管理組合とは、分譲マンションの維持・管理などを通して「マンションを運営する」組織だ。もちろん、健全で円滑に進めるためにも日々、運営方法を工夫しているはずだ。どんな「工夫」をしているのか、地域の分譲マンションのコミュニティづくりを推進するエリアマネジメント組織の立場として私自身が見てきた実際の例を通して、管理組合でコミュニティ活動を推進することの意味について、考えていきたい。
団地再生事業により、新規分譲街区となった「ひばりが丘団地エリア」(東京都西東京市)の分譲マンションでは、住民同士の交流を促進するために「コミュニティ担当理事」という役職を設置している。住民全員の資産であるマンションは、建物の修繕や設備の維持、短期〜長期の運営計画などを決定し、実行に移していく必要がある。そのため管理組合は、管理費を集金し、そのお金をどう運用していくかを考えていく。管理組合の役員は通常1年〜2年交代の持ち回りで、理事長、副理事長、理事などで構成される。また、理事に「防災担当」「会計担当」などの役職が付くことがあるが、コミュニティ担当理事とは、その一つだ。先述した修繕や設備維持などのハード面だけでなく、住民の日々の生活を向上させていくことも重要な視点。地震や火事などの有事の際、お隣・ご近所同士が助け合えるような関係性となっているか。日頃から住民同士の信頼関係が生まれていることで、管理における合意形成をスムーズにする意味もある。関係性が希薄になりがちな集合住宅内において、近くに住む人たち同士のコミュニティづくりが重要になってくるのだ。
そんなマンション内の関係づくりに一役買っているのがコミュニティ担当理事。その活動について、入居当初はイメージしにくいだろうが、マンション住民同士の懇親イベントなどが活動の中心になるのではないだろうか。実際にひばりが丘団地エリアのマンションでは、入居後の懇親パーティーや、クリスマスイベントなど、住民が楽しみながら参加できるイベントを企画した。その内の一つ、「ひばりが丘フィールズ1番街」の懇親パーティーでは、居住する地域のクイズを出題。まちの情報について子どもから大人まで楽しむことができた。「ひばりが丘フィールズけやき通り」というマンションでは、晴天のもと屋外空間を使ってのティーパーティーを開催。最初は席の隣同士、その後は居住階の近い人、というように、多くの住民と交流できる工夫をし、さまざまな世代が集まり会話を楽しんだ。クリスマスイベントでは、ハンドベルの演奏やエントランスホールに設置したクリスマスツリーの飾り付けが、ひばりが丘団地エリアの恒例行事となっている。当初はとあるマンションの管理組合が主催したイベントだったのだが、その噂を聞いて近隣のマンションでも開催することになった。ハンドベル演奏の練習では先生役の住民がほかのマンションの練習でもレクチャーするようになり、棟を超えた交流にもつながっている。時間とともにマンション外の様々な人たちとの協同も深まり、連携が進んでいく。各マンションのコミュニティ担当理事が集まり、賃貸住宅の自治会が主催する地域のお祭りにも参加し、出店の企画を考えたり、居住者の参加を促したりする役割も担った。
今回は交流が盛んに見られた事例を紹介したが、目指すべきマンションコミュニティの姿は「孤独にも、しがらみにもならない、関係性」だと私は考えている。積極的なコミュニケーションが苦手な人も当然いるだろうし、交流を全住民に強いることは難しい。しかし、震災などいざという時に、隣近所の住民で助け合える関係性を構築しておくことは、日常生活にも彩りをもたらし、マンション運営に関心を持ってくれる住民を増やすことにもつながる。地域やマンションの属性によって様々なやり方があるが、まずはエレベーターやエントランスホールですれ違った際に挨拶し合えるような、ゆるやかな関係性のあるマンションを目指していくのはいかがだろうか。
HITOTOWA INC.プランナー。大学卒業後よりフリーランスとして複数のまちづくり関連のプロジェクトに携わる。HITOTOWA入社後はエリアマネジメントや、マンションコミュニティづくりなどを担当。
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