと、親泊氏は「マンションによって共通理解を形成することがかなり難しいこと」が第一であると答えた。さらに「管理組合の任務は、専門知識がない一般の住民によって行われなければならない、つまり職業的に行うものではないという共通項があると考える。よって多くのマンションでは、管理会社との信頼関係を拠り所として、誰が理事になっても職務が全うされるような運営が求められているということになる。しかし年度によって方針が違うなど、バランスの確保がネックになる。よって、積極的な人にやってもらいたいという偏った選任に陥りやすい」とした。 さまざまな問題・課題が明るみになってきた理事会方式の運営だが、それに変わって導入がはじまっている第三者管理者方式のメリットについては、大きく5点が挙げられるという。その内容は下記の通りである。① 管理組合運営上の責任関係が明確になる② マンション管理を熟知した者が運営を担うことで、マンション管理の質の向上が期待できる③ 管理組合運営をする上での区分所有者の心身の負担が大幅に軽減される④ 区分所有者がマンションの管理・運営に対する意見を言いやすくなる⑤ 管理組合運営の継続性が高まる 一方で、デメリットもあるという。それが以下の5点だ。① 相応の委託費(業務報酬)や必要経費の負担が生じる② 管理組合運営に対する区分所有者の関心が低下するおそれがある③ 監査機能が働かないことによる弊害への懸念がある④ 管理者本位(非区分所有者本位)にマンションが管理される懸念がある⑤ 一度管理者方式に移行すると、役員・理事会制度に戻すことが困難である そこで久保が②に対し「関心を持続させるための取り組みは?」と問うと、親泊氏は「イベントなどでつなぎとめておくのも馴染まないと思うし、頻繁に印刷物が届いても読みきれないのもよくわかる。だとするとまずは説明を尽くしていくことなのではないか」とした。また③の監査の方法に対しては「総会監督型という言葉の通り、監事役がいないのであれば監査は年一回の総会しかなく、そこで監督することになるので、監事は居たほうがいい」と回答。さらに⑤に関しては、「(職務からはなれた)開放感をもった状態で理事会運営方式に戻そうとした時に、再スタートの気運が上がるのかということが問題。規定された人数が集まるのかと言う点において困難とした」と述べた。 これらを踏まえた「第三者管理者方式」の課題として、以下の5点が挙げられた。① 管理者の業務執行のチェック体制の構築(監査機能の確保)② 金銭管理を行う者や印鑑を保管する者の制限(事故防止策の確保)③ 管理者に対する総会の議決権行使の委任の制限(形骸化防止策の確保)④ 管理者が辞任または退任する場合等のルールの明確化(継続性の確保)⑤ 管理者の利益相反関係の排除(取引の健全性の確保) 法改正により日本では導入されたばかりのこの新方式だが、社会問題となっている2つの老い(高齢化と高経年)や分譲マンションの賃貸化など、さまざまに変化するライフスタイルに対応していくための重要な鍵となることは間違いない。必要に応じて第三者管理者方式の導入も検討しながら、継続性のある安定的な運営を模索していく必要があるだろう。
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2022/11/25
大阪市マンション管理支援機構 マンション管理 基礎講座 マンションの“防災”―考え方と取り組み
続きを読む大阪市マンション管理支援機構とは、市内の分譲マンションに対し情報提供などを行うことで管理運営をサポートすることを目的とした組織。参加団体は、大阪市、大阪市住まい公社、(独)住宅金融支援機構といった公共団体、弁護士会、建築士会などの専門家団体、民間事業者団体などが連携している。また同支援機構では毎年、マンション管理に役立つ「基礎講座」を開催。特に今年度は、大阪市のマンション管理計画認定制度スタートの年にあたる。大阪市で定めた管理計画認定の上乗せ基準にスポットをあてた防災の講座が10月29日(土)に企画され、マンションみらい価値研究所からも登壇した。 セミナーの構成 今回のセミナーは以下の3要素で構成された。① そもそも管理計画認定制度とは何か?制度自体の狙いを確認② 大阪市が定めた防災に関する独自の認定基準は管理組合の“備え”のための行動目標。