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2024/02/20
第14回 マンションみらい価値研究所セミナー 「高齢者福祉と分譲マンション~共に支え合い、健やかで心豊かな社会の実現を目指して~」
続きを読む1月19日(金)、第14回となるオンラインセミナーが開催された。今回は医療経済研究機構 政策推進部副部長、放送大学客員教授の服部真治先生をお招きし、「高齢者福祉と分譲マンション~共に支え合い、健やかで心豊かな社会の実現を目指して~」と題してお届けした。 本研究所でも再三にわたり議論しているテーマのひとつである「高齢者と暮らし」。今回ご登壇いただいたのは、自治体職員として福祉や介護サービスを担当後、厚生労働省で政策立案に携わられた実績を有し、現在も「医療経済研究機構」において地域包括ケアシステムについて取り組んでいる服部真治先生だ。 まず予備知識として、高齢者福祉の3原則と言われる「生活継続の原則」「自己決定の原則」「残存能力活用の原則」を解説。これらをふまえて現状の課題を見ていく中で、セミナーの最後には「分譲マンションの落とし穴」をどう解決していくべきなのかという課題提起へとつながっていく。 そもそも、介護が必要な理由としてどんなことが挙げられるのか──それは「認知症」「フレイル(衰弱)」「骨折・転倒」が主なものだという。これらを回避するためには、日頃の生活が大切である。具体的には、社会との交流や活動を積極的に行うかどうかで、老化の進行度合いが違うようだ。 例えば、こんなシナリオもあるだろう。もともとあまり社交的でない高齢者が、運動不足により骨粗しょう症を発症。あるとき転倒して骨折してしまい、外出が困難または寝たきりの状態となって、フレイルに陥る。人との交流が無い中で認知症も発症し、要介護者となってしまう。特に女性の場合は骨密度が男性より低いこともあり、骨粗しょう症の症状が進みやすいことは注意が必要だ。 服部先生の講演の中で印象的だったのは、就労でもボランティアでも、社会活動を積極的に行っている人は認知症になりにくいというデータがあるということ。身体だけではなく頭も若々しくいるためには、やはり社会とのつながりやコミュニティが必要不可欠であるといえそうだ。 また、愛知県豊明市のとあるスーパーでは、高齢者を対象に買い物を無償で配達してくれるシステムがあることを紹介。重たい荷物を持ち運ぶ労力がなくなることで大いに喜ばれるとともに、スーパーとしても「午前中の買い物に限る」としたことで、忙しくなる夕方の時間との分散を図ることができたというWin-Winの事例だ。この旗振りは自治体が行っているようだが、後半での研究所メンバー・田中昌樹を交えたセッションで、田中は「なぜこのような成功事例が全国的に発展していかないのか」と質問。これに対し服部先生は「この自治体はたまたまこうした間口を設けていたが、他の自治体ではなかなか企業との相互関係ができていない」と説明した。 こうした互助システムは、生活拠点の集合体である分譲マンションにおいても優位に働くはずだと服部先生は持論を展開したが、田中は「分譲マンションは地域の目が届きにくく、自治体のサポートが行き届かない現状がある」と厳しい実態を明らかにした。 いずれにしても、分譲マンションにおける高齢者福祉を考えるにあたり、互助システムをはじめ、自治体との連携を含むサポート体制の構築に真剣に取り組まなければいけない時代へと突入したことは間違いない。高齢化が進む日本においては喫緊の課題であり、管理組合、管理会社としても何らかの策を講じていかなくてはならないだろう。
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2023/12/01
第13回 マンションみらい価値研究所セミナー 「マンション標準管理委託契約書の改訂が示す本当の意味〜カスタマーハラスメントと認知症の課題について〜」
