団地管理組合の類型と現状

マンションの法制度
団地管理組合の類型と現状

団地管理組合の類型

 区分所有法第65条に規定する団地管理組合には、どのような類型があるか。
 国土交通省マンション標準管理規約(団地型)では、次の2パターンに分類している。

 ①団地内の土地全体が全団地土地所有者の共有となっている形態

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 ②土地の共有関係は各棟ごとに分かれ、集会所等の附属施設が全団地建物所有者の共有となっている形態

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 マンション標準管理規約(団地型)では、前者を対象としている。
 また、「コンメンタール区分所有法第3版」(稲本洋之助、鎌野邦樹著 日本評論社、以下「コンメンタール区分所有法」という。)では、団地関係の典型例として次の4パターンを例示している。

 ①団地内の敷地全体をABCの3棟の所有者で共有する場合で、敷地全体を結合の核として、ABC棟の建物所有者全員で団地関係を形成している場合

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 ②駐車場部分(土地)、通路部分(土地)、および附属施設を、ABCの3棟の所有者が共有する場合で(各棟の敷地にについては各棟が単独で所有している〈区分所有建物であれば各棟の区分所有者が共有している〉)、駐車場部分、通路部分および附属施設を核として、ABC棟の建物所有者全員で団地関係を形成している場合

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 ③通路部分(土地)を、ABの2棟の所有者が共有する場合で(各棟の敷地については、各棟が単独で所有している<区分所有建物であれば各棟の区分所有者が共有している>)通路部分を核としてAB棟の建物所有者で団地関係を形成している。C棟は、事実上、一団地内に存する建物であるが、その所有者は団地関係を構成するものではない場合

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 ④通路の北側の敷地全体をAB棟が共有し、通路の南側の敷地全体をCD棟が共有し、通路についてはABCD棟が共有する場合

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 マンション標準管理規約(団地型)①とコンメンタール区分所有法①、およびマンション標準管理規約(団地型)②とコンメンタール区分所有法②は、同一のパターンを例示したものであると考えられる。では、実際の団地管理組合は、上記4パターンにあてはまるのであろうか。また、上記以外にどのように管理組合を構成しているのであろうか。

1.実際の団地管理組合の構成

 当社受託管理組合のうち、「一団地内に数棟の建物があって、その団地内の土地又は付属施設がそれらの建物の所有者の共有に属している」管理組合は、156件である。
 これらの管理組合をその形状と管理規約により分類すると9種類に及ぶことが分かった。種類ごとにその特徴を述べる。
 ※図は2棟または3棟からなる団地としているが、実際は2棟から12棟の棟で構成されている。
 ※団地管理組合の共有する「土地」、棟の区分所有者が共有する「敷地」をあわせて「敷地」と記載する。

①土地全体および附属施設をABCの区分所有者が共有する場合(図1参照 117件)

 マンション標準管理規約(団地型)②、コンメンタール区分所有法①に例示されている団地と同様の型であり、117件と最も多い典型的な団地型と言える。
 このうち、マンション標準管理規約(団地型)(以下「団地型規約」という)に準拠した管理規約である組合は83件、マンション標準管理規約(単棟型「以下「単棟型規約」と)いうに準拠した管理規約である組合は34件である。平成9年に国土交通省から団地型規約が公表されるより前に分譲されたマンションは単棟型規約である場合が多い。
 単棟型規約から団地型規約に改正しようとしても、既に積立てられた修繕積立金の分割方法をめぐり各棟の意見はまとまらない。
 単棟型規約には、復旧、建替え、義務違反者に対する措置を決議する棟総会の概念がない。特段の問題が生じなければ単棟型規約での運用でも支障は生じないであろうが、大災害が発生したり、建替えを検討したりする時期になれば、いずれは棟毎の利害関係を調整し、修繕積立金を分割したり、棟総会の決議ができるようにする必要がある。単棟型規約をどのように団地型規約に改正していくかが今後の課題であろう。
 なお、単棟型規約を改正しているものの、修繕積立金は分割せず、棟総会も追加せずに、建替え承認決議の条文のみ追加した組合が2件ある。修繕積立金等の分割はせずに、棟の決議という概念を管理規約に置くことが初めの一歩かもしれない。

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②ABC棟の間に公道が存在しているが、土地はABC棟の共有である場合(図2参照 17件)

