【世界のマンション~オーストラリア・メルボルン編~】 マンションと街並み

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【世界のマンション~オーストラリア・メルボルン編~】 マンションと街並み

 2026年2月、オーストラリアのメルボルンのマンションを訪問する機会を得た。オーストラリアは州制度を採用しているため、アメリカと同様、州が違えば法制度も、歴史や文化もかなり異なる。今回はメルボルンのあるヴィクトリア州を紹介しよう。

メルボルン中心部の街並み

 

 メルボルン全体は東京都よりも広いが、その中心市街地である「City」はとてもコンパクトだ。東京で例えるなら、山手線の駅ひとつ分ほどのエリアに、主要な商業施設などがまとまっている印象だ。
 このCityには無料のトラムが走っており、Cityをぐるりと一周しても1時間程度で回れる。東京さくらトラム(都電荒川線)のような路面電車がのんびりと走っている。停留所には10分から15分間隔で運行、という表示のみがされていて、〇時〇分発というような細かな表示はない。しかし、このCityの中に、メルボルンの歴史や文化が凝縮されている。

外側は歴史的建造物、中は最新建築物、そのギャップがすごい

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 オーストラリアは、日本と比べると地震がほとんど起きない。「日本と同じように太平洋に浮かぶ島ではないか?なぜ地震が少ないのか?」という私の疑問に、現地を知る友人から「オーストラリアは『島』ではなく、『大陸』だから」と一蹴された。確かに大陸である。島ではない。そして、プレートの境界ではなく内部に位置している。
 メルボルンの街を歩いていて気付くのは、ヨーロッパ調の古い街並みがよく保存されていることだ。オーストラリアは長くイギリスの統治下にあったため、メルボルンでもヨーロッパ調の建築物が多い。市内には、「100年以上経過しているに違いない」と一見してわかるような建築物が建ち並ぶ。古いまま建築物を保存することができるのは、地震が少ないからだろうと想像しながら、ビルの中に入る。
 すると——。ビルの中は最新のインテリジェントビルなのである。最新の超高速エレベーター、広々としたエントランス。建物の外側だけを残し、いわば「外壁」だけを補強したうえで、その内側に近代ビルを建築しているのだ。古い衣装を身にまとった若いビルだったのである。
 外からビルを見上げると、古い外観の一歩奥に最新のビルがそびえ立っている。しかし街を歩いていると、その最新のビルの頂上は見えない。こうして、ヨーロッパ調の古い街並みを残したまま今のニーズに応えているのだ。
 管理業界に長くいると「この外観の維持費はいくらかかるのだろう?」「この窓はどうやって清掃するのか?」などお金にまつわる話が頭をよぎる。しかし、そうした維持費を負担してでも、Cityに古い街並みを保存することに意義があるのだろう。
 「オーストラリアには地震が少ない」という理由だけではない。街並みを守るという街全体の合意と努力があるのだ。

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多文化共生社会

 オーストラリアは多文化共生を実現している国である。街を歩いているとイタリア人街区、中国人街区と、多国籍な街並みが次から次へと現れる。いま、世界ではナショナリズムが台頭し、戦争や内紛など、不穏な空気が広がっている。そのような中、オーストラリアは移民を積極的に受け入れ、多文化共生の道を探っている。人口統計を見ても、日本のように減少の一途ではない(※1)。オーストラリアの移民政策は、人口の維持・増加に寄与していると考えられる。
 ふと、通りかかった路地裏に東京の「新橋」を思わせる一角があった。「ところせまし」と並んだ丸椅子、見慣れた赤ちょうちん、壁には「ホッピー」や「酒」のポップ文字が躍る。店員さんは、ワーキングホリデーで滞在している日本人大学生であろうか。
 メルボルンの街中は、どのバーに入っても、「ハイボール」は通じない。「Whisky Soda」である。ここでは「ハイボール一丁!」が飛び交っていた。
 日本人がんばれ。

