第14回 マンションみらい価値研究所セミナー 「高齢者福祉と分譲マンション~共に支え合い、健やかで心豊かな社会の実現を目指して~」

1月19日(金)、第14回となるオンラインセミナーが開催された。今回は医療経済研究機構 政策推進部副部長、放送大学客員教授の服部真治先生をお招きし、「高齢者福祉と分譲マンション~共に支え合い、健やかで心豊かな社会の実現を目指して~」と題してお届けした。

本研究所でも再三にわたり議論しているテーマのひとつである「高齢者と暮らし」。今回ご登壇いただいたのは、自治体職員として福祉や介護サービスを担当後、厚生労働省で政策立案に携わられた実績を有し、現在も「医療経済研究機構」において地域包括ケアシステムについて取り組んでいる服部真治先生だ。

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まず予備知識として、高齢者福祉の3原則と言われる「生活継続の原則」「自己決定の原則」「残存能力活用の原則」を解説。これらをふまえて現状の課題を見ていく中で、セミナーの最後には「分譲マンションの落とし穴」をどう解決していくべきなのかという課題提起へとつながっていく。

そもそも、介護が必要な理由としてどんなことが挙げられるのか──それは「認知症」「フレイル(衰弱)」「骨折・転倒」が主なものだという。これらを回避するためには、日頃の生活が大切である。具体的には、社会との交流や活動を積極的に行うかどうかで、老化の進行度合いが違うようだ。

例えば、こんなシナリオもあるだろう。もともとあまり社交的でない高齢者が、運動不足により骨粗しょう症を発症。あるとき転倒して骨折してしまい、外出が困難または寝たきりの状態となって、フレイルに陥る。人との交流が無い中で認知症も発症し、要介護者となってしまう。
特に女性の場合は骨密度が男性より低いこともあり、骨粗しょう症の症状が進みやすいことは注意が必要だ。

服部先生の講演の中で印象的だったのは、就労でもボランティアでも、社会活動を積極的に行っている人は認知症になりにくいというデータがあるということ。身体だけではなく頭も若々しくいるためには、やはり社会とのつながりやコミュニティが必要不可欠であるといえそうだ。

また、愛知県豊明市のとあるスーパーでは、高齢者を対象に買い物を無償で配達してくれるシステムがあることを紹介。重たい荷物を持ち運ぶ労力がなくなることで大いに喜ばれるとともに、スーパーとしても「午前中の買い物に限る」としたことで、忙しくなる夕方の時間との分散を図ることができたというWin-Winの事例だ。この旗振りは自治体が行っているようだが、後半での研究所メンバー・田中昌樹を交えたセッションで、田中は「なぜこのような成功事例が全国的に発展していかないのか」と質問。これに対し服部先生は「この自治体はたまたまこうした間口を設けていたが、他の自治体ではなかなか企業との相互関係ができていない」と説明した。

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こうした互助システムは、生活拠点の集合体である分譲マンションにおいても優位に働くはずだと服部先生は持論を展開したが、田中は「分譲マンションは地域の目が届きにくく、自治体のサポートが行き届かない現状がある」と厳しい実態を明らかにした。

いずれにしても、分譲マンションにおける高齢者福祉を考えるにあたり、互助システムをはじめ、自治体との連携を含むサポート体制の構築に真剣に取り組まなければいけない時代へと突入したことは間違いない。高齢化が進む日本においては喫緊の課題であり、管理組合、管理会社としても何らかの策を講じていかなくてはならないだろう。

次回の配信は来年2月29日(木)16:00から「驚愕!!こんなに違うの?〜韓国のマンション管理事情〜」と題し、配信を予定している。

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