続きを読む11月16日(木)、第13回となるセミナーが開催された。今回は「マンション標準管理委託契約書の改訂が示す本当の意味〜カスタマーハラスメントと認知症の課題について〜」と題し、マンションみらい価値研究所の所長・久保依子が登壇した。 昨今、マンションという住まいの形態がもたらす課題は社会問題としてニュースでも多く報じられるようになり、世間の関心が高まっている状態であると考えられる。そんな中、国土交通省では9月に「マンション標準管理委託契約書」の改訂を公表した。その内容は主に「①書面の電子化及びIT総会・理事会等への対応」「②担い手確保・働き方改革に関する対応」「③マンション管理業の事業環境の変化への対応」であったが、本セミナーではこの中から②に該当するカスタマーハラスメントと認知症の課題を解説した。 そもそも「マンション標準管理委託契約書」には、弱者であると想定した消費者(管理組合)を守るためにさまざまな条文が記載されてきた。つまり、これまでは「カスタマー」としての管理組合を守ることに注視した法令や指針などが主であったと言える。しかし1999年に発生した、いわゆる「東芝クレーマー事件」に端を発し、その後の時代の変化とともに、マンション管理事業者への嫌がらせ行為、いわゆる「ハラスメント」問題が浮き彫りとなり、国をあげて問題解決に取り組む動きが出てきた。 実際に、マンションのフロント従事者にハラスメント行為を受けたことがあるかどうかを問う調査では、約6割が「あった」と回答しているという。加えて久保は「駅で駅係員や乗務員への暴力などのハラスメント行為の防止を呼びかけるポスターが貼られていた」ことを例に挙げ、カスタマーハラスメントは不動産業界だけでなく、さまざまな業界において起きているという実態に触れた。 今回の国土交通省による改訂には、マンション管理事業者がハラスメント行為を受けた際、特定の担当者とカスタマーという個人間のやりとりだけに留めるのではなく、それぞれが所属する団体全体の問題として捉え、事案を解決するようにという指示が追記されているという。つまり、マンションのフロント従事者と区分所有者・居住者との間だけで解決させるのではなく、管理会社と管理組合として対応していくことが求められているということだ。 これは、認知症高齢者に向けた対応も同じだ。症状によっては攻撃的になる場合もあるなど、その対応の仕方は難しいところではあるが、組合員等にひとり歩き等の認知症の兆候がみられ、そのことが共同生活や管理事務の適正な遂行に影響を及ぼすおそれがあると認められる場合には管理組合に通知する、また契約の範囲内であれば本人の同意なく情報を管理組合に提供できるとも示している。 管理組合と管理会社の契約においても、時代に則した改定や解釈が必要であるといえるだろう。
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2023/11/01
第12回 マンションみらい価値研究所セミナー 「これからのマンションの課題を考える〜熱海が教えてくれる未来のマンション管理〜」
続きを読む10月12日(木)、第12回となるセミナーが開催された。今回は株式会社マチモリ不動産、代表取締役の三好明氏をお迎えし「これからのマンションの課題を考える〜熱海が教えてくれる未来のマンション管理〜」と題してお届けする。 今回登壇いただく三好氏は、大和ライフネクストの元社員。在勤中に熱海の経済復興や空き家問題にボランティアとして携わったことをきっかけに、熱海が抱える問題をマンション管理者の視点で解決するべく取り組んできた。 「マンションみらい価値研究所」のサイト内では、『「1円でもNo」を経た熱海のマンションV字回復。 元マンション管理会社社員の活動に“マンションにおける問題解決へのヒント” を見る』(2023.9.14)のコラムに登場している。 その三好氏が登場する前に、同ウェブサイトで公開中のレポート「管理組合の相続人調査および相続財産管理人選任申立てについて(2022.3.20)」を執筆した研究員の大野が、レポートの内容に新たな説明を加えるかたちでカメラの前に立った。 大野は「当研究所ホームページで2022年3月時点に公開したものがあるが、2023年4月1日施行の民法改正により従来の『相続財産管理人』は『相続財産清算人』に名称が変更された。本日は『相続財産清算人』という名称で話を進める」という断りを入れて話をスタートした。 今回大野が解説するのは、区分所有者が亡くなった後、その住戸の相続が行われないことで困惑する管理組合の実例。 基本として、区分所有法には「特定承継人の責任」という条項があり、管理費等を支払えない、または支払わない区分所有者がいたとしても、所有権が移転した場合には、新しい区分所有者に滞納管理費等を請求できると定められている。