マンション内の公園・プレイロットにある遊具は現在どうなっているか

設備・清掃
マンション内の公園・プレイロットにある遊具は現在どうなっているか

 マンション内の公園やプレイロット(以下「公園等」という)に遊具が設置されていることがある。これらの遊具は築年数を経てどのようになっているだろうか。
 新築分譲当時は、子育て世代が多く入居していたマンションでも、築年数が経過し、入居者の高齢化や世代交代が進み、共用部分に求められる施設もまた変化していることが予想される。公園等にある遊具は、子供たちが遊ぶ以外に利用することは考えにくく、遊具の多くは撤去されたり、公園等が他の用途に転用されているのではないだろうか。

1.公園等が設置されているマンションとその属性

 当社受託管理マンション3,961組合のうち、公園等のあるマンションは、12%(491組合)である(図1参照)。販売時の販売パンフレット、重要事項説明書、売買契約書、原始規約において共用部分に「公園」「プレイロット」と定義された共用部分が存在するマンションを抽出した。

 公園等があるマンションは、当社受託管理マンション全体と比較すると、築20年以上のマンションに多いことがわかる(図2参照)。当時のマンション販売のターゲットが公園等に価値を感じる20歳代から30歳代の一次取得者層が中心であったのではないかと推察される。

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 また、戸数帯別では、比較的大規模なマンションに設置されていることがわかる。ただし、50戸未満であっても132組合のマンションに設置されており、小規模なマンションであっても公園等を設置している事例がある(図3参照)。

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 公園等があるマンションの販売パンフレット、竣工図書から分譲時の状況を調査した。公園等があっても、ベンチや遊具の設置がなく遊歩道や植栽帯のみであるマンションが42%(205組合)、ベンチのみが設置されており、遊具の設置がないマンションが21%(103組合)、ベンチの他、遊具が設置されているマンションが37%(183組合)であった(図4参照)。

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2.遊具等の残存率

 分譲時にベンチや遊具(以下「遊具等」という)のあるマンションでは、どのような種類の遊具が設置され、現在どの程度残っているのかを当社のマンション担当者に聞き取りによる調査を実施した(図5参照)。

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 ベンチ以外では、砂場の設置数が96件と最も多いが、残存率は43.2%と半数以上が撤去されていることがわかる。聞き取りの際に、撤去の理由についても調査したが、撤去当時の検討経過の記録が残っていない管理組合が多く、撤去理由の詳細までは不明であった。ただし、判明した何件かの管理組合では次のような理由によるものである。
 ● 猫などの小動物が糞をする場となったことから衛生的な問題で撤去した(3件)
 ● 利用者が少なく、踏みしめられているうちに周囲の土が入り、自然消滅した(5件)
 ● 東日本大震災の時に、砂場は放射線の測定値が高いとされたことから撤去した(2件)

 残存率が最も低いのはスプリング遊具である。スプリング遊具は特に低年齢層の子供向けの遊具であり、使用頻度が少ないこと、遊具メーカーがスプリング部分の交換を概ね10年毎に交換することを推奨しており、維持費がかかることが原因であろう。また、ヒアリングでも、誰も使用していないが撤去費用が高額であり使用禁止の貼り紙をしてそのままにしている等の事例も報告されている。

 残存率が最も高いのは鉄棒であった。鉄棒は他の遊具と比較して設置面積が少ないこと、メンテナンス等の維持費がかからないことが理由ではないだろうか。

 また、駐車場や自転車置場など他の共用部分、共用施設が不足し、公園等を撤去せざるを得なかったという理由や、災害への備えをしたいという意識の高まりから、防災用倉庫設置するために公園等を撤去したという事例もあった。

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3.遊具を撤去した管理組合の事例

 現在は遊具を撤去しているが、撤去までの間の合意形成に2年余りを要した管理組合の事例を紹介する。

 ①検討開始段階の状況
  ● 新築当初から管理組合にて修繕を重ね20年以上維持しつづけたが、遊具の鉄部が腐食したことによりプレイロット、遊具の取扱いについて検討が始まる。
  ● 当時、既存の遊具は安全基準を満たさなくなっており、部分修繕は不可能、撤去または大幅な改装や新設が必要となる状況であった。

