「最近、会わなかったけど、元気だった?」
「〇〇ちゃん、大きくなったね!」
「また、近いうちにみんなで遊ぼうよ」
これは、あるマンションでの入居者同士の会話だ。マンションに引っ越してきたとき、子育て世帯はわが子と同い年くらいの子どもがいないか気になるもの。お友だちになれたらいいなと思いつつ、挨拶するだけの関係が続くこともよくあることだ。
子育て世帯のお付き合いの変化
一般的な新築マンションでは一斉に入居となるため、当然だが、すでにできあがったコミュニティの中にすぐに溶け込むのはなかなか難しい。
そんな風に入居者たちは、新しい住まいへの期待を抱きつつも、隣近所との関係性や近くに知り合いがいないといった不安を抱えて入居している世帯も多いのだ。
そこで今回は、当社(HITOTOWA INC.)でマンションコミュニティの形成をサポートした、ある新築マンションでの子育て世帯の意識調査を例に、ご近所付き合いや子育てを通じた地域でのお付き合いの実態についてご紹介する。入居後3ヶ月の時点と入居後1年9ヶ月の時点で、どう変化していったか見ていこう。
アンケート調査の回答者と、回答結果の比較
アンケートの回答者は、当該マンションに住む0〜6歳の子どもがいる保護者(父・母)。そのうち、「市外」から転入されてきた割合が4割、子育てで頼りにしている祖父母の居住地は、「電車・バスで1時間以上」という割合が6割だ。
入居後3ヶ月時点の調査は、回答者59名(回収率100%)、入居後1年9ヶ月時点の調査は、そのうち転居者を除いた38名から回答を得た(回収率64.4%)。
まず、隣近所への挨拶が済み、引っ越しもひと段落しているであろう、入居後3ヶ月の時点と1年9ヶ月時点、一般指標の【ご近所づき合いの程度】の比較が下記である。
(注1)入居後3ヶ月・1年9ヶ月の時点の調査は、無回答を除いて割り戻した割合とした。
ご近所づきあいの程度
入居後3ヶ月と比較して、1年9ヶ月の時点では「親しく話をする」「ときどき話をする」の割合が大きく増加し、「挨拶をする程度」の割合は減少している。
(注2)川崎市(2014)は、「無回答」「その他」を「無回答/その他」として集計した。
次に、「子育てを通じた地域でのお付き合い」に関する比較である。
地域で子どもを預けられる人
入居後3ヶ月では、「ひとりもいない」の割合が約8割だったが、入居後1年9ヶ月の時点では、5割に減少し、約半数が1人以上はいると回答している。
地域で子どもを気にかけてくれる人
入居後3ヶ月では、「ひとりもいない」の割合が約6割だったが、入居後1年9ヶ月の時点では、1割に減少し、8割以上が1人以上はいると回答している。川崎市の調査(2014)と比較しても、「ひとりもいない」の割合が少ない結果となっている。
マンション内の知り合いの人数
入居後3ヶ月では、「ひとりもいない」の割合が約5割だったが、入居後1年9ヶ月の時点では、1人以上はいると回答した割合がやや増加している。
地域で子育ての悩みを相談できる人
入居後1年9ヶ月の時点の調査結果によれば、マンション内の知り合いの人数は、平均7.6人(中央値5.0人)だった。
知り合ったきっかけ
「マンション内イベント」の割合が7割と最も高く、次いで、「入居時の挨拶」「子どもの学校・保育園等」となっている。
同マンションでは、一斉入居後に入居者全体の交流会のほか、防災ワークショップや子育て世帯向けの講座・イベント等を行ったことが、交流のきっかけとなっていたようだ。
入居者同士のつながり
子育てを通じたお付き合いは、マンションに限る必要はない。けれど、身近に気にかけてくれる人や子育ての先輩がいることは、子育ての孤立感や不安感の解消につながる可能性もある。また、災害時の助け合いの観点からは、ご近所でのつながりがある方が、いざという時にもスムーズだ。
あなたは隣近所の方と話ができる関係性がありますか? ご近所や入居者同士が笑顔で会話する姿をどれくらい見たことがありますか?
ちょっと困ったときも、いざというときも身近な知り合いの存在は大きい。挨拶だけの関係性から、気軽な会話ができる関係性をつくるために、管理組合で気軽な交流の機会をつくってみてはどうだろうか。
〈参考資料〉
・HITOTOWA INC.(2019)子育て世帯意識調査 追跡調査報告書
・ベネッセ教育総合研究所(2011) 第2回妊娠出産子育て基本調査(横断調査)報告書
・川崎市(2013)子ども・子育て支援に関する調査報告書