初参加レポート:マンション総合EXPOで見つけた最新トレンド

防犯・防災設備・清掃
初参加レポート:マンション総合EXPOで見つけた最新トレンド

 大阪府大阪市にあるインテックス大阪で、11月7日(木)と11月8日(金)の2日間にマンション総合EXPOが開催された。その様子をお伝えしたいと思う。

マンション総合EXPOとは

 住まい・建築・不動産の総合展[BREX関西]2024を構成する5つの展示会のうちのひとつが、マンション総合EXPOである。給水管設備、EV(電気自動車)充電設備、インターホン設備など、管理・修繕に関する最新の製品やサービスをたっぷりと見る・学ぶことができる。また有識者によるセミナーも聴講することができ、ハード面もソフト面も学ぶことができる場である。
 また、同会場ではマンション総合EXPO以外にも住宅ビジネスフェア、非住宅 木造建築フェア、マンション管理組合 サポート展、賃貸住宅・管理・仲介EXPOなどの展示会が開催されており、そのほかにも「マンション防災」をテーマにした特別企画などが開催されていた。

 参加するときにはウェブサイトから事前登録を済ませ、来場者バッジを印刷してから行くとスムーズに入場ができる。今回が初参加だった私は、どんな感じなのだろうかとドキドキしながら、来場者バッジを片手に初日の11月7日に参加した。

住まい・建築・不動産の総合展 BREX関西
(リンク先にて展示会の様子など掲載あり)

最新の製品・サービス

 会場に入ってすぐの場所に、マンションの外壁改修工事等に使用されるゴンドラの展示がされていた。試乗できるというので、ヘルメットや安全ベルトを装着して乗ってみたところ、想像よりも動きがスムーズで、動いている時の音は小さかった。実際の現場では天気や風の強さが使用に影響するらしいが、足場を設置するよりもセキュリティや居住者の生活への影響が少ないのがメリットだそうだ。
 日常生活でゴンドラに乗る機会はまず無いはずだが、入場して10分もせずに貴重な体験をしてしまった。

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 インターホン設備の展示もいくつかされていた。
 最近のインターホンはもはやオートロックを解錠するだけの設備ではなく、掲示物の確認や申請書類の提出ができる仕組みを搭載していたり、宅配業者が一時的なパスワードでインターホンを操作してオートロックを開錠し、玄関前に置き配できるように開発されたものがあったりと、多機能化が進んでいる。

 どの機能も非常に魅力的だが、管理組合からのお知らせをインターホン上で閲覧することに難しさを感じる居住者がいないか、共用部分である玄関前への置き配を認めるか(消防法上の避難経路である場合の注意点や美観上の問題に関して合意する必要がある)など、利便性向上の裏側にも目を向ける必要があると感じた。

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 マンションの機械式駐車場のパレットに取り付けられるEV充電設備も展示されていた。
 随分前に、スタンド式のEV充電設備の導入提案資料を見た時には、導入費用が高く普及は難しいのでは?と思っていたが、最近は少しずつ設置が進んでいるようだ。
 メーカーによって、設備の設置自体は無料で設置後のランニングコストや利用者が払う使用料を高く設定しているパターンや、設備の設置に費用はかかるがその後のコストを抑えることができるパターンなど、さまざまあるそうだ。
 EV充電設備の設置に関して難しいのは、利用者が一部の居住者(EV所有者)に限定され、その利用者の使用頻度が高くなることが想定される点である。これらを踏まえると、利用者が支払う使用料が増えたとしても、管理組合が負担する初期費用を抑えるほうが公平性があるような気がしてくるが、EV充電設備があることで、マンションの資産価値が向上する可能性もある。

その業界の人と直接話をできることのよさ

 実は、会場を回っていて「これはマンションには合わないのでは?」と思う製品・サービスもあった。他のオフィスビルやホテルではニーズがある、売れているからといって、人が住まうマンションに容易く導入できるものばかりではない。
 ただ、そういった出展企業の担当者と話を重ねていくうちに、「当社の製品ではないが、同じ業界にあるこの製品はもしかするといいかもしれない」と教えてくれることがあった。

