第4回 マンションみらい価値研究所セミナー 「マンション管理士が語る第三者管理者方式」

オンラインセミナー第4弾が2022年12月7日に配信された。今回はマンション管理士の親泊哲(おやどまり さとる)氏を迎え、これまでの研究とご実績を伺う。 

親泊氏は、自身も区分所有者として管理組合の役員を担っていた経験を通じて、管理組合運営の面白さと、専門知識を持たない一般の住民がそれを行うことの難しさを実感し、マンション管理士の資格を取得した異色の経歴の持ち主だ。マンションで起こっているさまざまな問題を“自分事”として捉える姿勢は多くの共感を得ている。現在は第三者管理者としても尽力しており、セミナーではその活動内容と、そこで感じたことを中心に話が展開された。

そもそも第三者管理とはなにか──。これまでのセミナーでも折りに触れ解説してきた話題だが、冒頭で司会の丸山肇が、マンション管理のトレンドが第三者管理へ移行しつつある背景を紹介。「住民の高齢化」や「賃貸化による理事のなり手不足」等の問題を抱えるマンションが導入に至っていると解説した。

「マンションみらい価値研究所」所長 久保依子の「マンション管理士として行うコンサルタントと管理者とで意識の違いはあるのか?」という質問に対し親泊氏は、「日常から心掛けていることで、ある意味当然のことであるが」と前置きした上で、「コンサルタントとは、管理組合の一員ではなく第三者の立場から助言指導することになる。これに対し第三者管理とは“第三者”であっても管理者であり管理組合の一員であるということで、自分で実行することだ。つまり、他人の立場なのか当事者の立場なのかという意識の違いがある」と説明した。

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その上で、現在の主流である理事会方式の課題について問うと、親泊氏は「マンションによって共通理解を形成することがかなり難しいこと」が第一であると答えた。さらに「管理組合の任務は、専門知識がない一般の住民によって行われなければならない、つまり職業的に行うものではないという共通項があると考える。よって多くのマンションでは、管理会社との信頼関係を拠り所として、誰が理事になっても職務が全うされるような運営が求められているということになる。しかし年度によって方針が違うなど、バランスの確保がネックになる。よって、積極的な人にやってもらいたいという偏った選任に陥りやすい」とした。

さまざまな問題・課題が明るみになってきた理事会方式の運営だが、それに変わって導入がはじまっている第三者管理者方式のメリットについては、大きく5点が挙げられるという。
その内容は下記の通りである。
①    管理組合運営上の責任関係が明確になる
②    マンション管理を熟知した者が運営を担うことで、マンション管理の質の向上が期待できる
③    管理組合運営をする上での区分所有者の心身の負担が大幅に軽減される
④    区分所有者がマンションの管理・運営に対する意見を言いやすくなる
⑤    管理組合運営の継続性が高まる

一方で、デメリットもあるという。それが以下の5点だ。
①    相応の委託費(業務報酬)や必要経費の負担が生じる
②    管理組合運営に対する区分所有者の関心が低下するおそれがある
③    監査機能が働かないことによる弊害への懸念がある
④    管理者本位(非区分所有者本位)にマンションが管理される懸念がある
⑤    一度管理者方式に移行すると、役員・理事会制度に戻すことが困難である

そこで久保が②に対し「関心を持続させるための取り組みは?」と問うと、親泊氏は「イベントなどでつなぎとめておくのも馴染まないと思うし、頻繁に印刷物が届いても読みきれないのもよくわかる。だとするとまずは説明を尽くしていくことなのではないか」とした。また③の監査の方法に対しては「総会監督型という言葉の通り、監事役がいないのであれば監査は年一回の総会しかなく、そこで監督することになるので、監事は居たほうがいい」と回答。さらに⑤に関しては、「(職務からはなれた)開放感をもった状態で理事会運営方式に戻そうとした時に、再スタートの気運が上がるのかということが問題。規定された人数が集まるのかと言う点において困難とした」と述べた。

これらを踏まえた「第三者管理者方式」の課題として、以下の5点が挙げられた。
①    管理者の業務執行のチェック体制の構築(監査機能の確保)
②    金銭管理を行う者や印鑑を保管する者の制限(事故防止策の確保)
③    管理者に対する総会の議決権行使の委任の制限(形骸化防止策の確保)
④    管理者が辞任または退任する場合等のルールの明確化(継続性の確保)
⑤    管理者の利益相反関係の排除(取引の健全性の確保)

法改正により日本では導入されたばかりのこの新方式だが、社会問題となっている2つの老い(高齢化と高経年)や分譲マンションの賃貸化など、さまざまに変化するライフスタイルに対応していくための重要な鍵となることは間違いない。必要に応じて第三者管理者方式の導入も検討しながら、継続性のある安定的な運営を模索していく必要があるだろう。

次回は2月8日(水)16時より、「マンションにおける孤立死について(仮)」と題し、第5回マンションみらい価値研究所セミナーを予定している。

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