第13回 マンションみらい価値研究所セミナー 「マンション標準管理委託契約書の改訂が示す本当の意味〜カスタマーハラスメントと認知症の課題について〜」

11月16日(木)、第13回となるセミナーが開催された。今回は「マンション標準管理委託契約書の改訂が示す本当の意味〜カスタマーハラスメントと認知症の課題について〜」と題し、マンションみらい価値研究所の所長・久保依子が登壇した。

昨今、マンションという住まいの形態がもたらす課題は社会問題としてニュースでも多く報じられるようになり、世間の関心が高まっている状態であると考えられる。そんな中、国土交通省では9月に「マンション標準管理委託契約書」の改訂を公表した。その内容は主に「①書面の電子化及びIT総会・理事会等への対応」「②担い手確保・働き方改革に関する対応」「③マンション管理業の事業環境の変化への対応」であったが、本セミナーではこの中から②に該当するカスタマーハラスメントと認知症の課題を解説した。

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そもそも「マンション標準管理委託契約書」には、弱者であると想定した消費者(管理組合)を守るためにさまざまな条文が記載されてきた。つまり、これまでは「カスタマー」としての管理組合を守ることに注視した法令や指針などが主であったと言える。しかし1999年に発生した、いわゆる「東芝クレーマー事件」に端を発し、その後の時代の変化とともに、マンション管理事業者への嫌がらせ行為、いわゆる「ハラスメント」問題が浮き彫りとなり、国をあげて問題解決に取り組む動きが出てきた。

実際に、マンションのフロント従事者にハラスメント行為を受けたことがあるかどうかを問う調査では、約6割が「あった」と回答しているという。加えて久保は「駅で駅係員や乗務員への暴力などのハラスメント行為の防止を呼びかけるポスターが貼られていた」ことを例に挙げ、カスタマーハラスメントは不動産業界だけでなく、さまざまな業界において起きているという実態に触れた。

今回の国土交通省による改訂には、マンション管理事業者がハラスメント行為を受けた際、特定の担当者とカスタマーという個人間のやりとりだけに留めるのではなく、それぞれが所属する団体全体の問題として捉え、事案を解決するようにという指示が追記されているという。つまり、マンションのフロント従事者と区分所有者・居住者との間だけで解決させるのではなく、管理会社と管理組合として対応していくことが求められているということだ。

これは、認知症高齢者に向けた対応も同じだ。症状によっては攻撃的になる場合もあるなど、その対応の仕方は難しいところではあるが、組合員等にひとり歩き等の認知症の兆候がみられ、そのことが共同生活や管理事務の適正な遂行に影響を及ぼすおそれがあると認められる場合には管理組合に通知する、また契約の範囲内であれば本人の同意なく情報を管理組合に提供できるとも示している。

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管理組合と管理会社の契約においても、時代に則した改定や解釈が必要であるといえるだろう。

次回は来年1月19日(金)16:00から「高齢者福祉と分譲マンション~共に支え合い、健やかで心豊かな社会の実現を目指して(仮)」と題し、配信を予定している。

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