所有者不明専有部分管理人~いなくなった人に思いを馳せる~

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所有者不明専有部分管理人~いなくなった人に思いを馳せる~

 改正区分所有法には4種類の「管理人」制度が創設された。以前から民法にて規定されていた「管理人(清算人)」を含めると、マンション管理に登場する「管理人」は全部で6種類となる。
 今回は、この「管理人」の中から、「所有者不明専有部分管理人」を紹介しよう。
なお、私は法律家ではなく実務家である。本稿は法律用語の解説を目的とするものではなく、実務の観点から制度運用について考えようとするものである。法律用語の使用方法について不適切な点があればご容赦いただきたい。

所有者不明専有部分管理人とは

 

 所有者不明専有部分管理人とは、所有者の所在が分からない専有部分について、マンション管理を円滑に進めるために選任される管理人のことである。マンション管理の実務では、所有者不明専有部分への対応がしばしば課題となるため、その解決策として位置づけられている。

 この所有者不明専有部分管理人と比較されるのが、不在者財産管理人である。両者の違いはおおむね次のとおりである。
「不在者財産管理人」は、マンションに限らず、預貯金や他の不動産などを含む本人の財産全体を管理する。一方「所有者不明専有部分管理人」は、マンション専有部分等に特化して管理する。今までは、不在者財産管理人制度しかなく、マンションのことだけを解決したくても、他の財産に関する利害関係人の動向を待たざるを得ないなど、管理組合にとっては非常に使いにくい制度であった。改正区分所有法では、不在者財産管理人ではなく、所有者不明専有部分管理人を選択して、裁判所に申し立てることができるようになる。
 例えば、災害発生時や建替えなどの際も、迅速に対応できることが期待されている。

マンションにおける不在者財産管理人選任数

 今まで、所有者不明専有部分管理人の制度はなく、今後どれくらい活用されるのかは未知数だ。ただし、不在者財産管理人については、最高裁判所がその数を公開している※1。2024年1月から12月までの選任件数は2079件である。
 この統計からは、不在者の財産にどの程度マンションが含まれているかは不明である。しかし、日本全体でおおよそ12%程度の人が分譲マンションに居住していると考えると、2079件×12%=約250件となる。おおよそ250件のマンションで、この制度が利用されていた可能性があると推計できる。また、ここから先は筆者の実務感覚に基づく推測ではあるが、今後、制度が利用しやすくなることなどを考えると、所有者不明専有部分管理人は、年間で250件以上は利用されるのではないだろうか。

マンションにおける行方不明者数

 

 公的機関が公表している資料の中に「夜逃げ」に関する統計はなく、用語の定義もされていない。それどころか、「所在不明者」という用語を用いた統計も見当たらない。
 概念として最も近いのは「行方不明者」であろう。
 警察庁 によれば、2024年の行方不明者数は、8万2,563人である※2。一方、それ以前に受理した届出分を含め、んで2024年に所在確認、死亡、その他(取下げ)などの確認がなされた件数は8万2,647件人で、そのうち受理当日から1年未満に所在確認等がなされたのは8万152件人である。つまり1年以上経過して確認された件数ものが2,495件人ということになる。
 なお、2024年中に届出が受理された届出もののうち、同年中に所在確認等がどの程度なされた件数がどの程度かは統計数字には示表されておらず、算出することはできない。ただし、ほぼ同数で推移していくと仮定するなら、1年以上の連絡が付かず、生死もわからないのは、約2,400人程度と考えられる。また、この約2,400人という数字は、不在者財産管理人の選任数2,937件にも近いづく。行方不明者はやがて、不在者財産管理人の選任へとつながっていくと考えても大きな齟齬差はないだろう。

不在者となることを未然に防ぐ

 

 いくら法制度が利用しやすくなったとはいえ、行方不明者を減らすことができれば、それに越したことはない。
前述の警察庁の資料から、区分所有者となり得るであろう20歳以上を抽出し、行方不明となった原因別にグラフ化してみた(図1参照)。なお、グラフの値は行方不明者の集計であり、このうちどの程度の人が不在財産化管理人制度に移行したかはデータがなく、集計することができない。

 

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 70歳代から急激に「疾病関係」の割合が高くなることが分かる。この「疾病」には認知症も含まれている。認知症が行方不明の一因となるケースも少なくないとされており、所在不明者を減らすには、認知症への対応を加速しなければならないことを読み取ることができる。

所在不明者に思いを馳せて

 「所在不明」の話をしていると、「夜逃げ」を想像すしている人が多いことに気が付いた。
 私が小学生のころ、近所に父親が社長をやっている近所にの大きな家に住む友達がいた。
 ある日、彼女は学校に来なかった。帰宅途中に家の前を通りかかると、大きな家の前に人だかりがしていた。「借金」「夜逃げ!」、大人たちの間ではそんな言葉が飛び交っていた。
 今思えば、おそらく父親の経営する会社が倒産するなどして、債権者が集まっていたのだろう。あれから何十年も経過するが、再び彼女に会うことはないままだ。
 私の「夜逃げ」のイメージは、彼女の姿と重なっている。いま、彼女はどうしているのだろうか。別の土地で幸せに暮らすことができているのだろうか。
 所在不明者は単なる数値ではない。それぞれの人生に思いを馳せて論じるようにしたい。

※1 最高裁判所、財産管理人等選任事件の新受件数及び管理継続中の件数の調査結果について(令和6年)
※2 警察庁生活安全局人身安全・少年課、「令和6年における行方不明者届受理等の状況」、2025、1頁


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久保 依子

執筆者

久保 依子 マンションみらい価値研究所 所長

マンション管理士、防災士。不動産会社での新築マンション販売、仲介業を経て、大和ライフネクストへ転籍。マンションフロント担当、賃貸管理担当などを経験したのち、新築管理設計や事業統括部門の責任者を歴任。一般社団法人マンション管理業協会業務法制委員会委員を務める。著書『マンションの未来は住む人で決まる』が第15回不動産協会賞を受賞。

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