 ②第1回 総会までの状況
  ● 理事会での検討結果は、既存の遊具を撤去し、遊具を新設する案で総会の議案としたが、総会では否決となる。この間、プレイロットは遊具の安全性が確保できないことから、「立ち入り禁止」となる。
  ● その後も、プレイロットの大規模改修、撤去、新設のいずれの案も利用者と非利用者の意見がまとまらず、さらにいずれの案であっても管理組合の金銭的負担が高額であることから、プレイロットは立ち入り禁止のままの状態が続いた。遊具の撤去に反対する意見は下記のようなものであった。
  ● プレイロットがあることで、マンションの購入を決めた区分所有者がいる
  ● マンション内の高齢化による利用者数の減少が少ないことを理由に共用部分を変更すべきではない
  ● 財産の処分に該当する、この場合、全員合意でなければ撤去できない

 ③第2回 臨時総会までの状況
  ● 2年後、倒壊の危険が生じるまでに至り、臨時総会を開催し、本件の解決を図ることとなる。臨時総会で理事会は下記の説明を行った。
   ◯ 管理組合で相見積もりを取得し、前回検討時より安価な工事会社に発注できること
   ◯「プレイロットの撤去」と「遊具の撤去」の認識が混同していたことから「プレイロットは撤去しない、遊具は撤去する」として区分して考えること
   ◯ 遊具に倒壊の危険性があること
  ● この総会で、プレイロットは撤去せずに、遊具を撤去することが可決した。

 ④現在の状況
  ● 現在、大規模修繕工事を検討中。工事中の資材置き場として使用すること
  ● その後の利用方法について再検討中

4.遊具を利用している管理組合の事例

 砂場、滑り台型遊具、スプリング遊具の概ね半数が撤去されている中、現役で使用し続けられている遊具も多い。聞き取り調査では、「入居者が近所のお母さん方とお弁当を広げている光景を見たことがある。」「築30年を経過するが、中古マンションとしての人気が高く、子育て世代が入居してくる。公園の遊具は現役で使用している。」という例もあった。また、プレイロットを改修することにより、使用頻度が向上した事例もある。

事例①
[改修前]経年によって遊具類が劣化しており、有資格者による遊具診断を行ったところ現状では危険との指摘がある。

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[改修後]遊具は劣化した部品を交換した上で再塗装し、砂が硬化して使用できない砂場を更新し安全性の確保を行う。

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事例②
[改修前]調整池も兼ねるプレイロットのため、雨天後の水はけが悪く、子供たちが利用した後はドロで周辺舗装が汚れていた。

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[改修後]子供が遊ぶことを前提に、舗装はせず、暗渠管の埋設によって水捌けを改善する改修を行う。改修後は雨天後でもすぐに遊び場として利用できるようになった。

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 なお、最近では、新型コロナウイルスの影響により、学校や公共の公園で遊ぶことができなくなった子供たちがマンション内の公園で遊ぶようになり、急に賑やかになったという事例もある。こうした事例では、理事会で遊具の撤去を検討していたが、「議案を廃案とした」、「遊具の緊急点検を実施した」、「危険があると考えられる遊具にロープを張って使用できないように措置を講じた」という報告もあった。

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 公園やそこに設置されている遊具も居住者の生活スタイルによって変化している。また、東日本大震災の放射線の影響により砂場が撤去されたり、新型コロナウィルスの影響によりマンション内の公園等が見直されたりするなど、自然災害や社会情勢によっても影響を受けていることが分かる。
 全体として公園の遊具は経年とともに失われていく傾向にあるが、必要としている居住者もいることから、現在だけではなく、マンションの将来も視野に入れた合意形成を図るべきであろう。

以上

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久保 依子
執筆者久保 依子

マンション管理士、防災士。株式会社リクルートコスモス(現株式会社コスモスイニシア)での新築マンション販売、不動産仲介業を経て、大和ライフネクストへ転籍。マンション事業本部事業推進部長として主にコンプライアンス部門を統括する傍ら、一般社団法人マンション管理業協会業務法制委員会委員を務める。

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