活用できるためにはどんな水準を目指すべきかを事例も含め解説③ マンションの強み・弱みを理解し、合理的な防災計画とは何かについて考える セミナーでは、マンションの変遷と昨今の高齢化問題や管理不全に至った経緯や、それらの対策のためにマンション管理適正化法が20年ぶりに改正され、管理計画認定制度という形で、管理組合の健全性のための具体的な目標が認定基準として示されたことの説明がされた。 また、管理運営の良し悪しは、当事者(管理組合員自身)だけの主観的なものになりがちだが、行政が積極的に世の中に当該マンションに対し「居住価値が高いマンション」であるという証明を与える制度なのだと、その狙いを解説した。 加えて、各行政が立地環境などの特性に合わせた認定基準を追加でき、大阪市では、以下の3点が上乗せさせれている旨の説明があった。 イ) 年1回以上の防災訓練の実施ロ) 防災訓練とは別に上げる7項目の中のいずれかの防災対策が講じられていることハ) 旧耐震においては、耐震診断を実施し不足している場合は耐震改修などの議論等がされている また、ロ)の7項目と国が定めた認定基準にある「名簿の管理」の計8項目について、表層だけで形を整えるのではなく、いざという時にしっかり活用できる防災対策にするためのノウハウを、事例を交えて整理した。 認定基準を防災でしっかり活用できるために 管理計画認定基準(国+大阪市版の7項目) ※大阪市では、国の“名簿”に加え、防災訓練の実施と上記の7項目のいずれかの防災対策を講じていることを条件としています。 国の定めた名簿の管理について、名簿は安否確認のためにだけにあるのではない。 長期間遠方の親戚宅などで避難生活を送られる方もいるため、復旧等の総会を開催する場合など、より多くの方の賛同を得るためにも緊急連絡先が記載された名簿が必要になる。 また、熊本地震の例では、建物解体にあたり公費解体の行政支援を受けるためには、被災マンション法に関わらず所有者全員の同意等(その他、賃借人・抵当権者)が必要となる。まずは、区分所有者全員との連絡が取れる状態を確保することが最低条件との話があった。 大阪市の追加基準について 以下、抜粋して紹介しておこう。 ■避難所の周知徹底について■もちろん、どこが避難所なのかを知っておくのは、基本中の基本。 しかし、新耐震で堅牢なコンクリートの建物であるマンションの場合、避難所でのストレスや感染病などのリスクを考慮しておく必要がある。在宅避難が可能なケースも多く、どのような状態であれば避難所に行くべきかなどの判断と同時に、在宅避難ができる備えも大切であると説く。 熊本地震での直接死55名、全てが避難所のストレスが原因とはいわないまでも、被災生活期などで亡くなった、いわゆる被災関連死は218名に上っているなどの事例を交え解説した。 ■マニュアルについて■火災と震災では避難等の行動は異なる。災害ごとに、またマンションの立地・建物・住民の特性に合わせ、汎用型ではない自分たちのマンションにあったマニュアル作りが望ましい。 ① 特性分析②災害種類・規模等の条件③被害想定④備え等のためのアクションプランなど基本的なフレームを示し解説した。 ■高齢者の名簿について■市が作成している「避難行動要支援者名簿」の運用や地域への開示方法などを説明した上で、災害時の要支援者とはイコールではないものの、「日本の障碍者の割合は何パーセントぐらいだと思うか」という投げかけがあった。答えは8%であり、また高齢化と共に年々増加している。築年の古いマンションでは住民の平均年齢も高いことから、8%どころかもっと多いかもしれない。 自助が基本ではあるものの、マンション内で助け合う、“近所力”は大切であり、そのベースになるのが要支援者の名簿であることは確かであるとの話があった。 ■安否確認について■実は安否確認をすることだけが目的ではなく、家具の下敷きになっている人などの救出をスムーズに行うことが目的なのである。 阪神淡路大震災の際、神戸で発生した大火の後に発見された数多くのご遺体の解剖結果では、多くの方の肺にススは入っておらず、焼死ではなく圧迫死によるものであったことがわかった。つまり、いかに早く助け出すかがポイントなのだ。 コンクリートのマンションではいっぺんに倒壊する危険性はまずないが、体力のない高齢者や子供が家具等の下敷きになると命に関わる。