マンションとIT化促進の取り組み~大阪市マンション管理支援機構主催 「マンション管理フェスタ」参加レポート

2023年9月10日(日)、大阪市マンション管理支援機構主催の「マンション管理フェスタ2023」に参加してきた。マンションが多く立ち並ぶ全国の他の自治体でもマンション管理をテーマにしたイベントが企画されているが、中でもこの大阪市の取り組みは、他の自治体とは異なる特徴を持っている。マンション管理フェスタは2年に1度開催されている。
 
◆マンション管理における情報の非対称性
非対称性とは、中心線を境にして左右にあるものが対象ではないことを指す。「情報の非対称性」とは、これを情報を持つ量に置き換えて、一方が多くの情報を持ち、反対側がほとんど情報を持たない不利な状況に置かれていることを指す。
マンション管理は、管理会社や専門家が多くの情報を持ち、区分所有者や居住者がほとんど情報を持たない、非対称性にあると言われている。このことが、管理組合が自主的な判断をせずに、管理を他人任せにするような状況に陥る原因になっているとも言われている。ただし、情報が伝わらないようにコントロールされているわけではない。区分所有者や居住者が興味を持たず、目の前にある情報を取りにいかないという状況もある。
管理組合が意思を持って活動するには、まず、多くの情報に触れることが不可欠だ。
 
◆情報の入り口
もしあなたが区分所有者だとして、毎月開催される理事会で、管理会社から毎回何かを提案されたとしよう。「またお金のかかる話か」とため息をつきたくなるだろう。お金の話が続くと、何を言われても疑心暗鬼になるのも頷ける。
では、管理会社ではなく、別の事業者に提案を依頼したとしよう。管理会社とは何年も付き合いがあるが、一度連絡をとっただけの事業者をすぐに信用していいのだろうか。ここでも疑心暗鬼は広がるだろう。
これらを解消するにはどうしたらいいだろうか。重要なのは、自らが判断の参考となる情報をたくさん持つことだ。その情報はネットに溢れる真偽のわからない情報ではなく、信頼できる人や組織から発信されている情報であることもまた必要だ。
 
◆大阪市マンション管理支援機構                    
この団体の組織を構成している団体には、大阪市、大阪弁護士会、大阪司法書士会、マンション管理業協会関西支部、大阪ガスマーケティングなどそうそうたる企業や団体が並ぶ。これほどの団体で組織された管理組合支援団体は他の地方自治体にはない。
大阪市マンション管理支援機構では定例のセミナーや情報交換会なども開催されている。
ここから情報を得られる大阪市の管理組合はうらやましい限りだ。インターネットで検索し、正しい情報はどれなのか悩まなくても、ここに行けばいいのだ。
情報の非対称性を解消するために管理組合がまず行動を起こすとすれば、信頼できる団体から情報を得ることだろう。何をしたらいいのか分からない理事長は、まず、信頼できる情報収集からはじめよう。
 
◆管理組合とIT弱者
管理組合は、IT弱者を保護しなければならないという理由で、長いことITの活用に遅れをとっている。
あらゆる産業で人手不足が叫ばれており、もはや人手不足の解消には、IT技術の活用と外国人材の活用くらいしか方法がなく、そのどちらか2つの方法が検討されている。しかし、マンション管理はどうだろうか。
外国人材を活用しようとすれば、外国人技能実習生の受け入れが主な方法である。しかし、この手法はビル管理には門戸が開かれているものの、マンション管理には長いこと開かれてこなかった。
また、管理組合に管理会社側から「人手不足の折、外国人の活用も検討しなければなりません。」と提案すると総論は賛成していただける。そこから一歩踏み込んで「では、こちらのマンションで外国人を派遣させていだけませんか。」と提案すると「それはちょっと、他のマンションに言ってくれ。」という反応がほとんどであるそうだ。総論賛成、各論反対の典型といえよう。言葉が通じにくく、文化が異なる外国人が、マンションの敷地内、オートロックの内側というプライベート空間に入ることに、依然として大きな抵抗があるのだろうと感じる。
それでは、外国人材より先に、IT化を検討しようとすると、そこにはまた別の高いハードルが立ち塞がる。マンションには多くの高齢者が住んでおり、築年数が高いマンションほどその割合は高くなる傾向がある。現役世代にパソコンが普及していなかった世代の高齢者はIT機器の操作が苦手な方が多い。そうした高齢者への配慮から、IT化は遅々として進んでいない。マンション管理に関係する国の資料でも、あらゆるところに「IT弱者への配慮が必要である」という注釈が並ぶ。
そうすると、IT「強者」である現役世代は「配慮がない」といわれることを恐れて、管理組合のIT化の促進には着手せず、さらにはアナログな仕様の管理組合の活動そのものが手間のかかる時代遅れなものに感じてますます参加をしなくなる。
 
◆マンション管理フェスタでのIT化の体験会
今回のフェスタでは、有識者からの情報提供のほか、民間企業からの最新の管理組合向け商品の紹介がされていた。ITへの抵抗感を下げる取り組みであると言えるだろう。
子供や孫と同居している高齢者は、スマホやパソコンの使用方法を家族に尋ねることもできるだろう。しかし、同世代の夫婦二人暮らし、ひとり暮らし世帯の場合は、周囲に操作方法を聞く人もいない。必然的に管理組合のIT化には反対の立場になりがちだ。
しかし、こうした会場で、最先端のサービスに触れることができるのはよい機会になると思う。フェスタは管理組合役員に参加を限定していない。誰でも参加することができる。近くに買いものにいったついでにふらっと寄ってもらえればいい。大阪市のマンション居住人口を考えれば、先の長い取り組みかもしれないが、こうした活動のひとつひとつが、これからのマンション管理を変えていくのではないかと思う。
 
 
◆関連リンク
 
>大阪市マンション管理支援機構
http://www.osakacity-mansion.jp/
 
>IT化の取組紹介 「リモ・アーボ」ラージヒル
https://largehill.co.jp/

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