第2回 マンションみらい価値研究所セミナー 「管理計画認定制度が施行された!管理組合が絶対押さえておくべき重要ポイントとは」を開催

8月末、管理計画認定制度をテーマにトークセッションが開催された。
この日のゲストは、東京弁護士会の中でもマンション部会に所属している土屋賢司氏。この「マンション部会」とは、マンション管理士の資格を有する約40名のメンバーで構成されており、先の土屋氏も16年の弁護士生活の約半分はマンション管理士として活動。自身の業務も、マンション管理相談窓口の開設など約9割がマンションに関わる案件だという経歴の持ち主だ。

さて、本日のテーマとなっている「管理認定計画制度」の施行。その内容と、どのような期待がもたらされるのかと言った点でトークセッションが繰り広げられた。

まず、この制度に対してどのように思うか、という質問に対して口火を切ったのは土屋氏。「一言でいえば、マンション管理を公的に評価する、画期的なものだと思う」とまずは賛成の意思を示した。続けて「マンションは管理が大事というが、この制度をきっかけに、特に理事ではない“無関心層”といわれる人たちの意識付けのきっかけになればと期待する」と述べた。

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そもそも、この制度施行の背景には何があったのか。そのおさらいを解説したのが、研究所所長・久保依子だが、開口一番「マンション管理適正化法が改正され、マンション管理計画認定制度が制定される、というニュースは最初しっくりくるものではなかった」と切り出す。その理由として「マンション管理適正化法は、マンション管理業者をしばる法律だという印象が強かった。重要事項説明や管理事務の報告、財産の分別管理など、マンション管理業者が守るべき条文が多い上、過去の改正はそれらをより厳しくするものであった」という。だが、「今回の適正化法の改正は、管理組合向けの制度の創設となっていた。国が管理組合の為にマンション管理適正化指針を定めている条文があり、今回の適正化法の改正は、管理業者をしばるものではなく、管理組合に向けた改正という点で過去の改正履歴とはずいぶんと違うものになっているように思う」と、久保も賛成も意志を表明した。久保がポイントとして挙げた2点を追記すると、「一つ目は管理不全または管理不全一歩手前のマンションには、指導、勧告、助言ができること。二つ目は、16項目の基準をクリアすれば国からマルがもらえること」だ。

土屋氏によると「認定する主体、つまり行政の立ち位置ががらりと変わった」ことが特徴だと語る。というのも、マンションという私的財産に行政が口を挟むのはお門違いだ、というスタンスを貫いてはいられなくなったのだという。それは「建物が老朽化して、外壁が通行人に危険を及ぼしたり、建物倒壊の危険などもある中で、行政が区分所有者に代わり建物を除却する必要が出てくることが想定できるから」。私的財産の範疇を超え、地域に被害をもたらす問題へと発展しかねないからだ。

今回の認定基準が修繕計画や修繕積立金など「修繕」に重きを置いているのはそのため。よって今回の改正でも、地方自治体ごとに適正化推進計画を策定することになっている。

「都道府県および市・区などの地方公共団体がマンション管理適正化推進計画を策定しなければ認定制度を行うことができない。しかし、推進計画の策定時期は全国一斉ではなく、マンション化率が低い地域などでは、策定しない地方公共団体もある。いずれにせよ推進計画策定後からのスタートということになる」と付け加えたのは、当研究所メンバーでもあり、本日のファシリテーターでもある丸山肇。

その裏付けとなるデータとして、国土交通省が各地方公共団体に行ったアンケート調査によると、政令指定都市では令和4年度中にすべての計画が策定される見込みで、全国の都道府県では28%が不明であり、東京都区部でいえば、本年度中が61%、令和5年度までが87%と、約9割が策定見込みだという。

適正化推進計画が策定されたら、いざ認定制度の申請へと進められるようになるが、申請には総会決議が必要となる。総会での決議までに取り組むロードマップは以下の通り。

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まずは理事会で、管理組合にとっての目的や意義、メリットなどを整理する。現状が認定取得可能な管理状態なのか、補完的に整備する項目があるのかを確認し、補完整備が必要なら、区分所有者や管理組合の負担などを精査する必要がある。

また土屋氏は、「マンション管理の適正化の推進を図る基本的な方針(R3年9月)の中に、管理組合に向けて発した『マンション管理適正化指針』がある。認定基準の大元のような指針内容であり、網羅性も高く大変優れている。ぜひ、みなさんも一読いただきたい」と意気込む。

今回の制定は、目標を達成させるべく、管理組合員全員が管理意識を高く持つことが狙い。達成できれば認定がおり、認定されているマンションとして市場で高く評価されるというモチベーションにつながっていく。その認定期間は5年であることから、5年毎にその最低限度の状態を確認していくことになる。


さらに認定のメリットについて土屋氏は「大きく分けて2つある。一つ目は、フラット35の利率やすまいる債の利率が優遇されること。しかし重要なのは二つ目。認定を目指して理事や住民の意識が変わり、その結果、認定を受けられるような管理が実現すること。つまり認定制度を通じて管理そのものが改善されていくこと」と解説した。

加えて久保は「永住志向の方には関係ないと思うかもしれないが、それは違う。建物は高経年化が進み、同時に社会は少子高齢化。さらに住宅余りの時代となっている。管理不全に陥ったマンションを相続した子孫は、売れない、貸せないという負の遺産に苦しむことになる。これからのマンションは、市場から居住価値を認められるかどうかが大きなポイントとなる」とした。

終の棲家とするも、投資用とするも、“活きたマンション”でなければ意味がない。そのためには、日頃の手入れ、計画的なテコ入れという「管理の質」がすべてを物語る。そうした意味でも、今回の管理計画認定制度の施行は、専門家・マンション管理業者はもちろん、分譲マンションに住む人・住もうとしている人、すべてに一石を投じ、大きく舵を切る可能性を秘めているといえる。

さまざまな観点からの議論がなされたところで、丸山が管理計画認定制度に関する押さえておくべき全体像をマインドマップ化。カテゴリー分けされた課題について、より専門的な見解を促した。

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管理計画認定制度は、今後の動きに大きな期待と注目が集まっていることは間違いない。


次回の放送は10月5日(水)16時より、「高経年マンション~答えが無いのが答え」と題し、第3回マンションみらい価値研究所セミナーを予定している。

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