 コンメンタール区分所有法でも、各棟の間に「通路」がある場合の例示はあるが「公道」がある場合の例示はない。公道がある場合でも敷地および附属施設を「核」として団地管理組合を成立させている。そのうち団地型規約は10件、単棟型規約は7件である。
 実際には、公道の他にも他人地がある等、各棟の土地が近接しておらず、いわば飛び地の状態であっても敷地を共有したり、お互いの敷地を規約敷地としたりすることによって団地関係を成立させている例もある。
 図3は、ABCD棟が敷地を共有して団地管理組合となっている例である。、C棟は公道と他人地が他の棟との間に存在する飛び地である。この管理組合では、役員を各棟から選出し、棟の均衡が図られるような運営がされている。また、築30年を経過しているが、大規模修繕工事も同時期に一斉に実施している。この例では、管理組合運営における特段の問題は生じていないが、飛び地の場合は生活圏が離れる程、団地管理組合であっても各棟の区分所有者に一団地としての「まとまり」を求めることが難しくなることも考えられる。

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③敷地および附属施設の他、ABC棟の各附属施設が他の棟の区分所有者の共有である場合(図4参照 1件)

 敷地ばかりでなく、全体の附属施設と各棟に存在する附属施設を他の棟の附属施設とし、これらを「核」として団地関係が成立させている。棟毎の附属施設がいわば「相乗り」している関係にある。敷地の共有だけでも団地関係は成立するが、より強い結びつきになっていると考えられる。
 ただし、各棟の附属施設に関する事項を決議するには、他の棟の区分所有者の賛成が必要となる。棟総会だけでは決議することはできない。持分を有している以上、復旧や建替え決議なども同様となる。団地型規約であっても、棟総会の決議事項は限定的となっている。団地でありながら「運命共同体」と言ってもよい。

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④敷地全体をABC棟の区分所有者が共有し、各棟に住宅と店舗の一部共有部分がある場合(図5参照 4件)

 外見上は複数の棟が存在しており、敷地を共有しているため、団地とすることができるが、各棟に店舗または住宅の一部共用部分があり、マンション標準管理規約(複合用途型)(以下「複合型規約」という)に準拠した管理規約としている例である。住宅部会は、ABC棟の住宅部分を所有する区分所有者により構成され、店舗部会は、店舗部分を所有するABCの区分所有者により構成されている。
 住宅の使用方法等のルールや店舗の運営等を決議する場合には運用しやすいと考えれるが、復旧、建替え、義務違反者に対する措置など棟総会で決議すべき事項には対応できない。複合型規約と団地型規約を組み合わせて複層的に棟総会と部会を組織することも考えられるが、管理費や修繕積立金の徴収方法が複雑になること、全体総会の他、棟総会や部会の開催が必要になるなど、区分所有者に時間的な負荷がかかるおそれがあるため、複合型規約を選択したものと考えられる。

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⑤棟の敷地については、各棟の区分所有者が共有し、附属施設およびABC棟の各附属施設を他の棟の区分所有者が共有する場合(図6参照 8件)

 敷地の共有関係はなく、附属施設と各棟の附属施設を「相乗り」して団地関係が成立している。管理規約上は、敷地および附属施設を除く共有持分割合は各棟の専有面積割合の合計を分母とし、全体の附属施設および各棟の附属施設は全体の専有面積割合の合計を分母とする管理規約となっている。
(例 表1のような持分割合である管理組合の場合、敷地および附属施設を除く共有持分割合の分母は400、敷地および附属施設の持分割合の分母は1,200となる)

 この種類の団地のうち、団地関係を解消することを検討した事例がある。しかし、各棟の附属施設の共有関係を解消するには全員合意が必要となる。大規模なマンションであり、全員合意は事実上不可能であるとして団地関係を継続することとなっている。

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⑥棟の敷地については、各棟の区分所有者が共有し、棟の間に公道が存在し、附属施設を共有している場合(図7参照 3件)

