“築年数”より“住み心地”? ― 中古マンションリノベの実力

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“築年数”より“住み心地”? ― 中古マンションリノベの実力

1. 中古マンション市場の活況とフルリノベーションマンションのトレンド化

首都圏エリアでは、中古マンション市場の成約件数が6年連続で増加し、新築市場を上回る活況をみせている(注1)。
 背景には新築マンション価格の高騰がある。人件費や建築費、用地取得費の上昇が重なり、東京23区の新築マンション平均価格は1.3億円を超え、首都圏でも5年連続で過去最高価格を更新している(注2)。もはや普通のサラリーマンに手の届く値段ではなくなっているため、比較的価格が抑えられ、立地の選択肢も広い中古マンションに注目が集まっている。
 その中でも、専有部分をまるごと刷新する「フルリノベーションマンション」は、築年数に関わらず住み心地を高められる選択肢として定着しつつある。本コラムではその実態を紹介する。

 

2. フルリノベーションマンションとは

 

 不動産会社が中古マンションの一戸を買い取り、数ヶ月かけて専有部分内を全面的にリノベーションしたものを言う(本稿では、不動産会社による再販モデルを前提にしている)。床・壁・天井・設備を撤去し、「スケルトン」状態にしてから間取りを含めて再構築するため、室内は新築同様の仕上がりになる。そのうえで、新たな買主へ販売するスタイルが一般的だ。
 以下に、フルリノベーション(以下、「フルリノベ」と略す。注3)の一例を紹介する。3LDK2LDKに変更し、生活動線の使い勝手がよくなるよう見直したプランだ。リビングを広げ、ワークスペースを設置し、和室をすべて洋室に変更している。また、キッチンや浴室などの水回り、専有部分内の給排水管もすべて新しく取り替えている。なお、躯体、玄関扉、窓は共用部分であるため変更はできない。
 ※資料提供:暮らすプラス クラスプラスリファイン
       大和ライフネクスト 暮らすプラス

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3. 売主と買主、それぞれのメリット

中古マンションを売却する際、「自分でリフォームしてから売った方が高く売れるのでは?」と考える人もいるだろう。しかし、実際には不動産会社へそのまま売却するメリットも多い。
 当社の暮らすプラスリファイン部・資産管理サポート課によると、売却相談の多くは相続人や高齢者から寄せられるケースが中心だ。

     相続人の場合
 相続したマンションを複数人で分割するため、早期に現金化したい。

     高齢者の場合
 施設入所や移住などが決まっており、住み替え費用を確保するために早く売却したい。

こうしたケースでは、自らでリフォームをしてから売却するよりも、現状のまま不動産会社へ売却する方が手間も時間もかからず、結果としてメリットが大きい場合が多いのだ。

 一方、買主側にもフルリノベマンションならではの利点がある。

筆者の姉が数年前に近畿圏で新築から築40年以上のフルリノベ物件へ住み替えた実例をもとに、主なメリットを紹介する。

     住宅ローンの税制優遇が受けられる
個人でリフォームを行う場合、リフォーム費用と住宅ローンを一体化できないケースがある。
しかし、フルリノベ済み物件であれば、工事費用が物件価格に含まれているため、住宅ローン控除の対象になる。

     立地条件が改善できる
新築マンションでは価格面から選択が難しい都心や駅チカのエリアでも、現実的な選択肢となる。その結果、住み替え後は、幼稚園・小学校・駅や買い物ができる場所までの距離が短くなり、日常の利便性を改善することができる。

     固定費(管理費・修繕積立金)が下げられる
新築マンションよりもスケールメリットや設備維持費が少ないという要因から、管理費・修繕積立金が下げられるケースがある。
例)
 住み替え前:約80戸の新築マンションで機械式駐車場あり、エレベーター2
 住み替え後:300戸以上の大規模マンションで駐車場は平置き、エレベーターなし

*注意点
 もちろん、フルリノベ物件にも注意すべき点がある。
 ・室内
   築年数が古いゆえの制約が残ることがある。
   共用部分はリノベーションできないため、新しい室内との差が目立つケースもある。
    例)
    天井が低い、浴室が狭い、エアコンが設置できない部屋がある
    玄関扉やインターホンは更新済みだったが、窓枠やガラスは古いままになっている

  ・建物全体
    管理組合では、建替えを検討するか、あるいは「ビンテージマンション」として維持していくかの議論が行われている場合がある。

 管理組合の方針は、将来の資産価値に大きく影響するため、購入前に確認が必要である。

 

4. 管理組合にとってのフルリノベ

 所有者が一定期間、不動産会社となることや、リノベ工事中の騒音など、管理組合や近隣住民にとって不安材料になることもある。そのため管理組合は、工事申請書に基づき内容が規約に沿っているかを確認し、総会の出欠票や議決権行使書を確実に提出してもらうなど基本的なガバナンスを適切に機能させる必要がある。
 一方で、フルリノベにより専有部分の所有者が入れ替わる「新陳代謝」は、管理組合にとっても大きなメリットをもたらす。

     理事のなり手不足の解消
30年を超えると、建物と同じように住民の高齢化も進む。
フルリノベ済みマンションを購入するのは比較的若い世代が多く、住民の若返りが期待できる。役員のなり手不足に悩む管理組合にとっては、課題の解決の一手となる可能性がある。

     空き駐車場・駐輪場の解消
高齢化に伴い車・自転車を手放す世代が増えると、駐車場や駐輪場が空きやすくなる。
新たな所有者が契約することで管理組合収入の増加につながる。

     資産価値の向上
リノベ前の価格に比べ、フルリノベ済みであれば工事費用と付加価値が価格に反映されるため、市場に出た際に高い評価を受けやすい。

中古マンションのフルリノベーション市場は、今後も拡大が期待されている。新築価格の高騰だけでなく、既存の建物を活かしながら価値を再生するという考え方が、住まいの選択肢として定着しつつあるからだ。
 「古いものを再生する」ことは、環境にもやさしい持続可能な住まい方のひとつといえる。その価値の維持・向上を支えているのが、日々の管理を担う管理組合である。共用部分の維持管理や運営の質は、資産価値の維持・向上だけでなく、マンションのみらいをどう育てていくかにも直結している。

 

1:東日本不動産流通機構 季報 Market Watch サマリーレポート 2026 13 月期
 https://www.reins.or.jp/sf_202601-03.pdf

2:不動産経済研究所 首都圏 新築分譲マンション市場動向2025 年度
 https://www.fudousankeizai.co.jp/share/mansion/670/2643ps.pdf

3 フルリノベは、マンション再生の「建物の更新」とは異なる。
 国土交通省 マンション再生等手法の比較検討マニュアル
 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001994100.pdf

小木 雪子

執筆者

小木 雪子 マンションみらい価値研究所

マンション管理士。管理現場にて管理組合担当業務を経験後、管理業務のマネジメント・企画を行う部門に異動。マンションみらい価値研究所のコラムの執筆やWEBサイトなどの運営をしている。

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