集合郵便受けとは
オートロック設備やマルチな機能を持つ宅配ボックスなど、マンションの設備機器は進化の一途をたどっている。しかし、集合郵便受けはどうだろうか。
集合郵便受けとは、多くのマンションにてエントランスまたはその付近に設置された郵便受け(郵便ポスト)のことである。各住戸の玄関先ではなく、全住戸分が一箇所にまとめて設置されている。
私の経験値でいえば、30年ほど前の集合郵便受けは、壁に設置され、前面の扉を開けて投函された郵便物等を取り出す方式であった(図1参照)。投函口と取り出し口が同じ面にある。
現在は、外部から投函し、オートロック(セキュリティライン)の内側から取り出す方式を採用するマンションも多い(図2参照)。投函口と取り出し口が外側と内側で分かれている。
とはいえ、集合郵便受けに投函された郵便物等をそのまま取り出すという基本的なスタイルは変わっていない。マンションの設備機器の中では、「古くからあまり変わらないもの」に位置付けられるだろう。
図1 集合郵便受け(投函口と取り出し口が同一面にあるタイプ)
図2 オートロック(セキュリティライン)の内側から取り出す方式(イメージ)(AI作成)
郵便物の減少
郵便物は減少の一途をたどっている。総務省によれば※1 、2024年度の引受郵便物等物数は、169億通・個であり、郵便物は126億通である(図3参照)
日本の総人口は約1億2316万人※2 である。単純に割り算をすると1人あたり年間約100通、月間8~9通程度しか受け取っていない計算になる。
中古マンションチラシの現状
中古マンションのチラシには、いくつかの種類がある。仲介業は、マンションを売りたい人(売主)と買いたい人(買主)の間を仲介する「業」である。
まず初めに、売主となる区分所有者から媒介契約を取得する。これを業界用語で「ブツアゲ(物上げ)」と呼ぶ。ブツアゲチラシは「このマンションを購入したいというお客様がいらっしゃいます。今すぐお電話を」「売却査定無料、査定されたお客様には〇〇プレゼント」などの文言が並ぶ。
次に、媒介契約を取得した後に作成するのが「販売チラシ」である。「〇〇マンション、〇〇万円、日当たり良好!」など、販売のための広告を、周辺マンションを中心に投函する。
マンションの購入客は、その地域に何らかの地縁を持つ場合が多い。例えば、近隣の賃貸マンションに住んでいるが、子供の学区を変更しない範囲で中古マンションを購入したい、通勤に便利なこの沿線からは離れたくない等の理由により、地域を限定して探すケースが多い。むしろ、検討客の多くは近隣にいると言ってもよいくらいだ。
仲介業時代の友人にも、現状を聞いてみた。「今でも同じで、媒介契約がとれたら即日に販売チラシが鉄則だ」とのこと。
さらに、販売中は定期的に販売チラシを投函する。媒介契約には、専属専任媒介、専任媒介、一般媒介の3種類がある。このうち専属専任媒介と専任媒介の場合、仲介会社は売主に対して販売状況の報告をしなければならない。この時に「販売チラシを投函しました」という報告は、売主の納得を得やすい。具体的な購入検討客が現れるまで、仲介会社が売主に積極的にアピールできる販売活動の一つが、販売チラシの投函なのである。
そして、無事に買主が見つかり売買契約が成立した場合も、すぐに「成約御礼」と書いたチラシを投函する。
すでに成約している以上、チラシを投函しても購入はできないため、「何の効果があるのか」と疑問を持つ人もいるだろう。実はこの「成約チラシ」は、次の媒介契約取得のための布石なのである。「このマンションの売買契約を成立させました」という自社のアピールをすることによって、「このマンションの売却に強い不動産会社」という印象を与えることができる。
先ほど登場した友人にさらに聞いてみた。「不動産仲介会社が投函する膨大な数のチラシに困っているという声もある。何とかならないのか」と。そうしたところ、次のような回答があった。
「売主からの反響(売却したいという相談の電話)は、チラシによるものが一番多い。不動産の専門誌でも、ネット広告でもなく、チラシが一番効果的だ。だから現状では辞めるつもりはない」そうだ。
マンション管理業に従事していると、居住者から「チラシの投函を辞めさせてほしい」「共用部分が散らかって迷惑だ」といった意見が寄せられることは多い。さらに、管理員からも「いくら清掃しても、投函されたチラシがすぐに散らかってしまう」との声があがっている。しかし、中古マンション販売チラシに限って言えば、そのチラシを実際に活用している人もいるということになる。利便性と負担の両面があるだけに、対応の在り方については慎重な検討が求められる。
みらいの集合郵便受け
集合郵便受けは、将来どのような姿になるのだろうか。郵便物等の減少や、迷惑チラシ対策を考えると、各住戸に個別の郵便受けを設置する必要性は今後薄れていくのかもしれない。たとえば宅配ボックスと同様に、住戸を特定しない共用の郵便受けを設置し、配達者側が受取人を指定し、指定された受取人がカードキーなどを用いて郵便物を受け取るという方式もある。(なお、すでにこうした郵便受けシステムが存在するかどうかは、本稿では確認していない)。
集合郵便受けが宅配ボックスと近い形式になれば、省スペース化や迷惑チラシの投函防止などの現状の課題が解決する可能性もある。配達する側にとっても、部屋番号ごとに配達せずとも、空いている郵便受けに投函することができるのであるから、効率化につながるのではないだろうか。
さらに、必要な情報は例えばデジタルサイネージなどを活用して画面表示にすることも考えられる。持ち帰りたい場合は、二次元コードで読み取るといった仕組みも実現できるかもしれない。

※1 総務省、引受郵便物等物数 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd21c120.html
※2 総務省 人口推計(2025年12月19日公表)https://www.stat.go.jp/data/jinsui/new.html?utm_source=chatgpt.com
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