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カフェ文化とマンションコミュニティ

 メルボルンはカフェ文化が発達している。朝は6時~7時くらいに店が開き、人々はカフェで朝食をとる。有名店は朝から行列だ。私も「せっかく来たのだから」とその列に並び、オージーたちと食事をする。昼食時も同様の光景が広がる。そしてカフェは15時には閉店してしまう。夜はバーにして隙間時間を活用しようなどという日本人的発想はなさそうだ。カフェでおしゃべりをしながら食事をするのが「文化」なのだ。
 ビルやマンションの開発を手掛ける団体様(※2)にヒアリングしたときの話である。複合用途のビルの場合、どのようなテナントが入りますか?との質問に、間髪をいれず「カフェ」との回答。居住者のニーズもカフェが一番多いらしい。そして、カフェが複合用途型のマンションのコミュニティ形成にも役立っているという。
 一方、日本の複合用途型で人気のテナントは、統計データがあるわけではないが「コンビニ」であろう。日本のコンビニ文化は世界的にも有名だ。それぞれの文化に応じて、テナントの誘致も異なってくるのだろう。

Cityの中心、最高級マンション

 Cityの中心地にある賃貸マンション(※3)と分譲マンションのツインタワー型マンションを訪問した。分譲マンションは販売済みであるが、賃貸マンションは、まさに賃借人の募集中であった。その豪華さには目を見張るものがある。当研究所では、海外のマンションを紹介し、そのたびに豪華な共用施設にため息をつくことが多かったが、今回も例外ではない。プール、ジャグジーはもちろんのこと、ゴルフシミュレーション室、ビリヤード場、2レーンのボウリング場、ここには書ききれないほどの共用施設の数である。

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 こうした超高級マンションの将来が気になるのは私だけであろうか。日本のバブル期に建てられた超高級マンションは、今でもヴィンテージマンションとしてその価値を保つ建物もあれば、老朽化や高齢化の波にのまれて修繕もままならない建物もあり、明暗が分かれている。
 メルボルンには、古い街並みを大切にする文化がある。だからこそ、何十年後も超高級マンションとして維持されていることを願うばかりである。また、日本のマンションは世界に先駆けて先進事例とならなければならないと改めて思う。

アパートメントホテルに宿泊してみた

 今回、私はメルボルンのアパートメントホテル(※4)に宿泊した。円安もあって、日本人の感覚からすると、とにかく物価が高い。ペットボトルの水1本が350円程度、カフェでコーヒーを飲めば、800円~1,000円はする。毎日外食を続けるのは現実的ではない。ただし、現地の最低賃金は$24.95(約2,800円相当)である。日本の約2倍以上(2026年2月現在)。物価が高い分、所得も高いのだ。つまり、「なんでも高い!」と思うのは日本人の感覚なのである。
 アパートメントホテルは、通常のホテルとは異なり、部屋にキッチンや洗濯機もあり長期滞在が可能だ。今回宿泊したアパートメントホテルは地下に大型のスーパーマーケットもあり、量り売りの肉や野菜を買ってきて自分で調理していた。そうでもしなければ、サラリーマンのお財布ではとても持たない。物価の高さに戸惑いながらも、現地で暮らすように過ごせたことは貴重な経験となった。メルボルン、再び訪れたい街である。

 

※1 総務省統計局「世界の統計2024」https://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/2024al.pdf
※2 VPELA  https://www.vpela.org.au/
※3 メルボルン クォーターウェスト プロジェクト
https://www.daiwahouse.co.jp/about/release/house/20230726105129.html
※4 ネスト・ドックランズ
https://www.nesuto.com/ja/docklands

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久保 依子

執筆者

久保 依子 マンションみらい価値研究所 所長

マンション管理士、防災士。不動産会社での新築マンション販売、仲介業を経て、大和ライフネクストへ転籍。マンションフロント担当、賃貸管理担当などを経験したのち、新築管理設計や事業統括部門の責任者を歴任。一般社団法人マンション管理業協会業務法制委員会委員を務める。著書『マンションの未来は住む人で決まる』が第15回不動産協会賞を受賞。

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