なんのために安否確認を行うのか、しっかり深掘りしておく必要がある。 また、安否確認用としてマグネット付きのLEDランプを全戸に配布し、無事ならランプを点灯しドアに取り付ける。一目瞭然でどこに訪問して確認すればよいのかもわかるし、停電の際の共用廊下を照らす明かりにもなるという知恵も披露された。 防災の目的は生活復興 マンションの強みと弱みの整理と“生活復興”についての話でまとめとした。 まずマンションの強みでは、震災等には強い堅牢なコンクリートの建物であり、またマンションコミュニティ内で“近所力”を発揮しやすいこと。 一方、弱みとは、ハード面では建物の“高さ”、ソフト面ではコミュニティの“力“が発揮できず復旧や建て替えなどの合意形成ができない場合などをあげて説明した。 また、震災等も社会インフラが復旧すれば日常に戻れるレベル、また次には建物の復旧のために部分的に建物の改修が必要になり、家財の一部も震災ゴミになったが、修繕積立金や多少の貯えで復旧でき、職場も存続できているケース。 一番大変なケースとは、マンションの大規模な改修や解体除去が必要となり、家財もすべて震災ゴミとなる。その上、勤め先が被災し職場そのものを喪失し、その後の収入源も失われてしまうようなケース。 東日本大震災の際の倒産件数や負債総額、また家財が震災ゴミとなってしまった場合の再調達価格なども例に上げて説明した。最後に“資金”と“気力”については、建物や家財への地震保険・管理組合の潤沢な修繕積立金・支援金の活用の大切さなど、いざという時の資金の確保も備えであること。 また、怪我をしない・病気にならない、そしてコミュニティの力で“気力”を保つことも、大切であるとして締めくくった。 大阪市の取り組み 天六商店街にほど近い「大阪市立住まい情報センター」を訪れると、大阪市の“住”に対する、買う・借りる・維持管理するなど、総合的な発信基地であることがわかる。 また、こちらの8階にある「住まいのミュージアム 大阪くらしの今昔館」は、大阪の住まいや街の文化を伝える大変工夫されたミュージアムだ。大阪市マンション管理支援機構はこの住まい情報センターの中で、マンションの管理組合への支援窓口を担う。 大阪市の管理計画認定制度の上乗せ基準のひとつに同支援機構への登録が条件となっているが、十分に管理組合に応えられる位置づけであることを実感することができた。さまざまな行政の中でも、最先端でかつ意味のある運営をされていることに間違いはない。
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2022/10/20
第3回 マンションみらい価値研究所セミナー 「高経年マンション~答えが無いのが答え」
続きを読むオンラインセミナー第3弾が10月5日に配信された。今回は、明海大学准教授の小杉学氏を迎え、これまでの研究とご実績を伺う。 小杉准教授は、明治大学理工学部建築学科を卒業後、千葉大学大学院自然科学研究科に進み博士号を取得。現在は日本で唯一の不動産学部である、明海大学不動産学部で教鞭を揮っている。専門は都市計画ということで、准教授となるまでの経験も踏まえお話しいただいた。 冒頭、小杉准教授は「ひらがなで書く“まちづくり”に関心がある」と述べ、デベロップメントである“街づくり”との違いを示唆する。つまり、「まちづくり」は「人」や「暮らし」が関与することを意味する。准教授がコーポラティブ住宅の研究に参画するきっかけとなったのも、まさにこの点である。 それは1枚の写真に衝撃を受けたことにはじまる。その集合住宅の名前は「ユーコート」。入居希望者が組合を作り、土地取得から設計・建築の手配まで行うという点まではいわゆる「コーポラティブ住宅」と同じだが、大きく違うのは「住んでから」。全48戸の住宅はすべて間取りが異なって作られた自由さを備えているが、共用の中庭に犬を放し飼いにして全員で世話をし、子どもたちは親だけでなく大人全員で見守るという、一昔前の下町のような共同生活が存在するという。つまり、建てるまでが共同なのではなく、住んでからも共同であるところが「コーポラティブ住宅」の概念を超越している。小杉准教授にとってまさにパラダイスに見えた。 