第12回 マンションみらい価値研究所セミナー 「これからのマンションの課題を考える〜熱海が教えてくれる未来のマンション管理〜」

10月12日(木)、第12回となるセミナーが開催された。今回は株式会社マチモリ不動産、代表取締役の三好明氏をお迎えし「これからのマンションの課題を考える〜熱海が教えてくれる未来のマンション管理〜」と題してお届けする。

今回登壇いただく三好氏は、大和ライフネクストの元社員。在勤中に熱海の経済復興や空き家問題にボランティアとして携わったことをきっかけに、熱海が抱える問題をマンション管理者の視点で解決するべく取り組んできた。

「マンションみらい価値研究所」のサイト内では、『「1円でもNo」を経た熱海のマンションV字回復。 元マンション管理会社社員の活動に“マンションにおける問題解決へのヒント” を見る』(2023.9.14)のコラムに登場している。

その三好氏が登場する前に、同ウェブサイトで公開中のレポート「管理組合の相続人調査および相続財産管理人選任申立てについて(2022.3.20)」を執筆した研究員の大野が、レポートの内容に新たな説明を加えるかたちでカメラの前に立った。

大野は「当研究所ホームページで2022年3月時点に公開したものがあるが、2023年4月1日施行の民法改正により従来の『相続財産管理人』は『相続財産清算人』に名称が変更された。本日は『相続財産清算人』という名称で話を進める」という断りを入れて話をスタートした。

今回大野が解説するのは、区分所有者が亡くなった後、その住戸の相続が行われないことで困惑する管理組合の実例。

基本として、区分所有法には「特定承継人の責任」という条項があり、管理費等を支払えない、または支払わない区分所有者がいたとしても、所有権が移転した場合には、新しい区分所有者に滞納管理費等を請求できると定められている。これにより、競売の申立てによる落札、売買や贈与など、所有権が移転した場合には、管理組合の費用と労力をかけることなく、滞納されている管理費等を回収することができる。

しかし実際には、区分所有者が亡くなったあとにマンション住戸の相続が行われないケースなど、所有権の移転を待っているだけでは滞納された管理費等の回収ができず、管理組合が相続財産清算人の申し立てを行った事例が2018~2021年の期間に9つ(大和ライフネクスト㈱管理の4,000組合に対して実施した調査)あるという。

相続財産清算人選任の申し立てを行った管理組合の理由は大きく3つ。それは、①回収目途の立たない管理費・修繕積立金の滞納が膨れ上がり、いずれ管理費等の請求権の時効を迎えること、②消防用設備点検や雑排水管清掃などの、共用部分と一体として管理する設備機器のメンテナンスおよび取替ができないこと、③今後、区分所有者不在の住戸が増えてくと、総会の決議が困難になる可能性もあること、だという。 

今回調査した事例では、1年より短く解決したものはなく、最長で解決までに3年7ヶ月ほどかかっている。そのため、管理組合の役員が輪番制の場合には、役員間において方針や情報の引き継ぎが重要だという研究調査結果であるとした。

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後半では先述の三好氏が登壇し、熱海の現状と改善、そしてマンション管理の未来を解説していく。

熱海といえば昭和初期の新婚旅行のメッカでもあったように、早い段階から観光地化やリゾート開発化が進められた歴史を持つ。そのため、築40年以上の分譲マンションが多く所在し、日本全体に先駆けて管理問題、空き家問題が発生した地でもある。

当時、大和ライフネクストに在勤中だった三好氏は、熱海の“時代に遅れた”原状を目の当たりにし、居ても立ってもいられずボランティアとして毎週通ったという経緯を話した。その後退社を決め、自身も熱海に移住し現在に至っている。

シャッター商店街や稼働率の低い宿泊施設、また全国ワースト2位の空き家率など、もはや瀕死状態の熱海を再生することができれば、これから全国でも起きてくるであろう同様の問題にも対応できるのではないかと考えたという。

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その体験と成功事例などを元に、所長の久保が5つの質問を投げかけている。1つ目は「お金がないマンション」はどのようにすべきなのか。2つ目は、前段で大野が発表した内容につながる「所有者不在のマンション」という課題はどうクリアしていくべきか。3つ目は「管理組合運営が停滞した場合」という難問。4つ目は「資産価値の向上による新規入居者の獲得」、5つ目は「経年劣化と賃貸化率」だ。

この中で三好氏が意見した内容が印象に残る。「全国のまちづくりでよくある失敗は、東京のシンクタンクなどコンサルに頼めば解決すると考え、自分たちは何もせずにいること。結局やるのは自分たちしかいない。まずは当事者としての意志があって、さらに周囲を巻き込むことが大事」。

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さらに4つ目の課題である「資産価値の向上による新規入居者の獲得」については「見た目などはもちろん、それ以外にもペットの飼育を可能にすることや、民泊を可にするなど、マンションのルールの見直しを検討することが重要。その際は、まずはお金をかけずに取り組めるものを見定めて、急に大きく変えようとせず、徐々に規制緩和していくことがポイントになる。従来のように「住まいに人の生活をあわせる」のではなく「人の生活に住まいをあわせる」という考え方でマンションの自由度を高め、資産価値向上に成功している事例が熱海にはいくつもある。自分たちのマンションをどうしていくか、自分事として捉えて十分な議論をしてほしい」と語っている。

次回セミナーは11月16日(木)16:00からマンション標準管理委託契約書の改定が示す本当の意味〜カスタマーハラスメントと認知症について〜と題し配信を予定している。

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