 マンションは社会の縮図であるとも言われるように、業界が抱える課題は非常に幅が広い。だからこそ、他業界の人に相談し、話を聞いてみることで、意外なところから解決の糸口が見つかるかもしれないと感じた。

最新設備は新築だけじゃない

 ほとんどの展示において、マンションのさまざまな状況に対応できるように商品・サービスを用意していることが印象的だった。
 ついつい、新しいサービス=新築マンション、と思ってしまうのだが、既存マンションでの設備更新時に入れることができるようになっていたり、「予算が限られている」という管理組合の懐事情を汲んで低予算で後付けできるタイプを用意していたり、戸数の少ないマンション向けの特別なタイプが作られていたり、マンションの現状をよく知っている人が考えていることが伝わってきた。

 とはいえ、どの設備も、実際に採用するには管理組合での合意形成にさまざまな壁があるだろう。
 たとえば、インターホン設備に後付けするだけで居住者が不在でも宅配業者が一時的なパスワードでセキュリティ内に入ることができ、玄関前に置き配してくれるサービスは、導入を希望する居住者もいるだろうが、一方でマンションの美観を重視するなどの理由で置き配を好まない居住者もいるだろう。また、EV充電設備のように、導入することの直接的なメリットを享受できるのが一部の居住者に限られていたとしても、マンションの資産価値向上を見込める設備もある。
 新しい製品・サービスが全てのマンションに適しているわけではないが、マンションが抱えるさまざま課題を解決するための取り組みが、各企業の努力のもと着実に製品・サービス化されていっていることを感じた。

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講演・セミナー

 マンション総合EXPOでは13の展示と10本の講演・セミナーがあり、他にマンション管理に関わるものとして同日開催のマンション管理組合サポート展では6の展示と2本の講演・セミナーが開催されていた。
 国土交通省やマンション管理業協会、マンション管理センター、マンション管理会社など、さまざまな登壇者がいるなかで、今回、私は国土交通省の「今後のマンション政策のあり方について」という講演を聴講した。マンションの現状と課題、国土交通省における現在のマンション政策の概要、今後のマンション政策のあり方について、という3つのパートに分けて話があったが、2024年10月の当研究所のセミナーで取り上げた区分所有法の改正についても話にあがり、とても30分という短い時間では物足りない!と思うほど内容の充実した講演だった。マンション政策の概要については、国土交通省のサイトで周知を進めていることも紹介されたので、このコラムでも紹介しておきたい。

国土交通省:マンション管理・再生ポータルサイト

 ほかにも長期修繕計画や、最近注目されている外部管理者方式、マンション管理適正評価制度などに関する講演・セミナーも開催されていた。無料でこんなに充実のラインナップを聞けるなんて!と驚くばかりである。

来年の開催予定

 ゴンドラやインターホン等の製品を直接見て触りながら説明を聞くことができてとても勉強になったし、どの展示、講演・セミナーも盛況な印象だった。展示のあちこちに気になる情報が溢れ、通路を5 メートル進むのにもだいぶ時間がかかってしまった。

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 マンション総合EXPOは次回2025年6月に東京、10月に大阪で開催が予定されている。
 今回は、限られた時間であくせくと回ったが、来年は丸一日費やす位の時間の余裕を持って訪れたいと思う。もし興味を持っていただいた方がいれば、事前にいくつかの展示や講演に目星をつけつつも、たっぷりと時間を取っておくことをおすすめしたい。

住まい・建築・不動産の総合展 BREX

以上

剱持 くるみ
執筆者剱持 くるみ

マンションみらい価値研究所研究員。管理現場にて管理組合を担当する業務や、コンプライアンス・事業広報などを統括する業務を経験。現在は、事業の推進を担う部門に従事する傍ら、マンションみらい価値研究所の研究員として活動中。

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