こんな理想的な住まい方もあるのだというお手本をみつけたところで、小杉准教授は我に返り、「これはレアケースだろう」とユーコートへの興味を一時期失うことになる。郊外で資産価値が低下する高経年・高齢化マンションなど、より社会性のあるものを研究テーマに切り替えた。 しかし巡り巡って、恩師より、25年が経過したユーコートの調査チームに参加してほしいと誘われる。再びユーコートと向き合うことになるのだが、そこで目にしたのは「25年間変わらないコミュニティがあった」こと。「それどころか独自の文化に成長を遂げていたんです」と語り口調にも熱が入る。彼らチームはこの現象を「集住文化」と呼び、どのような工夫のもとにこのコミュニティが形成されたのかを分析していく。 結論を先に言ってしまうと、ユーコートの管理組合の在り方にヒントがあり、そこでは「全員同意」が大前提に執り行われているのだという。この「全員同意」が肝であり、それには徹底的な話し合いがなされるといい、次第に団結力へと昇華、今ではユーコートはブランド化されるにまで至っている。どういうことかいえば、こうした集住文化のコアなファンがつき、売買もある意味“オーディション”で決定されている。レアケースであるかもしれないが、高経年マンションの成功例としては十分な事例だろう。 ユーコートの件が一旦の結論を迎えたところで、話題は再び建替え問題に。日本の現在の建替えの問題点は「どんな建物でも直せるが、そこには莫大なお金がかかる」こと。 そこで取り組んだのが、横浜にある約450戸の団地の建替え。住民の約55%と半分以上の人が権利を手放して転出している状態であり、建替えの難しさを感じさせた。資金面で自己負担せず建替えを行う道を選択すれば、手に入るのは建て替え前より狭いわずか30平米程の部屋。さらにのしかかるのは、建替え期間中の仮居住費用、引越し費用という経済面、さらに高齢者であれば肉体的な問題も加わる。「建替え」というと「新しいところに住める!」と思いがちだが、現実はそうも容易にはいかないことが多い。 ではそのまま古い建物に住み続けることができるかといえば、建物の老朽化が地域社会に与える影響を考えるとそうもいかない。そうした八方塞がりな現状に風穴をあけるべく、小杉准教授の同僚である藤木亮介先生が「建替えをせずに建物を新築時のレベルまで引き上げる」ことを研究、また都内のある集合住宅で提案しているという。これが可能になるのはまさに理想であり、悲願だ。 マンションを買った、住んだはいいが、その後の維持や終わり方に多大な心労と費用を要する結末を迎えている。これを小杉准教授は恋愛に喩え「太古から現代まで『こうすればうまくいく』という答えがない。だから想像力を働かせて自分磨きをしたり関係性を良くしようとしたりする」と語る。 結局のところ、建物というハード面の問題に関してであっても、人と人の話し合いにより解決できることがたくさんあるということ。慣例や法律の前に辛酸を嘗めるのではなく、共有する者同士が想像力を働かせ、徹底的に話し合うことで打開できることはいくらでもあるそうだ。先のユーコートがその理想を示してくれている。
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2022/10/06
調停委員向けのセミナー報告 『マンションの4つの将来リスク〜日本のマンション管理の課題を考える』
続きを読む※ 裁判所内での写真撮影は禁止されているため参考にスライド資料を使用しています。※ セミナー終了後の調停委員向けインタビューは、別会場にて実施、氏名は伏せてご紹介しています。 9月1日、大阪地方裁判所大会議室において約40名の調停委員に向けたセミナーが開催され、マンションみらい価値研究所からも登壇した。 冒頭で「マンションみらい価値研究所」の取り組みや研究成果などの発信も行う大和ライフネクストの情報発信プラットフォーム「赤坂プラスタ」について簡単に紹介した後、本日の講演テーマ『マンションの4つの将来リスク〜日本のマンション管理の課題を考える』について90分間、熱く語った。 本題の報告に入る前に「調停」とは何かを説明すると、個人間の紛争を解決する目的で裁判所が仲介し、当事者間の合意を成立させるための手続きのことをいう。