子育てサークルってどんな?
辞書で「サークル」という意味を調べると、「円・円形のもの」といった意味に加えて、「関心や趣味を同じくする人の集まり」と記載されている。
その通り、分譲マンション内に設立されるサークルでも、定期的に同じメンバーが集まり活動するグループはいくつもあり、その中に子育てに関する活動をしているグループもある。それに比べ、出入りが激しく住民同士のつながりが少ない賃貸マンションでは、コミュニティ形成が難しい。そこで今回は、賃貸マンションでありながら活発な活動をする子育てサークルの事例を、インタビューも交えながら紹介する。
子育て応援マンション
川崎市幸区にある「フロール新川崎」は、神奈川県住宅供給公社が2017年に建てた総戸数174戸という大規模物件。コンセプトは「子育て応援賃貸住宅」で、入居者の4割ほどが子育て世帯だ。
その竣工当初である2017年から活動を続けてきたサークルがある。入居後の交流会で出会ったママたちが次々とつながり、情報交換をしたり、ハロウィンやクリスマスなど季節行事の際にはイベントを開催したり、夏になれば中庭に複数のビニールプールを設置し、子どもたちが水遊びを楽しむ。これが評判を呼び、グループへの参加は、入居1年で30世帯を超え、2年目には約50世帯に上ったという実績がある。
子育てサークルへのインタビュー
そこで、サークルとして活動するようになるまでのプロセスを、サークルの中心的なメンバーのお二人に聞いてみた。
Q1.子育て世帯が集まるようになったきっかけは何でしたか?
●「入居して数ヶ月たった頃、雨の日に室内で遊ばせるため集会室で集まるようになったことがきっかけです。1人がLINEでグループをつくり、それに参加した方がさらに別のママを誘い、と口コミで広がっていきました」
●「10月にはハロウィン、12月にはクリスマス会を開催し、翌年も同じように開催したところ、参加人数が次第に増えていきました」
Q2.交流してみての感想・変化を聞かせてください
●「マンション内に顔見知りが増えたのは良かったですね。たくさんの方と広く知り合って、気の合う方がいれば知り合いから友だちになっていくようになりました。公園で会ったら、立ち話もします。イベント情報を流してくれる方もいて、地域のイベントをLINEで知って参加することもありました。せっかく同じマンションなので、お互いに楽しく過ごせるといいなと感じています」
●「交流をしていると、自分の子どもと違う年齢の子どもに接することができるので、あと数ヶ月経ったらこれくらい成長するんだと思えたり、同じ月齢でも成長の仕方はそれぞれなんだなと感じたり、子どもの成長のイメージが湧くようになりました。それから、夜中に火災報知器が鳴ったことがあったのですが、入居者の方とLINEでつながっているので、不安を感じながらも、原因や状況の情報共有がスムーズで安心できました。災害時は、やっぱりつながりがあると心強いですよね」
Q3.活動する中で課題に感じることはありますか?
●「赤ちゃんの時は、集会室で親も交流しながら楽しく遊べていましたが、子どもの年齢が上がるにつれて、子どもが室内で一緒に楽しく遊ぶための、遊具やおもちゃなどがあるといいです。子どもの年齢や人に合わせて、活動を変化させていくことも必要だなと思います」
●「LINEグループの人数が多くなり、投稿してくれた方へのこまめな返信が難しく、相互のコミュニケーションがしにくいのは少し課題だと感じています」
Q4.活動を続けるコツは何ですか?
●「ゆるやかに続けることですかね。かかわり方は人それぞれでいいと思っています」
●「がんばりすぎないこと。無理することで、続けられなくなることもあると思います」
Q5.今後はどんな活動をしていきたいですか?
●「家族単位だけでなく、入居者のみんなで楽しむことができるといいですね」
●「ハロウィンとクリスマスのイベントは、これからも毎年続けていきたいです。自分の子どもが楽しんでくれると嬉しいですし、身近な方や年齢の違う子どもと交流ができることは、親にも子どもにとってもいいことだと思っています」
今回インタビューに協力してくれたお二人は、どちらも働くママで幼い2人の子どもがいる。以前、「平日は忙しくて、子どもにゆっくり時間が割けない分、休日は子どもが楽しめることをしてあげたい」と話してくれたことがあった。
子どもが楽しめることを考えた結果、同じように悩んでいるかもしれない周囲の親子にも、いい影響をもたらしているようだ。
サークル活動を支える仕組み
最後に、サークル活動を支える仕組みについて触れる。
同マンションには、自治コミュニティ組織(コミュニティ形成委員会)が立ち上げられ、委員会と貸主である公社が認めたサークル・クラブであれば、集会室を無料で使えることになっている。また、子育て支援と防災・減災といった入居者の住環境の向上に資する活動であれば、委員会の予算や神奈川県住宅供給公社の共益費の一部から、活動予算が補助される仕組みがある。
貸主と入居者の理解があり、集まれる場所、予算面のサポートが受けられるため、「こんな活動をしたい!」と手をあげてくれる人がいれば、それを支える仕組みが整っている好事例ともいえる。サークルを立ち上げるためには、活動しやすい環境や仕組みを整えることも大事だ。
活動を続けるには
サークルは、「関心や趣味を同じくする人の集まり」であり、そのかかわり方は多様だ。いつも同じメンバーでなくてもいい、必ずしも毎回参加しなくてもいい。子育てをしていれば、余裕があるときも、大変な時もあるからだ。それを認め合いながら、できるときにはお互いをサポートし合って、無理せず活動していける関係性が重要だろう。