タワーマンション大量供給時代! 真価はこれから問われる!!

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タワーマンション大量供給時代! 真価はこれから問われる!!

約700棟20万戸。2016年までに首都圏で分譲されたタワーマンションの数だ。
とはいえ、首都圏マンションの総ストック365万戸で見れば、わずか5.5%に過ぎない。しかし、今後、「新規供給マンションの30%以上がタワーマンションになる」ともいわれている。まさに、タワーマンションの大量供給時代がやってくる。
好立地・高付加価値のマンション供給が主流の時代にとって、この流れは当然なことかもしれないが、もちろん、この中でもより価値あるマンションは何かという選別はすでに始まっている。

タワーマンションは魅力が満載だが……

駅直結、駅近のタワーマンション。そうでなくても、都心までタクシーで千円足らずの距離なら、住んでみたいと思うのは当然だろう。
その上、高付加価値で高級ホテルさながらの風格を醸し出すマンションも少なくない。オートロックが開いたその先には、外界の喧噪と一線を画す吹き抜けの広いエントランスホール。その奥には「鎮座」という表現がぴったりなグランドピアノが自動演奏で入居者と来客をおもてなしする。カウンター越しに柔らかいライトを浴び、上品な雰囲気のコンシェルジュが微笑みながら出迎える。豪華な高速エレベータに乗り最上階のラウンジに降り立つと、そこには都心を見下ろすパノラマの夜景が目の前に広がる。
防災センターでは、24時間365日、警備員(防災センター要員)が常駐し、暮らしの安全を見守る。
バーカウンターや広いパーティールーム、ジャグジー付きのゲストルームやシアタールーム、スポーツジムやプール・サウナ。なんと贅沢で優雅なのだろう。そんな多彩なサービスや施設こそ、大きな魅力となる。

どう読む? 2021年に3.6万戸という「大量供給」

タワーマンションの印象を問うと「下落局面でも小幅で留まり、換金価値の高い優れた投資物件」と答える人も少なくないだろう。
相続対策や海外からのインバウンド投資もあり、すべてのタワーマンションとはいわないまでも、中古価格が上昇基調を続けているものもある。
地方都市のタワーマンションでは、首都圏や関西圏からの購入者が、年に数回、自分で利用する都市型リゾートとして購入しているケースもある。札幌や沖縄などがその対象地だ。
リゾートマンションといえば、バブル期にブームになったものの管理主体であるべき管理組合が機能せず、管理費の未収金が累積。最低限の修繕もままならず、売りの一つであったはずの温泉大浴場の利用停止をせざるを得ないといったケースもあった。
これらと比べれば一等地に建つタワーマンションは、下落リスクの少ない価値ある資産として高額所得者の心を揺さぶるのかもしれない。
首都圏でのタワーマンションの供給は、2007年の約2万戸をピークに一時下降したものの、現在供給計画は急増中。2021年には3.6万戸という大量供給が予定されている(不動産経済研究所)。
これは、首都圏だけでなく日本全体の傾向でもある。
新築マンションの価格が上がり続ければ問題はないだろうが、東京オリンピック開催直後の大量供給が価格低下を招くかもしれないという不安もあり、オリンピックまでに利益確定の売りが急増するのではないかという憶測もささやかれはじめた。

投機的な価値から、住まうための真価への発想転換

いささか古典的だが、新築マンションの購入の判断は、3つの「P」がポイントになる。
3つのPとは、立地(Place)・商品企画(Plan)・価格(Price)のことであり、そのバランスが大事だ。
商品企画(Plan)とは、間取りだけでなく共用施設や管理サービスなども含まれる。価格(Price)も販売価格だけを見るのではない。共用施設の利用料や管理費・修繕積立金も含まれる。ここで注意すべき点は、見込まれる駐車場収入を全額管理費に回す計算になっていないか、修繕積立金を安めに設定されていないかなどだ。駐車場を利用する人が少なく、空き駐車場が増えてしまうと、管理費会計がショートする。これは最近の車離れも手伝って、交通の便が良いマンションに出てきやすい現象だ。また極端な段階増額方式で長期修繕計画が組まれているなど、購入者にとって寝耳に水という話もよくある話なのだ。

さて、引き渡し後は3Pと代わって、「管理」がものをいうことになる。これは、どんなマンションに対してでもいえることだが、もうすでに変えようがない立地や商品企画に対して、唯一、価値を高められるのは「管理」の良し悪しになる。特にタワーマンションは、修繕費、メンテナンス費が、高くなりがち。それがマンションの価値を維持するコストなら致し方ない。しかし、やはり自分たちの財産であるマンションの管理を勉強し、無駄や無理がないかをチェックし、すべてお任せではなく、見直しや管理仕様の再設計を主体的に行うべきだろう。管理組合が管理マネージメントの主体になるということだ。
ブームや供給バランスで価格が上がり下がりする、いわば投機的な価値ではなく、安心・安全・快適だからこそ永く住み続けたいと思える「価値」。
日本は「管理の良し悪しがダイレクトに流通価格に反映しにくい国」とよくいわれるが、住んでいる人の満足という真価にスポットを当てる発想がそろそろ必要になりそうだ。

丸山 肇
執筆者丸山 肇

マンション管理士。株式会社リクルートにて住宅情報北海道版編集長、金融機関への転籍を経て、大和ライフネクスト入社。管理企画部長・東京支社長などを歴任。マンションみらい価値研究所にてコラムニストとして活動。

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