主催:NPO北海道マンションネット
9月26日(土)、札幌資料館(中央区大通西13丁目)にて「令和2年度 第2回マンションネットセミナー『節約の美徳が管理組合の“貧困”を招く』」が開催されました。
本セミナーは、コロナ禍の緊急事態に鑑み、定員数は三密を避けた20名を最大とし、それ以外の方には“ネットセミナー”としてオンラインによる情報を提供する形式で実施しました。これまでに経験したことのないセミナー形式であり、問題なく開催できるのか、またどのような反響があるのかなど関係者にとっては実験的なセミナーとなりました。
会に先駆け「NPO北海道マンションネット」の理事長代行・佐藤慎二氏が開催の挨拶をし、コロナ禍のご時世を憂うと共に、今だからこそ新しいチャレンジをしていきたいという意気込みを露わにしました。
その後の基調講演では、マンション元気ラボの主筆であるマンション管理士の丸山肇氏が登壇。「節約の美徳が管理組合の“貧困”を招く」というテーマに於いて講演しました。「節約」と「倹約」という、一見すると似たような意味を持つ言葉の“行き違い”をテーマの軸に据え置き、行き過ぎた「節約」の間違いについて事例を交えて解説しました。
念のためおさらいしておきますが、「節約」と「倹約」という言葉の違い──あなたは明確な説明ができますか?まず「倹約」から見ていきましょう。この意味は「費用を切り詰めて、お金の無駄を省くこと」──しかし転じて「貯め込んだお金はここぞというときに投資する」と解釈することができます。一方「節約」を見ていくと「無駄を省いて切り詰める」ということではありますが、「お金だけでなく、なんでもかんでも切り詰めること」とも捉えることができます。
今回はこの「行きすぎた節約」が招く貧困について紐解きます。
管理における「節約とは何か」を考えるにあたり、まずはセンセーショナルな言葉で喚起します。大ヒットとなった著書『金持ち父さん 貧乏父さん』(ロバート・キヨサキ著)の一節を引用し「マンションはあなたにとっての負債なのか」と呼びかけます。この本によれば、たとえ住宅ローンを支払い終わっていたとしても、持ち家とは負債であり、固定資産税然り、管理費や維持費など必ずお金は出ていく。しかし「お金と人生に対しての姿勢」が正しければ、“節約の仕方”を間違わないと解説しました。
さらに丸山氏は、「マンションを所有していることは、すでに“負債”を抱えていることであり、その節約の仕方が今後、負債を大きくするかどうかの鍵を握っている」と語りかけます。
では間違った節約の仕方とはなんのなのでしょう。それについて丸山氏は「悪い節約例」として下記の通り3つの事例を挙げました。
① 「積立金を値上げしてでも工事ができる費用の準備をすべきなのに、問題の先送りをしたことにより、費用 が かえって 増加してしまった」という 事例
②「総会で質問や文句が出ることを恐れ、長期修繕計画の時期を変更したり、工事単価を調整したり、資金が足りていることを演出してしまった」という事例
③「管理費会計が赤字になったことで、安い管理会社にリプレイスし、ついでに各戸が支払う管理費も減額してしまった。しかし管理品質の悪化はもとより、それに気づき元に戻そうと思っても管理費を増額できなくなってしまった」という事例
いずれの事例も、最終的には建物の価値を下げる結果となり、次世代が住み継承してくれない空き家だらけのマンションに陥ってしまうということ。行きすぎた節約が貧困の連鎖を生んでいることに気づいてほしいと、丸山氏は訴えかけました。
また、休憩を挟んだ後半では、「“with”コロナとマンションコミュニティ」をテーマにパネルディスカッションを開催。Zoom(WEB会議システム)によるリモート受講者の皆さまからは「チャット」機能を利用し、質問を受け付けました。
コーディネーターには前出・丸山肇氏、パネラーには前出・佐藤慎二氏(NPO北海道マンションネット)、沢登正一氏(大和ライフネクスト 札幌支店長)らが登壇。新型コロナ時代におけるマンション内でのコミュニティをどうすべきか話し合っていきます。
そんな中、丸山氏は「本日のように、セミナーや講演をオンラインでやってみようという発想自体なかったこと。こういう時代になったからこそ新しいアイデアが生まれたのであり、今後もプラスになることもあると思う」という持論を展開しました。
ディスカッションの途中、リモート参加者の方々からの質問も紹介。
「総会の延期は理事会で決定できるのでしょうか、またその根拠はありますか?」
「インターネットを利用した会議システムで、総会を開催することができますか?」
というお二方の質問に対し丸山氏は「管理規約や区分所有法に鑑みると非常にもってこいの質問」としながら、一つ目の質問に対し佐藤氏が回答。「理事会で決議することは可能。理事会は管理組合の執行機関であるし、ましてや今回のようなコロナ禍においては緊急事態の対応になるので決定権があるだろうと考える」としました。
また二つ目の質問には沢登氏が、「できなくはないが、現実的には難しい。なぜなら区分所有法45条に『区分所有者の全員の承認を得た場合には、書面または電子的方法による総会を行うことができる』とある。裏を返せば全員の合意がなければリアルな集会以外の開催ができない為、この法律がある以上、現時点ではなかなか難しいと思う」と回答しました。
このようにラジオ番組さながら、ディスカッションの途中でも、都度寄せられた質問を紹介することで、タイムリーな話題を掘り下げることができた今回のオンライン同時並行によるセミナー。パネラーと視聴者の双方向でのやりとりができるというメリットが生まれたことはもちろん、札幌での開催にも関わらず、東京など距離の離れた場所にいる方とも同時に受講できるという点で、より多くの方に情報と熱量を同時に届けられるという機会に恵まれたようです。