2019年12月に「管理組合の収益事業の実態」レポートを公開した。
あれから5年、管理組合の収益事業はどのように変化しているのだろうか。今回は2019年当時と最新データを比較し、管理組合を取り巻く環境の変化を考察する。
1. 全体傾向
2019年度(対象期間:2018年10月~2019年9月)と2024年度(対象期間:2024年10月~2025年9月)を比較すると、収益事業の実施率は大きく増加している。2019年度は総件数3,884件に対して350件で実施率は9.01%、2024年度は総件数4,122件に対して725件で実施率は17.59%だった(図1参照)。
収益事業を行う管理組合の数は、この5年間でおおよそ2倍に増加している。修繕積立金不足などがマンションの問題として報道される機会が増加する中、管理組合の収益事業への関心は高まっていると言えるだろう。

しかし、実施率の増加とは反対に、1棟当たりの収入額は2019年度の1,903千円から2024年度には1,711千円へと減少している。これは、1棟当たりの収入額が大きい屋上使用料収入より、外部貸し駐車場による収入が増加していることに起因していると考えられる(詳細は後述)。

2. 収益事業の内訳
どのような収益事業が増加しているのだろうか。収益事業別にその割合を比較する(図3参照)。さらに、収益事業別の1棟あたりの金額を比較する(図4参照)。
(凡例)
外部貸し駐車場:マンションの居住者用駐車場を近隣住民などに賃貸する場合の賃借料。直接近隣住民に賃貸している場合と、サブリース契 約により駐車場事業者等へ一括して賃貸している場合がある。
建物部分賃借料:マンションの敷地内に自動販売機を設置するなど、一部分を賃貸することにより得られる賃借料、使用料等。住み込み管理員室の賃貸や、管理組合が取得した専有部分を賃貸する場合も含む。
その他:太陽光発電の売電収入、シェアサイクル利用料など上記に分類されないもの


①屋上使用料収入
最も実施率が高い収益事業は「屋上使用料収入」である。携帯電話基地局数は増加傾向にある。(1)
ただし、都市部における携帯電話基地局はすでに100%近くカバーされており、今後大幅に伸びることは望めないかもしれない。さらに、将来的に衛星ダイレクト通信技術などが発展すれば、基地局設置数は増加から減少に転じ、解約が発生する可能性もある。屋上使用料収入は、携帯電話基地局1基あたり年間数十万円から数百万円に及ぶ。もし、解約となれば、賃借料収入が無くなる分を区分所有者から徴収せざるを得なくなる。したがって、屋上使用料収入を恒久的な財源として依存するのではなく、技術革新による解約リスクをふまえた上で、副次的な収入として収支計画を立案しておくほうがよいだろう。
②外部貸し駐車場
次に実施率が高い収益事業は「外部貸し駐車場」である。その伸び率は屋上使用料収入を上回っている。設備の設置などの工事を必要とせず、管理規約や使用細則を改正すれば導入が可能であることが、高い伸び率の要因であろう。もちろん、収益事業を実施すれば、管理組合に法人税が課税されるため、税理士報酬や税金を支払ったうえで手元に収益が残るかどうかの損益分岐点が存在する。それを超える収益が見込める場合には、たとえ数万円程度の額であっても、外部貸し駐車場の運営に踏み切る管理組合もある。2024年における1棟あたりの収益金額は588千円で、屋上使用料収入の959千円の6割程度である。
③建物部分賃借料
ここからは、収益事業そのものではなく、建物部分賃借料に関連する制度上の注意点についても触れておきたい。建物部分賃借料の収入がある管理組合の中には、多額の滞納管理費を解消する目的で、管理組合法人が専有部分の住戸を取得したケースがある。この場合、2026年4月1日に施行される改正区分所有法に注意が必要である。改正区分所有法では、管理組合法人の所有する住戸には議決権が付与されないことが明確化されている。これまで、管理組合法人の所有する住戸を議決権の分母に算入し、かつ、各議案の賛成票として分子にもカウントしていた管理組合法人も多いのではないだろうか。今一度、議決権数の数え方については確認しておくべきだろう。
3. 収益事業のこれから
管理組合が収益を得ようとするなら、自らの敷地や建物を利用して収入を得る以外の方法は見当たらない。こうした「軒先ビジネス」には、宅配ボックスを利用した物販や自動販売機の設置などがある。しかし、現在提供されている軒先ビジネスから得られる収入は少額である。今後も屋上使用料収入と外部貸し駐車場に依存する状況が大きく変化することはないだろう。屋上使用料収入は、幹線道路に面していることや周囲の建物より高い位置にあることなど、携帯電話会社にとってのメリットが必要である。外部貸し駐車場も、駐車場使用料が比較的高額な都市部でなければ成立しにくい。限定的なマンションでしか実施できない事業ではなく、あらゆる管理組合が実施を検討できるような収益事業はないだろうか。