第8回 マンションみらい価値研究所セミナー「マンションでの救急救命のポイントとは?大切な人の命をつなぐ心肺蘇生」

6月15日(木)、第8回となるセミナーが開催された。今回は一般社団法人ファストエイドの代表理事、玄正 慎(げんしょう まこと)氏をお招きし「マンションでの救急救命のポイントとは?大切な人の命をつなぐ心肺蘇生」と題してお届けした。

ついさっきまで元気に活動していた大切な家族が、突然心臓発作を起こして倒れ、目の前で心停止に陥ってしまったら──助けなければならないのは“あなた”なのだ。

心停止は、救急隊の到着や医療機関への搬送を待つそのわずかな時間すらも無駄にできない、まさしく一刻の猶予も許さない応急手当を必要とする。裏を返せば、その時間に正しい心肺蘇生法を行えば、救える命が多いということでもある。

しかしながら、現在の日本では一般人の心肺蘇生に関するスキルが低いといえる。“その時”、知識や経験がないためにパニックになってしまっては、大切な家族の命が危ない。ゲスト講師の玄正氏によると、突然の心停止の約7割は自宅で発生しているというデータがあるという。そうした背景もあり、心肺蘇生に関する知識と技術をより手軽に学べるための活動を行っているのだと語る。

image

同セミナーで司会を務めた「マンションみらい価値研究所」の研究員である大野稚佳子が執筆し、2022.9.8に公開したレポート「管理組合におけるAED(自動体外式除細動器)の設置をめぐる議論(2022.9.8)」によると、当社管理の分譲マンションにおけるAED導入率はわずか21%。AED導入に関しては多くの管理組合で意見が割れており、「命はお金に換えられない」というのが賛成派の代表的な意見。一方反対派の意見としては「心肺停止が発生する確率」と「費用負担」を天秤にかけた際の費用対効果を指摘していることが、研究所の調査でわかったという。

そして、救命活動が大切なことはわかっていても、生身の人間の胸骨圧迫をし、AEDを使ってそこに電流を流すといった行為には誰しもが恐怖を感じる。それを万が一の時に滞りなくできるようにするためには当然ながら訓練が必要だが、その訓練自体もなかなかきっかけがなく行動に出られない、という人が多いだろう。

玄正氏はそうした認知バイアスを変えるための活動の一環として、消防署などの決められた施設に出向かずとも、自宅で手軽に心肺蘇生の訓練ができるようなキットを独自に開発・販売している。

さらにいえば、胸骨圧迫の訓練をもっと手軽にできる方法として、空にした状態のペットボトルを使うのが良いという。このとき、硬すぎると手のひらを胸骨まで沈めて圧迫するという感覚が得られず、柔らかすぎても練習にならないので、程よい硬さのペットボトルを使うのがポイントだそう。こうした見解は非常に興味深く、また身近なものでできるというのはありがたいアドバイスだ。

image

このような心肺蘇生に関する知識や技術を、私たち一人ひとりが身に付けることが最も重要であるとしながらも、「マンション」という共同生活をする環境だからこそできることがあるとも説く。

一人の人が心停止で横たわっている状態において、救命には少なくとも「胸骨圧迫をする人」「救急車を呼ぶ人」「AEDを持ってきて準備する人」が必要だ。戸建ての家では難しいケースも多いだろうが、マンションという集合住宅では近くに誰ががいることが多く、こうした協力を得ることも可能になる。

もちろんその協力体制が成立するのも、日頃の意識付けや訓練などが必要であることはいうまでもなく、だからこそ管理組合などの働きかけにより、救命活動に関する無関心の壁を取り外す努力が必要だと話した。

image

マンションという、人々が同じ建物を共有し生活する環境だからこその優位性を理解すると同時に、緊急時の対応について今一度管理組合で見直していくことが求められる。

次回のオンラインセミナーは7月13日(木)第9回 マンションみらい価値研究所オンラインセミナー 【分譲会社vs管理会社〜それぞれの論理と日本のマンションのこれから〜】と題し、16:00からの配信を予定している。

おすすめ記事

Contact us

マンションみらい価値研究所・
セミナー等についてのお問い合わせはこちら