マンション暮らし、「自分の情報」をどこまでご近所に伝える?

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マンション暮らし、「自分の情報」をどこまでご近所に伝える?

「個人情報の開示」は近隣トラブルの元になる?

今年は引っ越し業者の人手不足により、引っ越したくてもできない「引っ越し難民」が多いと聞いた。そんな引っ越し繁忙期を経て、新居での生活をスタートさせたというあなた。これからはじまる「ご近所付き合い」はどの程度しておいた方がよいのだろう?

筆者は、以前、「コレクティブハウス」という多世代共同住宅に住んでいたことがあった。

(参考)
>マンションみらい価値研究所>コラム>災害時の助け合いに「仲良し」は必要ない? 

そのため「名前」や「顔」をお互い知っている距離感での「ご近所付き合い」をしている方が、非常時にも助け合えるのではないか、と考えていた。

一方で、「引っ越し挨拶や近所付き合いといった『自己開示』は、近隣トラブルの元でもあり、敢えてしたくない」という人達(特に女性)も増えてきていると聞く。ご近所とのお付き合いは、どの程度しておいた方が良いのか、かえってお付き合いをしない方が安心安全に暮らせるのか、について考えてみたい。

「近隣トラブルリスク」を最初に抑えておく重要性

そもそも「ご近所付き合い」を開始する前に、「近隣トラブル」が発生しそうなマンション、そうでないマンションは、「新居探し」の時点で比較的判断できるように思う。

日本法規情報株式会社のアンケート結果によると、「およそ3人に1人が近隣トラブルを経験したことがある」と回答しており、その内訳の第一位は「騒音トラブル」だ。つまり、「騒音トラブル」が発生しそうなマンションを選ばないことで、「近隣トラブル」遭遇率を大幅に下げることができる。

また第二位は「境界線トラブル」。よく聞くのは、自分のエリアに私物がはみ出している事例。また第三位は「ゴミの不法投棄、ポイ捨て」。隣のベランダにゴミが置きっぱなしで虫がわくという話も聞く。

こういった「近隣トラブルリスク」を判断するには、どのような点を事前に確認すればよいだろうか。以下にまとめてみた。

【「近隣トラブルリスク」チェックポイント】

①「家賃」の確認
「大学1年生」や「社会人1年目」が払える賃料帯であると、どうしても「たまり場」的な部屋になってしまう可能性がある。「家賃の安さ」は魅力かもしれないが、「家賃が高い」からこそ守られている多くのメリットもある。もし「家賃が格安」だと思ったら、逆に「何が守られていないのか」を考えた方がよいだろう。

②「壁の厚さ」の確認
あえて在宅率の高い時間帯(特に夕食時)に内見することで、実際の「騒音」を確認することができる。新築でも音が反響しやすいマンションもあれば、最近では「ペットOK」マンションもあるため、実際の「生活時間帯」に確認することがポイントだ。

③「子ども用自転車・ベビーカー」の有無
玄関前や自転車置き場に、どの程度、ベビーカーや子ども向け自転車、三輪車などがあるかを確認しておくと、近隣の生活環境が把握できる。

個人的体験では、最近は「一人っ子」家庭が増えてきていることから、「子どもが居る家」よりも「大人二人暮らしの家」の方が、騒音が大きかった経験もある。「子どもだからうるさい」とは決して一概には言えないが、低年齢の子どもの有無は確認しておくとよいかもしれない。

④「騒音注意」の張り紙の有無
掲示板に、「騒音注意」の張り紙が貼っていないかをチェックしよう。そして、その張り紙の日付が新しいか否かもポイントだ。日付が新しければ、最近まで騒音トラブルが発生していることが分かる。

⑤「境界線」のゆるさの確認
廊下やドアの横に、私物を置いていないかをチェックしよう。災害時は、ドアの横に置いている私物、例えば、クーラーボックスや鉢植えなどが廊下に散乱して避難の妨げになることもある。長年の居住者であればある程、共用空間を無意識に私物化してしまうケースも散見されるため、確認をしておこう。