調停の場では、調停委員が当事者と一緒に紛争の実状に合った解決策を考え、また双方の言い分や気持ちを十分に聞きつけ、解決に向けた話を進めていくというもの。 調停委員は、弁護士・大学教授・公認会計士・不動産鑑定士などの専門家や地域社会に密着して活動してきた人などから選任された非常勤の裁判所職員である。 昨今、マンション管理をめぐる調停が増えているという。よって今回のセミナーは、マンション管理にはどんな人たちが関わり、どんな問題が発生しているのかについて深く学ぶことを主な目的として開催された。 マンションを取り巻く問題を大まかに整理すれば、以下の4つだろう。① 2つの老い② 管理組合収支の悪化③ 社会変化についていけない現状④ 自然災害等からの復旧・復興 中でも最も重大な問題は、建物と人の「2つの老い」から派生するもの。建物が古くなれば修繕費用は増加し、また機能的にも住まう方のトレンドについていけなくなる。住まう方の多くが年金受給者となってしまい、改修やリノベーションの資金手当てが難しくなる。また管理運営への活力も低下してしまう。 日本の高齢化の縮図がマンションである、といってもおかしくはない。2025年には、日本の年齢別人口構成は逆ピラミッド型が鮮明になる。25年前の2000年と人口のボリュームゾーンを比較しても約20歳跳ね上がり、45歳〜80歳となる(国勢調査からの予想)。人口は減り続け、2050年には現在のカナダの人口に近い約3,300万人が減る計算。当然のことながら、住宅余りも加速し空家が増加していく。 かつての高度経済成長期には、住宅不足の解消のため住宅供給に躍起になっていた時代があった。建設ラッシュはマンションブームを巻き起こし、すでに60年程度が経過した。過剰なマンションストックに対する少子化による人口減、そして2つの老いが、さまざまな形で問題を引き起こしていく。 そこで思うのは、「日本人にとってマンションは何だろう」ということ。日本のマンションの平均築年数は25年を超え、築40年以上のマンションは約270万戸。さらにマンション住民の半数が60歳以上と高齢化が進行。今あらためて、共同住宅であるマンションという居住形態の未来とマンション自体の存在意義を考えていかねばならない。 人の老いがもたらす主な問題は、管理組合の資金の枯渇だけではない。人の高齢化による体力・気力の低下、介護の必要性も生じ、健全な管理運営の継続が難しくなっていくことだろう。そして、終の棲家として人生を全うした後には、相続放棄や空家が問題となり始める。老朽化した建物の解体や建て替えも、個々の事情や懐具合を考えれば、マンション全体での合意形成は極めて難しい。結果、建物が放置され空家特措法による行政代執行で解体されたマンションもすでにあるのだ。しかし、行政側の解体に至るまでの手続きの手間暇や税金を使っての処分は、すでに大きな社会的経済災害ともいえる事態ともいえる。日本の近未来の姿は、けして楽観できるものではない。 こうした背景を説明するとともに、マンション管理に登場する人々の間で生じたトラブル事例などをいくつか紹介した。「管理会社との関係」では、従来の関係性が一変し管理会社から委託費値上げや更新拒否(解約)が急増していることや、、利益相反行為まがいの「工事監理の問題」などを取り上げた。 マンション管理は、それなりの専門知識が求められる。総会で選出された理事といっても、一般の方では、解決しがたい問題でもあると指摘した。「理事のなり手不足」にも関連させ、「理事会運営方式」が日本の主流のやり方になっていった歴史的経緯に加え、海外では一般的な「第三者管理方式」の比較紹介を行った。 また、最新の情報である「管理計画認定制度」にも触れ、「管理計画認定制度の“認定”が、“居住価値が高い”ことの“客観的な証明”になっている社会にしていくことが狙いだ」と展開した。 右肩上がりで分譲マンションの供給を続けてきた日本。建物と住まう人の高齢化時代を迎え、マンション管理そのものの難しさが噴出している現状がある。それに対し、現在ではどんな対策が検討されてきているのかなどの最新情報に至るまでを説明した。 マンションを取り巻く登場人物の間では、調停に至る紛争がこれからさらに増加し複雑化するだろう。まずは、マンション管理の抱える問題や背景を知っていただき、困っている当事者と一緒に解決策を見いだして行ってはと締めくくった。 