 敷地の共有関係はなく、②と同様、各棟の間には公道が存在し、飛び地になっている場合もある。各棟にある附属施設を全体共用部分とせずに、分譲時から単棟型ABCの3組合とすることも可能であったと考えられる。
 では、なぜ単棟型の3棟とはせずに、団地型としたのか。分譲時の竣工図等を確認すると、これらの団地型の場合は、3棟が均一でなく、特定の棟に共用部分が偏っていたり、棟ごとの戸数のばらつきが大きかったりする例が多い。分譲時期が同時期の場合、または連続して販売する場合、分譲主は特定の棟への購入者の偏りがないように分譲価格ばかりでなく、管理費、修繕積立金、共用施設等についてもできる限り同等の水準にしようとする。管理費、修繕積立金は専有持分割合によって決定するため、戸数が多い棟に比較して戸数の少ない棟が高くなる傾向がある。これを、附属施設等を共有したり、相互に利用したりすることができるようにすることで、棟毎の差を少なくすることができる。購入者にとっても、他の棟の附属施設を利用できることは利便性の面でメリットがある。こうした分譲主の意向により団地型の管理組合となったと推察する。
 住宅の使用方法等のルールや店舗の運営等を決議する場合には運用しやすいと考えれるが、復旧、建替え、義務違反者に対する措置など棟総会で決議すべき事項には対応できない。複合型規約と団地型規約を組み合わせて複層的に棟総会と部会を組織することも考えられるが、管理費や修繕積立金の徴収方法が複雑になること、全体総会の他、棟総会や部会の開催が必要になるなど、区分所有者に時間的な負荷がかかるおそれがあるため、複合型規約を選択したものと考えられる。

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⑦棟の敷地については、各棟の区分所有者が共有し、附属施設およびその敷地をABC棟の区分所有者が共有し、かつ、棟の各附属施設を他の棟の区分所有者が共有する場合(図8参照 3件)

 ⑦から⑩は、上記①から⑥を組み合わせた団地である。
 建設当時、ABC棟に必要な水道設備を全体の敷地に設置し、それらを「核」として団地関係が成立していた例がある。現在では、その水道設備は必要ではなくなり、各棟が単独で水道設備を保有している。附属施設はすでに撤去されているが、全体の敷地は共有したままである。団地関係を解消することができないこともないであろうが、その議論がされた事例はない。

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⑧A棟の敷地については、A棟の区分所有者が共有し、B棟の敷地はBC棟の区分所有者の共有、附属施設はBC棟の区分所有者の共有である場合(図9参照 2件)

 2件の事例のうち1件は、A棟がタワー型、BC棟が小規模な盤状型マンションとなっている。BC棟がA棟の開発による公開空地や各種共用施設の利用ができるような規約である。いわばBC棟がA棟の存在に依存しているとも言える。A棟の開発にはBC棟の敷地面積が必要であったものと考えられる。なお、A棟は理事会や専門委員会等の活動が活発であるが、BC棟はさほど活発な管理組合活動はない。ABC棟の団地型であるというものの、別の管理組合が2件存在しているかのように運営されている。

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⑩AB棟の敷地はAB棟の区分所有者が共有し、CD棟の敷地はCD棟の区分所有者が共有し、公道が存在するが、附属施設をABCDの区分所有者が共有している場合(図10参照 1件)

 実際の事例では、大規模な開発地であり、ひとつの街を形成しているような例である。棟の間には公道だけでなく、商業施設や公共施設が存在している。
 この例では、敷地を核としてAB棟で一団地、CD棟で一団地、その上位組織的な概念で附属施設を核としてABCD棟を一団地として、複層的な管理組合とすることも考えられるが、ABCD棟で一団地とする規約となっている。いずれも、団地総会を複数回開催しなければならないことを避けたものと考えられる。

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 各管理組合は、敷地や建物の形状がさまざまであり、単純に類型化することは難しい。長い間の慣習で棟や全体を区分せずに意思決定がされている場合や、棟の独立色が強く、団地型である意味がないような場合もある。それそれの事情により管理規約は改正されていくべきものであるが、団地型においては、特に修繕積立金が絡むことから、団地関係を見直すような規約改正は困難である。災害時にいずれかの棟に被害が生じた場合には、持分割合に応じて修繕積立金を分割請求できるとするなど、団地関係が柔軟に見直しができるような一定の方針が示されることを望む。

以上

久保 依子
執筆者久保 依子

マンション管理士、防災士。株式会社リクルートコスモス(現株式会社コスモスイニシア)での新築マンション販売、不動産仲介業を経て、大和ライフネクストへ転籍。マンション事業本部事業推進部長として主にコンプライアンス部門を統括する傍ら、一般社団法人マンション管理業協会業務法制委員会委員を務める。

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