「オリジナルご近所コミュニティ」の効果とは!?

コミュニティ
「オリジナルご近所コミュニティ」の効果とは!?

コミュニティがなければ自分で作るのも手

「マンションコミュニティ」という言葉が聞かれるようになって久しい昨今、「コミュニティスペース付きマンション」等も多くなり、マンション管理組合の活動も活発化してきている。それだけ、多くの人達が「豊かなマンション暮らし」に「コミュニティの力」が不可欠であることを感じ始めている証拠なのかもしれない。

とはいえ、コミュニティ活動が活発なマンションは、人間関係における気苦労も無しではない。しかし、こんな利点もある。

筆者は以前、日暮里にある「コレクティブハウスかんかん森」という多世代共同住宅で8年程暮らしたことがあった。「コレクティブハウスとは何か?」については、こちらの記事でも述べたが、独身やファミリー等、属性や血縁に関わらず多世代が共同で暮らす住まい方である。

そのコレクティブハウスに入居中、あの東日本大震災に遭った。その際、コレクティブハウスというコミュニティ内での経験から、防犯面・防災面では圧倒的に安全だったと感じる。

しかし、現在の居住空間にコミュニティが確立されていない場合は、どのように自分の暮らしの安全を確保すればよいだろうか? そんな方のためにお勧めしたいのが、自分専用の「ご近所コミュニティ」を作ってしまうという発想だ。

ポイントは「困った時に、できるだけ連絡を取り合える関係性」

実は現在、コレクティブハウスを卒業して、マンションで一人暮らしをしている。現在のマンションは二軒目になる。

引っ越しの際に真っ先に考えたのは、「どうすれば、新居を自分の『安心できるコミュニティ』に変えていけるか?」ということだった。コレクティブハウスでは、全員の居住者と毎日顔を合わせる訳ではないが、病気や用事など、困った時に連絡を取り合うのは「お隣さん」や「同じ階の人達」だった。

そこで、私の場合は「両隣」+「上下」+「同じ階」の方々を、「オリジナルご近所コミュニティ」を作ってしまおうと考えた。そのために実施したことは、なんということはない「挨拶」だ。しかし、「困った時に、できるだけ連絡を取り合える関係性」を作るという目的において、「タイミング」と「内容」こそが、その後の安心安全を左右するものでもあるのだ。そのポイントを紹介していきたいと思う。

自分専用の「ご近所コミュニティ」構築ステップ

・対象:「両隣」+「上下」+「同じ階」
 

その①「挨拶タイミング」

入居後3週間以内の「引っ越し挨拶」。週末午前中がオススメ。
今回の目的は「困った時に、できるだけ連絡を取り合える関係性」を作ることであり、「友達になる」という関係作りがゴールではない。そのためにはまず、「顔と顔を合わせて話しをする」必要がある。

居住者のライフスタイルによって異なるが、特に「一人暮らし用のマンション」であれば、筆者の体験から「引っ越しのご挨拶」はやっておくべき。お勧めの時間帯は、週末の「午前10〜11時」と「午後8〜9時」。居住者の在宅率が比較的高かったからだ。週末のライフスタイルとして、少し遅めに起床した後、部屋の掃除や洗濯などを午前中にしていることが多いこと、また月曜日の仕事に影響するからだろう、日曜の夜は比較的早く帰宅している人が多いということだ。
呼び鈴を押すのはドキドキするし、会えない日が続くと「まぁ、いいか」と思いたくもなってしまうが、自分の「安心安全な暮らし」のためである、できれば3週間以内は頑張ろう。

その②「挨拶内容」

「ご迷惑をおかけするかもしれない」と先に「お詫び」をしておくのがポイント

挨拶の際、何を話せばよいだろうか?「オリジナルご近所コミュニティ」を作る際に必要な会話内要をまとめてみた。

1)部屋番号・名前

「●●号室の田口です。引っ越しのご挨拶に参りました」とお伝えして、ドアを開けていただこう。ちなみに、相手もお名前を名乗ってくださることがほとんどだが、そうでない場合は、「お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」と聞くのがポイント。なぜなら、お名前も分からない人には声をかけられないからだ。

ちなみに私は人の名前をすぐ忘れるので、「漢字ではどう書きますか?」と聞いていた。意外と快く教えてくださるものである。

2)「未来のご迷惑」のお詫びを先に

「掃除機の騒音など、気をつけたいと思いますが、もしうるさかったらご遠慮なく仰ってください」と先にお詫びしておき、ここで「お互い様関係」を作っておくことが大切だ。

もし騒音問題で悩んだ時、顔すら知らない人のお宅に「すみませんが、うるさいんですけれど」と言うのは、伝える方も気分が悪くなるだろう。しかし、お顔やお名前が分かっていると、伝え方も攻撃的にならずに済む。お互いに完全ではないので、先にお詫びしておくのが、人間関係作りをスムーズに始めるポイントだ。