これにより、競売の申立てによる落札、売買や贈与など、所有権が移転した場合には、管理組合の費用と労力をかけることなく、滞納されている管理費等を回収することができる。 しかし実際には、区分所有者が亡くなったあとにマンション住戸の相続が行われないケースなど、所有権の移転を待っているだけでは滞納された管理費等の回収ができず、管理組合が相続財産清算人の申し立てを行った事例が2018~2021年の期間に9つ(大和ライフネクスト㈱管理の4,000組合に対して実施した調査)あるという。 相続財産清算人選任の申し立てを行った管理組合の理由は大きく3つ。それは、①回収目途の立たない管理費・修繕積立金の滞納が膨れ上がり、いずれ管理費等の請求権の時効を迎えること、②消防用設備点検や雑排水管清掃などの、共用部分と一体として管理する設備機器のメンテナンスおよび取替ができないこと、③今後、区分所有者不在の住戸が増えてくと、総会の決議が困難になる可能性もあること、だという。 今回調査した事例では、1年より短く解決したものはなく、最長で解決までに3年7ヶ月ほどかかっている。そのため、管理組合の役員が輪番制の場合には、役員間において方針や情報の引き継ぎが重要だという研究調査結果であるとした。 後半では先述の三好氏が登壇し、熱海の現状と改善、そしてマンション管理の未来を解説していく。 熱海といえば昭和初期の新婚旅行のメッカでもあったように、早い段階から観光地化やリゾート開発化が進められた歴史を持つ。そのため、築40年以上の分譲マンションが多く所在し、日本全体に先駆けて管理問題、空き家問題が発生した地でもある。 当時、大和ライフネクストに在勤中だった三好氏は、熱海の“時代に遅れた”原状を目の当たりにし、居ても立ってもいられずボランティアとして毎週通ったという経緯を話した。その後退社を決め、自身も熱海に移住し現在に至っている。 シャッター商店街や稼働率の低い宿泊施設、また全国ワースト2位の空き家率など、もはや瀕死状態の熱海を再生することができれば、これから全国でも起きてくるであろう同様の問題にも対応できるのではないかと考えたという。 その体験と成功事例などを元に、所長の久保が5つの質問を投げかけている。1つ目は「お金がないマンション」はどのようにすべきなのか。2つ目は、前段で大野が発表した内容につながる「所有者不在のマンション」という課題はどうクリアしていくべきか。3つ目は「管理組合運営が停滞した場合」という難問。4つ目は「資産価値の向上による新規入居者の獲得」、5つ目は「経年劣化と賃貸化率」だ。 この中で三好氏が意見した内容が印象に残る。「全国のまちづくりでよくある失敗は、東京のシンクタンクなどコンサルに頼めば解決すると考え、自分たちは何もせずにいること。結局やるのは自分たちしかいない。まずは当事者としての意志があって、さらに周囲を巻き込むことが大事」。 さらに4つ目の課題である「資産価値の向上による新規入居者の獲得」については「見た目などはもちろん、それ以外にもペットの飼育を可能にすることや、民泊を可にするなど、マンションのルールの見直しを検討することが重要。その際は、まずはお金をかけずに取り組めるものを見定めて、急に大きく変えようとせず、徐々に規制緩和していくことがポイントになる。従来のように「住まいに人の生活をあわせる」のではなく「人の生活に住まいをあわせる」という考え方でマンションの自由度を高め、資産価値向上に成功している事例が熱海にはいくつもある。自分たちのマンションをどうしていくか、自分事として捉えて十分な議論をしてほしい」と語っている。
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2023/10/04
第11回 マンションみらい価値研究所セミナー 「老いの本質をとらえて、マンションライフを考える」