⑥「ゴミ置場」の確認
「ゴミ置場」がきれいか否かは、マンション住民だけでなく、管理会社も含めた「モラル」が一番現れやすい。きちんと区画整理や張り紙などがしてあるのに汚いのであれば、利用者側の問題である。不法投棄が多いのか否かも含めて、重点的にチェックをするとよいだろう。

⑦「ベランダ」の確認
「ベランダに、よじ上りやすいものがないか」という防犯視点や、「隣のベランダにゴミが溜まっていないか」という視点、「ベランダに椅子やテーブル、スーツケースなどの私物を出しすぎていないか」という災害時の避難視点などから、お隣のベランダもチラリとチェックをしておくとよいだろう。

特に、お隣が「ベランダ喫煙者」の場合は、洗濯物や干している布団がタバコ臭くなるリスクが高くなる。最近では「隣のベランダ」という単語で検索すると「柔軟剤」「鳩」「水」といったものもヒットするため、そのような「臭い・汚れリスク」も念頭においておきたい。

ご近所に開示したい情報、したくない情報は何か?

さて、上記の「近隣トラブルリスク」をきちんと確認した上で新居へ入居したとする。ご近所にはどの程度「自己開示」をすればよいだろうか。それを考える上で「開示したくない情報」は何か、それに対してどのような対策が講じられるかを考えてみたい。

①「女性の一人暮らしだと悟られたくない」
「女性であること」さらに「一人で住んでいること」を知られたくない人は多いようだ。しかし、果たして、どこまでお隣に「女性の入居者であること」「一人で住んでいること」を隠し通せるだろうか。

もし「ベランダチェック」が可能であれば、相手も自分のベランダがチェックできるということだ。自分のベランダに何も置かないのであればよいが、それが下着でなくても、干してある洗濯物や置いてあるものなどから「(男性も居るかは分からないけれども)女性が居る」ことは伝わってしまうのではないか。

そうであれば、始めから「男女二人暮らし」の体裁で「引っ越し挨拶」をしておくのが、一番安全かもしれない。つまり、兄弟でも男友達でもよいので、同伴の上「引っ越し挨拶」をしてみる。更に、ベランダにも男性ものの洗濯物を干しておく。引っ越し挨拶をせずに「隣人が誰なのか」が分からないよりは、男女二人暮らしという「偽の自己開示」であっても、それによる安全メリットは大きいのではないだろうか。

②「子どもが居ることを悟られたくない」
「家を出たら一歩外は『危険地域』だから、できるだけ、自分の子どもの存在を知られたくない」と仰っていたお母さんがいた。確かに、昨今増加傾向にある性犯罪リスクなども心配になることから、「子どもの存在自体」を部外者に知られたくない気持ちは分かる。

一方で「『自分の子どもであること』をご近所さんにも知っておいてもらい、いざという時には守ってもらいたい」と仰っていたシングルマザーもいた。特にシングルマザーにとっては、既に親の目が届かない現状があり、そのリスクを一人で必死に背負いこむより、他者に協力して欲しいというのも理解できる。

そもそも「子ども」が居ることは、子どもの声や足音なども含めると、なかなか隠し通しづらい事実だろう。そこで、「親だけで」引っ越し挨拶に伺い、子どもがいることを伝えておくのはどうだろうか。何回か挨拶をして、顔見知りになっていく中で、子どもを引き合わせてよい相手か否かを判断していくことも可能だ。

「子どもも含めた家族ぐるみ」で付き合えることが一番だけれども、それができるのかどうかを、「引っ越し挨拶」などから始めて、じっくり判断していくと、「お互いに心地よい距離感」が作れる場合もある。

自己開示をするべきか否かは一概にはいえないが、まずは相手を知ることが重要であり、それに応じて今後の付き合い方の最善を探ることで、より豊かな環境が築けるはずだ。

田口 歩
執筆者田口 歩

ビジネスモデル・デザイナー®。(株)ベネッセコーポレーションでの編集業務、オルビス(株)での、マーケティング、広報、上場準備業務を経て独立。コレクティブハウスでの居住経験を元に、多世代型シェアオフィスを企画運営。現在は、オランダにて、メーカー社外広報、起業家支援コンサルティング、移住相談を実施。

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