その③「手みやげ」

手みやげは「すぐに消費できて、日持ちがして、かさばらないもの」をご挨拶の際、手みやげがあった方がより会話もスムーズになる。特に、相手はインターホン越しに確認をするわけなので、「引っ越し挨拶」と分かり易い体裁(「紙袋」などを持っているなど)が、ドアを開けやすいかもしれない。

予算は500円程度でよいのではないだろうか。筆者が今まで一番喜ばれたのは「アルファ化米のお赤飯」である。「アルファ化米」のため、日持ちはするし、お赤飯なのに炊飯が簡単であり、「お赤飯好きな人」は結構多いからだ。

(参考)アルファー食品(株)オンラインショップ

その他にも、「お菓子(お煎餅・かりんとう・クッキー類)」や「プリペイドカード(図書カード・クオカード)」「ジップロック・サランラップ類」「お米」なども人気と聞く。逆に不人気なのは「タオル」や「洗剤類」だそうだ。確かに要らないタオルは多くてもかさばるし、既に愛用品が決まっている洗剤類は貰っても困るかもしれない。

会えない場合は「ドアノブ挨拶」OK。関係性作りは無理強いしないこと

一方で、「オリジナルご近所コミュニティ」を作ってしまおう」という発想は、あくまでこちら側の希望であり、現代では「ご近所付き合いをしたくない」という方もいらっしゃる。よって無理強いは禁物だ。

3週間以内にお会いできない方とは、「困った時に、できるだけ連絡を取り合える関係性」には、そもそもなれないだろう。その際は、ドアノブにお手紙を添えた「手みやげ」を掛けておくとよい。

お手紙は「何度か挨拶に伺わせていただきましたが、ご不在のようでしたので、お手紙にて失礼致します」といった内容や、「ささやかではございますが、ご挨拶のしるしに心ばかりの品をお贈りさせていただきます」といった程度で大丈夫だ。「女性の一人暮らし」を悟られたくないのであれば、以下で記す「男性の名前」を連名で書いておけば安心だ。

一人暮らしの女性は、「引っ越し挨拶」に異性の連れを同伴するのもオススメ

「女性の一人暮らしで、引っ越し挨拶なんて、逆に危ない」という方は、父親、兄弟、彼氏、男友達など、誰でもよいから「男性」を連れて一緒に挨拶に回ってはどうだろうか。色々な意見があるが、むしろ、隣にどのような人が住んでいるのか、全く分からない方が筆者には恐ろしいように思う。

犯罪者ほど「顔と名前」を知られるのを嫌がると聞くし、逆に「顔と名前を既に知られてしまった相手」、しかも「隣人本人だけでなく連れにも見られてしまった相手」は犯罪対象にしづらいのではないだろうか。

しかし、それでも「自分が女性であることを知られる方が嫌」であれば、ドアノブ挨拶もしない方が懸命かもしれない。そもそも、「隣人が危険な人ではないか否か」については、「居室選び」の段階からの問題であるように思う。「金持ち喧嘩せず」とはいったもので、ある程度の家賃が高めの賃貸住宅だと、犯罪率は低くなるとも聞く。「家賃がリーズナブル」というだけに注力してしまうと、そもそもの安全性が下がることは心得ておきたいものだ。

このように「困った時に、できるだけ連絡を取り合える関係性」作りに向けて「引っ越しのご挨拶」をすると、それこそ隣人の中でも「誰が感じが良い人で、誰が感じ悪かったか」ということであったり、「いざという時に協力してくれそうな人は誰なのか?」が分かる。全ての隣人関係がバラ色でなくても、濃淡が分かることの方が重要だ。これからの引っ越しシーズン、是非、「オリジナルご近所コミュニティ」を作っていただけたらと思う。

これは独身女性で賃貸マンションに住む私の体験談だ。しかし、この「オリジナルご近所コミュニティ」は、分譲マンションでも同じセオリーなのだろう。ご夫婦で新築マンションに入居するなら、その後の長い生活の間、同じように子育てをし、暮らしを楽しむ同胞になる。まずは、「両隣」+「上下」+「同じ階」で住まわれている方とのご近所コミュニティを大切に育てていくべきだろう。

田口 歩
執筆者田口 歩

ビジネスモデル・デザイナー®。(株)ベネッセコーポレーションでの編集業務、オルビス(株)での、マーケティング、広報、上場準備業務を経て独立。コレクティブハウスでの居住経験を元に、多世代型シェアオフィスを企画運営。現在は、オランダにて、メーカー社外広報、起業家支援コンサルティング、移住相談を実施。

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