座談会の様子 講演後、調停委員3名とマンションに住まうひとりの住民の立場で座談会を行った。簡単に座談会の内容も報告しよう。聞き手:マンションみらい価値研究所 大橋正和 大橋マンションの「2つの老い」が本日の一番のテーマでしたが、克服していくためのいくつかのキーワードもあったかに思います。ざっくばらんにみなさまの感想をお聞かせください。 Aさん私は築30数年、370戸のマンションに住んでいます。駅に近いこともあり空き住戸が出るとすぐ新しい方が購入されているようです。空家が増える心配は少ないとは思いますが、中古で入居された方ほど、管理組合運営へ関わるきっかけがないのか、無関心なケースが多いように感じています。 大橋駅に近いという立地ポテンシャルが高く、人気のマンションということですね。ただ、新しく入居された方が、管理組合の活動に無関心ということですね。 Aさんはい、それに加えて、共同住宅の住まい方に慣れていない、もしくは理解されていない方も見受けられます。訴訟までの問題にはなっていないものの上下間の騒音問題などが発生しています。現在は、古くから住まわれている方が、熱い思いで自治会や理事会活動をされています。コミュニティ活動も充実しています。しかし、今後、高齢化が進んでいくとどうなるのかが不安ですね。やはり、新しく入居された若い方が、後を引き継ぎ、代わって運営してもらえる、そんな状況を古くから住んでいる側が意識して作っていかないといけないのでしょうね。ルールで縛るとかではなく、あくまでも自らの気付きの中で、管理組合やコミュニティ活動に積極的に関わってもらうためにどうするかが一番のテーマのような気がします。 Bさん私もすでに築35年を超えている226戸のマンションに住んでいます。新築当時は、総会に参加される方が多かったのですが、最近は直接自分に関わること以外は総会に出てくることもなく、ずいぶん雰囲気も変わってしまいました。賃貸に出している外部区分所有者が多くなってしまったことも原因の一つなのでしょう。管理会社にはしっかりやってもらっていると思います。今日の話にもあった専門家であるマンション管理士を入れたら、よりうまく回りだすのではという話もなかったわけではありませんが、マンション管理士と管理会社との関係はうまくいくのかという想いもあり、積極的に進めていませんでした。しかし、管理会社にしてもマンション管理士にしても、立場の違いこそあれど、管理組合をサポートし健全化を図るという目的や方向性は一つなので、今日の話を聞いて検討する意味はありそうだと思えました。 大橋そうですね。ひとことで言ってしまえば、管理会社は、管理委託契約の仕様書に基づき、運営補助や理事会の指示で管理実務を行う立場。マンション管理士は、理事会が区分所有者への説明責任を果たすために専門家の立場からアドバイスする立場ですね。 Bさんそうですね。今日の話を聞いて、実務代行の管理会社と第三者的な立場でアドバイスする専門家がマンション管理士なのだということが、よくわかりました。競合することもなく、双方をうまく活用しより確かな運営ができるのかもと思えました。早い話、そのあたりの関係性が今一つわからなかったところもあり、マンション管理士の活用に踏み込めなかったのかもしれません。 Cさん私は、34年目の66戸のマンションに住んでいて、私自身も輪番で理事長を2回やっています。築年が新しいうちは、月1回の理事会でしたが、現在は2ヶ月に1回の開催としています。管理会社も適切にサポートしてくれているので安心はしていますが、マンション管理の専門性が自分自身にあるかというと、正直、自信はない。今後は、マンション管理士に何らかの形でお願いしようという話もあったのですが、やはり費用のかかることですし、大きなマンションでもなく資金的にも豊かとはいえず、二の足を踏んでいました。しかし、高齢化の問題を掘り下げて考えていくと、マンション管理士にアドバイザーになってもらう、いや第三者管理方式に切り替えるのも一つの選択であることは確かなのでしょうね。まずは、マンション管理士に依頼するといくらくらいかかるものなのか、またどんなマンション管理士にお願いするのが良いのか、もう少し一般的にわかりやすくなっている状況が必要なのかもしれませんね。 