1. 不動産関係の国家資格
国家資格の中でも不動産関係の資格は複数存在するが、ここではマンション管理業務との関係が特に深い代表的な5つを取り上げる。
これらのうち、分譲マンションの管理実務に特に深く関わるのは、「管理業務主任者」と「マンション管理士」だ。管理会社社員として社内で資格支援に携わった業務経験と、私自身がNo2~5の資格を取得した経験を踏まえて考察したい。
|
No |
資格名 |
概要 |
難易度 |
独占業務 |
|
1 |
不動産鑑定士 |
土地・建物等不動産の適正な経済価値を鑑定・評価する 地価公示や不動産証券化、担保評価などの「鑑定評価」を行う |
★★★★★ |
有 |
|
2 |
マンション管理士 |
法律・建築・会計等の知識を用いて管理組合運営の相談、助言、コンサルティングを行う |
★★★★☆ |
無 |
|
3 |
管理業務主任者 |
マンション管理会社が管理組合と管理委託契約を締結する際の重要事項説明や管理事務報告など、法律で定められた専門業務を行う |
★★★☆☆ |
有 |
|
4 |
宅地建物取引士 |
不動産の売買・賃貸の仲介等において、重要事項説明や契約締結のサポートなど法律で定められた必須業務を行う |
★★★☆☆ |
有 |
|
5 |
賃貸不動産経営管理士 |
賃貸管理業務の適正化を目的とし、管理委託契約の締結、入居者対応、建物の維持・管理などを行う |
★★★☆☆ |
無 |
※難易度は合格率、試験範囲、筆者の受験経験より設定。
2. 国家資格「管理業務主任者」と「マンション管理士」
「管理業務主任者(注1)」は管理会社に必須の国家資格であり、管理委託契約の重要事項説明や管理事務報告などの業務を行うことができる。マンション管理適正化法第56条及び施行規則第61条において、管理を受託している30組合につき1名以上の専任の管理業務主任者を事務所ごとに置く義務が定められている。合格率は約20%前後で、法律や標準管理規約、建築設備など幅広い知識が求められる。
一方、「マンション管理士(注2)」は国家資格ではあるが独占業務や設置義務はない(名称独占のみ)。しかし、合格率が8%前後と難関であるため、専門家としての信頼性が高まる資格である。独立や副業も可能で、管理組合の運営をサポートする専門家として、コンサルティング業務を担うことができる。
両資格は、試験を実施・運営している機関が異なるが、どちらかの資格試験に合格していれば、相互に50問中5問の免除を受けることができる。試験範囲も重複しているため、業務上の必須資格ではない「マンション管理士」を専門的知識の向上のために受験する管理会社社員も多い。
注1:一般社団法人マンション管理業協会 https://www.kanrikyo.or.jp/
注2:公益財団法人マンション管理センター https://www.mankan.or.jp/
3. 「管理業務主任者」資格の詳細
試験は年に1回のみ。合格率約20%、得点率は68~76%(合格点:50点満点中34~38点)と容易な試験ではなく、合格するには300時間ほどの勉強が必要だと言われている。社会人が仕事をしながら勉強時間を確保して合格するのはハードルが高い。あと数点足りずに不合格となり、数年にわたって受験する人も多い。
それでも管理会社のフロント担当としては、この資格がないと管理組合との管理委託契約に関わる業務を行うことができず、当該業務を行う際には資格を持っている上司や同僚のサポートを受ける必要がある。管理業務主任者の資格があってこそ、フロント担当として一人前となる。
管理業務主任者試験の詳細データ(図1参照)よりいくつかの考察をしたい。

※管理業務主任者試験結果報告より一覧化 https://www.kanrikyo.or.jp/kanri/siken.html
※2019年受験者男女別はデータなし
・男女比
受験者数の男女別データでは、男性約75%、女性約25%と男性が多い。15年以上前、私が大学生の時に受験した際も男性が圧倒的に多く驚いた。男性用のお手洗いが行列していて女性用のほうが空いていたのは、本資格の受験会場以外には経験がない。
管理会社のフロント担当は一般的に男性社員が多いことも、受験者の男性比率が高いことと関連しそうだ。
・受験者数の減少
受験者数は2021年以降徐々に下がっており、新たに資格が必要となる人が減っている可能性がある(図2参照)。資格所有者が年々増加していることに加え、マンション管理業の登録業者が減少していることも一因と考えられる。マンション管理新聞によると、2024年度のマンション管理業者の登録数は1,776社で、2023年度比28社減、同1.6%減となり、さかのぼると2012年度以降は13年連続で減少している(注3)。

参考までに、マンション管理士資格の受験者数も若干の減少傾向にある。

注3:マンション管理新聞(2025年12月15.25日合併)国土交通省不動産業課データより
・1点の重み
合格点は相対評価で決定されるため、問題が易化した年度には合格ラインが上昇し、難化した年度には下降する。この仕組みから、当然ながら合格点を1点でも下回れば不合格となってしまう。
受験のチャンスは年に一度しかない。試験日は毎年12月の第1日曜日、合格発表は1月中旬であるため、結果が出るまで落ち着かない年末年始を過ごす受験者も少なくない。
私自身も1点足りず不合格となった経験があるため、効率重視で合格点ギリギリを狙う「最低限の学習」はおすすめできない。相対評価制である以上、出題傾向や受験者全体のレベル次第で合格ラインは変動する。だからこそ、満点を目指す意識で学習することが、結果的に最も安定して合格に近づく方法だと実感している。現実的な目標としても、最低8割(40点程度)を確実に取れる実力を身につけておけば、年度による難易度変動に左右されにくく、安心して試験に臨むことができるだろう。
4. 資格試験挑戦のススメ
資格試験への挑戦は、これまで触れる機会の少なかった法律や関連分野の知識を体系的に身につける良い機会となる。とりわけ資格試験では、単に情報を受動的にインプットするだけでなく、問題を読み、考え、解くという能動的なアウトプットが求められるため、学習内容が確実に定着しやすい。
・管理業務主任者、マンション管理士
管理業務主任者やマンション管理士の試験範囲は、法令系(民法、区分所有法、標準管理規約、マンション管理適正化法など)、管理実務・会計系(標準管理委託契約書、滞納管理費、会計、税務など)、建築・設備系(建築設備、設備関連法令、長期修繕計画など)と多岐にわたり、マンション管理に関わる幅広い知識をバランスよく学べる構成になっている。