続きを読む9月14日(木)、第11回となるセミナーが開催された。今回はNPO法人「老いの工学研究所」理事長・一般社団法人「人と組織の活性化研究会」理事でコラムニストの川口雅裕氏をお招きし「老いの本質をとらえて、マンションライフを考える」と題してお届けした。 司会を務めた鈴木理文は冒頭で、「今、日本のマンション全体の2割近くが築40年以上。こういったマンションの『建物の老朽化』もさることながら、孤立死や認知症に伴うトラブルなどの『住民の高齢化』も問題になっている。『福祉は住宅に始まり住宅に終わる』という言葉があるくらい、住宅は人が生活する上ですべての基本となる」と前置き。これを踏まえ、研究員の田中昌樹が執筆したコラム「歳を取るとマンションに住んでいられない?」を元に見解を展開した。 田中の調査研究では、日本の国勢調査には分譲マンションの項目がないことを指摘し、分譲マンションの実態把握が曖昧であることを示唆。よって、行政の各施策においても戸建て住宅が前程となっているものが多いが、実際には分譲マンションと戸建て住宅で高齢社会における課題の違いがあるはずだと指摘。 その違いを明らかにするため、足立区が2017年と2020年に区内の全高齢者を対象とした悉皆調査のデータをベースに、分譲マンションや戸建て住宅といった住居形態ごとの違いや課題を追った。 特筆すべきは、「戸建て住宅、事業所併用住宅、アパート」の割合が高い地域では、近所の人への信頼感が高い傾向があり、「マンションや団地」の割合が高い地域では、近所の人への信頼感が低下する傾向が見られたという。総じて、分譲マンションは地域コミュニティや近隣との関わりが薄く、福祉などの支援が届きにくい社会的な構造があることが懸念されることを指摘した。 後半では、先述のゲスト・川口雅裕氏が登壇し田中との対談が行われた。川口氏は京都大学教育学部を卒業後、不動産デベロッパーに入社。その後独立し、現在約1万9千名に及ぶ会員を保有する「老いの工学研究所」にて日々研究・講演活動を行っている人物だ。 著書『年寄りは集まって住め』(幻冬舎ルネッサンス新書)の内容を中心に話題は進む。そもそもこの本を執筆するきっかけとなったのは、先の団体で活動する中で経験した“幸福な高齢期を送る人たち”との出会いであったという。ある方は若い頃に夢中になった絵画に熱中、ある方は音楽バンドを結成、またある方は学びのコミュニティとして「大阪自由大学」なる団体を結成し活動している、といった内容が紹介された。 しかしながら社会全体を見ていくと、都市化・核家族化による弊害として地域コミュニティが崩れ、特に高齢男性が取り残される事態が起こっていることを指摘。それは、定年退職後に所属団体から放り出されることも影響しているとし、退職後も社会とのつながりもつ意味でもどこかの団体に所属していくべきだとした。 さらに、長年妻に家事を任せきりで生活をしてきた高齢男性が妻に先立たれると、食事はおろか下着の在り処もわからないほどの困難に遭遇する場合があるとし、このことがより孤独感や不安感を大きくしているという。 一方で、高齢者の歩行速度からみる身体的な若返りという調査では、20年前の70年代前半と現代の80代前半がほぼ同じであることがわかった。 ここでひとつの結論としては、漫画『サザエさん』の家族構成や住まい方のように、一昔前の三世代同居における時代では、敬老の精神もあり高齢者が何もせずに暮らしていくことができたため、孤立化という問題は起こらなかったが、体力的な衰えを始めとする老け込みが進んだ。しかし現代は、買い物、料理、掃除、洗濯といったことも自分でしなければいけない時代であることから、体力面・外見面での維持・向上が見られているのだろうとした。 最後に、著書のタイトル『年寄りは集まって住め』の論点に立ち返る。高齢者に向けたアンケートでは「同世代との交流」を望んでいる人が圧倒的に多かった。その理由としては、世代が異なることで話題やライフスタイルの違いが浮き彫りになり、心からの満足が得られないからのようだ。つまり高齢者は高齢者同士だからこそわかり合えるものであり、同世代との交流を活発にしていくことが現代を豊かに生きていくポイントであるとし、さらに東京大学の研究からも、健康長寿の3要素のひとつに「交流」が挙げられているとして見解をまとめた。
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2023/09/07
第10回 マンションみらい価値研究所セミナー「住まい方ひとつで人間関係は変わる。〜マンションで暮らす「配慮が必要な方」への支援~」