Bさん管理組合運営も大切ですし、同時にそれを下支えするコミュニティ活動も大切だと思うんです。マンションによって差が多いと聞いていますが、みなさんのところはどうですか。 Cさんマンションや地域で、夏祭りや餅つき大会などをやろうとしても、最近は新型コロナの件もあり、めっきり活動が減っているようですね。コミュニティ活動の分野もマンション管理士にアドバイスしていただける? いや、その分野は難しそうですね。 大橋管理組合の運営とコミュニティ活動は一線を画す、マンション標準管理規約ではそのような考え方です。また、コミュニティ活動の最近のトレンドは、ネイバーフッド(neighborhood=近所・地域)という、マンションからもう少し広げて地域全体での楽しみや生きがい、喜びを設計しようという考え方もあるようですね。マンション管理の専門家であるマンション管理士というよりは、街おこしなどが得意なNPOなどがアドバイザーに入って、マンションや地域も含めての居住価値の向上のために活動している事例もあるようですね。 Aさん私のマンションでは、以前は子供会でやっていた資源ゴミの回収を、今はシニアクラブが行っています。多くの元気なシニアが積極的に参加されています。その収益をコミュニティ活動に充てているのは良いことなのですが、住民の少子高齢化が進み子供会が作れない状態になってしまったからというのも、寂しい気がしています。 Bさん高齢化の問題は、やはり持続可能性をいかに確保し、若い世代につなぐかなのですが、マンション管理の専門性の問題、また同時にコミュニティ、いやトレンドで言えばネイバーフッドですか、そのあたりの専門性も必要になるのかもしれませんね。 Cさんまずはマンション管理側の解決として、マンション管理士にお願いしたら、理事会運営方式から第三者管理に換えるには、どれぐらいの費用が必要なのか。また管理規約の改正など、どんな準備が必要なのか。私たちも学んでいきたいところですね。 大橋今日は、セミナーの後の短い時間を頂き、大変興味深く、みなさまの気付きをお聞きできました。ありがとうございました。
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2022/09/15
第2回 マンションみらい価値研究所セミナー 「管理計画認定制度が施行された!管理組合が絶対押さえておくべき重要ポイントとは」を開催
続きを読む8月末、管理計画認定制度をテーマにトークセッションが開催された。この日のゲストは、東京弁護士会の中でもマンション部会に所属している土屋賢司氏。この「マンション部会」とは、マンション管理士の資格を有する約40名のメンバーで構成されており、先の土屋氏も16年の弁護士生活の約半分はマンション管理士として活動。自身の業務も、マンション管理相談窓口の開設など約9割がマンションに関わる案件だという経歴の持ち主だ。 さて、本日のテーマとなっている「管理認定計画制度」の施行。その内容と、どのような期待がもたらされるのかと言った点でトークセッションが繰り広げられた。 まず、この制度に対してどのように思うか、という質問に対して口火を切ったのは土屋氏。「一言でいえば、マンション管理を公的に評価する、画期的なものだと思う」とまずは賛成の意思を示した。続けて「マンションは管理が大事というが、この制度をきっかけに、特に理事ではない“無関心層”といわれる人たちの意識付けのきっかけになればと期待する」と述べた。 そもそも、この制度施行の背景には何があったのか。そのおさらいを解説したのが、研究所所長・久保依子だが、開口一番「マンション管理適正化法が改正され、マンション管理計画認定制度が制定される、というニュースは最初しっくりくるものではなかった」と切り出す。その理由として「マンション管理適正化法は、マンション管理業者をしばる法律だという印象が強かった。重要事項説明や管理事務の報告、財産の分別管理など、マンション管理業者が守るべき条文が多い上、過去の改正はそれらをより厳しくするものであった」という。だが、「今回の適正化法の改正は、管理組合向けの制度の創設となっていた。国が管理組合の為にマンション管理適正化指針を定めている条文があり、今回の適正化法の改正は、管理業者をしばるものではなく、管理組合に向けた改正という点で過去の改正履歴とはずいぶんと違うものになっているように思う」と、久保も賛成の意志を表明した。