2019/07/30「防災力を高めるアクションプラン」、京都でシンポジウム開催6月1日(土)、キャンパスプラザ京都(京都府京都市下京区)において、「NPO法人マンションサポートネット6周年記念シンポジウム 防災力を高めるアクションプラン」と題し開催されました。基調講演では、丸山 肇氏(マンション管理士/大和ライフネクスト株式会社)が登壇し、「間違いだらけの防災知識」というテーマで講演。これまで“常識”とされてきたことが意外にも逆の発想、逆の行動であったことの数々を紹介しました。丸山氏は冒頭で「防災というと、まずは発災期のことをイメージしがち。もちろん命を守る行動は何より大切だが、その真意を深掘りすると実は『生活復興』を包括しており、そこを真剣に考えるべきだ」と述べ、その備えについて時間を割いて説きました。防災知識として植え付けられているもののひとつに「地震だ、火を消せ」という教えがあります。しかしこれについても丸山氏は「大きな揺れが起きている最中、煮え立った鍋ややかんの火を消しに行く行為は非常に危険。大やけどを負ってしまったら、生活復興を困難なものにしてしまう。ガスコンロには『マイコンガスメーター』が付いており自動的に火が止まるシステムになっているので、地震が来たら火を消しに行くのは間違い」と指摘。その反対に地震による火災の原因は電気であるとし、建物倒壊に伴う漏電や通電火災が一番怖いと話しました。東日本大震災では、津波により石油タンクや船舶から漏れ出た燃料が原因で着火する「津波火災」で145人が亡くなったということです。また、2016年に起きた「熊本地震」では、本震の大きな揺れに驚いた方々が揃って避難所または車中で寝泊まりをしたため、マンション内にはほとんど人が残っていなかったという事態に至り、「これにより『災害ゴミ』、『インフラ復旧後の漏水被害』、『車中泊によりエコノミークラス症候群』などの2次災害が発生。マンション住民が被災生活期をどう過ごすべきか、十分に考えておくべき」と問題提起しました。さらに、マンションの避難訓練ではありがちな「エントランスに集まり点呼」を行うのも間違いであるとし、「安否確認は救助と直結するもので、スピードが生死を分けることもある。マンションでは各フロアで安否確認を行って」と間違いを指摘。これまでの概念とは違う説明に、会場に集まった70名近い参加者も思わず頷く姿が見受けられました。講義は終始「どうしたらよいか」を参加者に語りかけ、また「何のための防災なのか」を気づかせる構成でした。丸山氏は「防災は奥が深い。また、身に付けるには知識として学ぶというよりは、学び・考え・自分なりに整理し・行動してみないことには本当の意味を理解できない」として基調講演をまとめました。丸山氏に続き、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社・牧 美春氏が登壇し、「『生活復興』に大きな差がつくマンションの地震保険の考え方」と題し講演。保険の基本を紹介すると共に、その必要性をわかりやすく解説しました。三部構成の最後はパネルディスカッションを予定。「発災時のマンション住民の避難行動について」と題し、パネリストには自主防災会を立ち上げているマンション管理組合の中峯 敦氏・西田 公保氏、NPO法人マンションサポートネット理事の谷 恒夫氏、京都市行財政局防災危機管理室地域防災推進課長の寺川 永真氏、大和ライフネクスト株式会社 事業推進部長の柏 勇次氏、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 住宅推進室 課長補佐の牧 美春氏が登壇。コーディネーターは前出・丸山氏が務めました。あまり例をみない自主防災会を設立し、管理組合とどのように連携し役割分担をしているのか、また、それをサポートするNPO法人マンションサポートネットとの取り組みなどを紹介。また柏氏からは、「マンション内での防災用名簿の取り扱い」と「個人情報保護法」についてその真意を説明。「個人情報保護法とは、適正に個人情報を活用することでより豊かで安全な生活や社会を作りましょうという趣旨の法律。防災上、必要なのにも関わらず、個人情報保護法があるからと名簿を集めず、結果、防災活動が停滞してしまうのは本末転倒。このあたりを正しく理解して進めてほしい」と解説しました。トータルして三時間半に及ぶシンポジウムとなりましたが、多くの熱心な参加者により、時折、質問や意見が飛び交うなど、非常に有意義な時間となりました。「防災」とひと言でいっても、必ず当てはまる正解は、ないのかも知れません。だからこそ、冒頭で丸山氏が語ったように、「何のための防災なのか」を一人ひとりが考え、答えを出していく必要があるのではないでしょうか。