続きを読む8月17日(木)、第10回となるセミナーが開催された。今回は静岡大学名誉教授 外山知徳先生、そして先月のセミナーでもご登壇いただいた不動産コンサルティングマスターの株式会社CAN代表取締役 加納幸典さんをお招きし「住まい方ひとつで人間関係は変わる。〜マンションで暮らす「配慮が必要な方」への支援~」と題してお届けする。 「8050(はちまるごーまる)問題」という言葉を聞いたことがあるだろうか。これは、高齢化問題のひとつとして取り上げられ、80歳代となった親が引きこもり状態にある50歳代の子どもの世話をする、といった逆転の構図を表したものである。 こうした家庭のあり方は今後さらに深刻化が予想されることから、昨今ニュースとしても頻繁に取り上げられるようになった。このように多様化する親子関係が生み出すさまざまな社会問題を「住まい」の観点から研究されているのが、住居学の専門家で一級建築士の資格を持つ外山先生だ。 セミナーの中で先生は、過去に担当した登校拒否児童の例を挙げ「家の中に自分のテリトリーを形成できたことで、登校拒否が直った」ことを解説。これに対し「マンションみらい価値研究所」所長の久保依子が「親からの愛情が希薄だったのか?」という疑問を投げかけると、外山先生は「そんなことはなかった」と言う。 では、何が原因で登校拒否をするようになってしまったのかについて、外山先生は「家の中で自分の居場所を確保できなかったことが問題」だとした。居場所とは、自分用の部屋を提供することが必ずしも最善策ではないようで、「たとえば『ここはお父さん専用の場所』と座布団一枚を用意するのでもいい」と言う。それにすかさず反応する久保は「ええ、うちの夫がそうです(笑)」と笑いを誘った。つまり、その人物にとって心の安定が担保できる居場所づくりが重要だということだ。 先の登校拒否児童も、兄が就職して独立したことをきっかけに、兄が使っていた部屋に自分の机や寝具を置き、好きなアイドルのポスターを張り、部屋の在り方を変えたことにより、自身の居場所を確保することができ、心の安定を取り戻したようだ。 このことからも、子ども部屋を与えることが問題の予防策になるとは必ずしも言えないが、一方で与えないことで起こり得る問題もあると指摘。噛み砕くと、自分の部屋を与えられたとして自立に耐え得る成長を満たしていない子どももいるであろうし、親と離れた環境を提供することで抵抗心を抱く場合もあるという。 その反対に、自我が確立され思春期を迎えると、四六時中親と寝食を同じ空間で過ごすことにストレスを感じることもあるだろう。肝心なのは、子どもの成長過程を見守ることと、普段からのコミュニケーションであり、それらをふまえた上で住まいの空間分けなどを考えるべきなのだと語る。 この流れから、国民的マンガ『サザエさん』一家の住まい環境を事例に挙げ「成長したカツオを、いつまでも妹のワカメちゃんと同じ部屋に住まわせるわけにはいかないだろう」「その場合、ワカメちゃんにはどの間取りを提供すべきか」とし、「カツオには玄関脇の6畳間を提供したらいいのではないか」、その場合「ワカメちゃんは客間が相当か?」「タラちゃんは……」という具合に、国民的マンガの家族を例にとって考察するなど、より身近に考えさせられる一幕もあった。 こうした「テリトリー形成能力」を意識した家づくりを提案する外山先生とタッグを組み共同開発した住まい提供をした経験があるのが、当時はデベロッパーで勤務していた不動産業界活用コンサルタント・加納さん。 企画・開発当時は、デベロッパーと大学が共同研究をすること自体が珍しかったため、加納さんが所属する会社内で賛否あったようだが、既存顧客に配布する会報誌でこの話題を取り上げたところ、予想を越えた反響があったと振り返る。その共同研究の末、「絆プラン」という住まい方を開発し、実施に販売に至ったのもこうした背景があったからだと言う。 購入当初の家族構成や年齢による住まい方、そして経年後の住まい方に対し、フレキシブルに対応できるのがこの「絆プラン」であり、家族一人ひとりの快適な暮らしを「間取り」がサポートしていくというものだ。 また、セミナー後半では「バリアフリー」という言葉にも触れている。この解釈として認識の最前にあるのは「段差のない空間」であるだろうが、外山先生はここにも10のADL(日常生活動作/Activities of Daily Living)を高める住居のポイントがあるという。 こうした議論を受け、加納さんは今後のデベロッパーの取り組みとして「現状だけではなく、中長期目線で対応する姿勢が求められる」とコメントした。 今回使用したレポート:マンションで暮らす「配慮が必要な方」への支援のあり方(2023.8.3)