久保がポイントとして挙げた2点を追記すると、「一つ目は管理不全または管理不全一歩手前のマンションには、指導、勧告、助言ができること。二つ目は、16項目の基準をクリアすれば国からマルがもらえること」だ。 土屋氏によると「認定する主体、つまり行政の立ち位置ががらりと変わった」ことが特徴だと語る。というのも、マンションという私的財産に行政が口を挟むのはお門違いだ、というスタンスを貫いてはいられなくなったのだという。それは「建物が老朽化して、外壁が通行人に危険を及ぼしたり、建物倒壊の危険などもある中で、行政が区分所有者に代わり建物を除却する必要が出てくることが想定できるから」。私的財産の範疇を超え、地域に被害をもたらす問題へと発展しかねないからだ。 今回の認定基準が修繕計画や修繕積立金など「修繕」に重きを置いているのはそのため。よって今回の改正でも、地方自治体ごとに適正化推進計画を策定することになっている。 「都道府県および市・区などの地方公共団体がマンション管理適正化推進計画を策定しなければ認定制度を行うことができない。しかし、推進計画の策定時期は全国一斉ではなく、マンション化率が低い地域などでは、策定しない地方公共団体もある。いずれにせよ推進計画策定後からのスタートということになる」と付け加えたのは、当研究所のメンバー。 その裏付けとなるデータとして、国土交通省が各地方公共団体に行ったアンケート調査によると、政令指定都市では令和4年度中にすべての計画が策定される見込みで、全国の都道府県では28%が不明であり、東京都区部でいえば、本年度中が61%、令和5年度までが87%と、約9割が策定見込みだという。 適正化推進計画が策定されたら、いざ認定制度の申請へと進められるようになるが、申請には総会決議が必要となる。総会での決議までに取り組むロードマップは以下の通り。 まずは理事会で、管理組合にとっての目的や意義、メリットなどを整理する。現状が認定取得可能な管理状態なのか、補完的に整備する項目があるのかを確認し、補完整備が必要なら、区分所有者や管理組合の負担などを精査する必要がある。 また土屋氏は、「マンション管理の適正化の推進を図る基本的な方針(R3年9月)の中に、管理組合に向けて発した『マンション管理適正化指針』がある。認定基準の大元のような指針内容であり、網羅性も高く大変優れている。ぜひ、みなさんも一読いただきたい」と意気込む。 今回の制定は、目標を達成させるべく、管理組合員全員が管理意識を高く持つことが狙い。達成できれば認定がおり、認定されているマンションとして市場で高く評価されるというモチベーションにつながっていく。その認定期間は5年であることから、5年毎にその最低限度の状態を確認していくことになる。 さらに認定のメリットについて土屋氏は「大きく分けて2つある。一つ目は、フラット35の利率やすまいる債の利率が優遇されること。しかし重要なのは二つ目。認定を目指して理事や住民の意識が変わり、その結果、認定を受けられるような管理が実現すること。つまり認定制度を通じて管理そのものが改善されていくこと」と解説した。 加えて久保は「永住志向の方には関係ないと思うかもしれないが、それは違う。建物は高経年化が進み、同時に社会は少子高齢化。さらに住宅余りの時代となっている。管理不全に陥ったマンションを相続した子孫は、売れない、貸せないという負の遺産に苦しむことになる。これからのマンションは、市場から居住価値を認められるかどうかが大きなポイントとなる」とした。 終の棲家とするも、投資用とするも、“活きたマンション”でなければ意味がない。そのためには、日頃の手入れ、計画的なテコ入れという「管理の質」がすべてを物語る。そうした意味でも、今回の管理計画認定制度の施行は、専門家・マンション管理業者はもちろん、分譲マンションに住む人・住もうとしている人、すべてに一石を投じ、大きく舵を切る可能性を秘めているといえる。 さまざまな観点からの議論がなされたところで、管理計画認定制度に関する押さえておくべき全体像をマインドマップ化。カテゴリー分けされた課題について、より専門的な見解を促した。 管理計画認定制度は、今後の動きに大きな期待と注目が集まっていることは間違いない。