2008年ごろ 、筆者はアメリカ ニューヨーク州(NY)に1年余り留学していた。
最初の1か月ほどは寮で暮らし、その後はルームシェアをしていたので、当時のことを振り返ってみようと思う。
ニューヨークの地理関係
ニューヨークと聞いてみなさんは何を思い浮かべるだろうか?ブロードウェイやセントラルパーク、エンパイア・ステート・ビルディング、ロックフェラーセンター、そして自由の女神だろうか。挙げた有名なスポットのうち、自由の女神以外はマンハッタン(Manhattan)にある。
地図を見てわかるように、マンハッタンはほかのエリアに比べるとだいぶ小さい。このコンパクトな島に5番街もウォール街もチャイナタウンもハーレムも収まっているのである。
留学前に地理的なことをたいして調べていなかった筆者は、勝手にマンハッタンは東京23区くらいの広さがあると思っていたが、まったく違っていた。東京23区の広さは約627 .5km²なのに対し、マンハッタンは約59.1 km²である。
さて、そうなると、当然マンハッタンで住宅を探すのはなかなか困難であり、賃料もなかなかのものである。そのため、当時の留学生はクイーンズ(Queens)やブルックリン(Brooklyn)、ニュージャージー州などに住むことが多かった。ニューヨークの人たちはマンハッタンのことを「the city」と呼んでおり、マンハッタンに行くことを「the cityに行く」と表現していたが、クイーンズもブルックリンも距離感としては東京23区内の移動のようなものである。
筆者もクイーンズでルームシェアをしていたが、マンハッタン中心部までメトロで15分ほどと近く、日本食スーパーもありとても便利だった。クイーンズは、トム・ホランドが演じた実写版スパイダーマンでピーターたちが住んでいたエリア、というとピンとくる方もいるかもしれない。マンハッタンから近いにも関わらずゆったりとした住宅街で、住みやすくて気に入っていた。当時のクイーンズは、高層ビルが立ち並ぶマンハッタンと比べて高いビルがあまりなく、2階建て・3階建ての建物が多かったと思う。
では、筆者はどのような建物でルームシェアをしていたのかというと、2階建ての一軒家である。その2階を3人でルームシェアしていた。駅から徒歩数分でとてもよい立地であったと思う。留学生仲間もだいたいルームシェアをしていたが、一軒家であったり、マンションであったりさまざまだった。
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(NYの住宅街、筆者撮影)
ルームシェアとは
日本では、マンションでルームシェアや同居をする場合、最初から「誰と同居するか」を決めて物件を選ぶことが多いのではないだろうか?一方、ニューヨークでは誰かがオーナー役となり、ほかの入居者は入れ替わることが多いようだった。
◆間取り
筆者が住んでいたのは、3bedroomタイプの間取りである。
・Kitchen(コンロが4口もあった)×1
・Bathroom×1
・Bedroom×3
マンハッタンに住むクラスメイトは、Studioタイプ(日本でいうワンルーム)の部屋を友人とシェアしていた。ニュージャージーでは、一軒家を丸ごと借りてルームシェアしていたケースが2、3あったと思うので、近いエリアでも住まいの形にはさまざまなバリエーションがある。
また、筆者は一軒家の2階に住んでいたが、1階には庭があり、1階の住人はたまにガーデンパーティーのような集まりを開いていた。
◆賃料
「ニューヨークでは誰かがオーナー役とになり」と前述したが、必ずしも所有者が「オーナー」としてその住宅に住んでルームシェアしているわけではない。私が住んでいた一軒家の2階は、賃借人のうちの一人がルームシェアとしてのオーナー役を担っており、私たちは彼女に賃料を払っていた。インターネット契約もオーナー役の彼女が対応していた。
賃料は、家賃以外にインターネットや水道光熱費も含んで毎月いくら、という風に決まっていた。ルームシェアしている友人たちも定額制が多かったと思う。
ちなみに1階のルームシェアのオーナー役は別の人で、何人住んでいるのかも知らなかった。
◆管理員
筆者はクラスメイトのステイ先など、少なくとも20以上の住宅に行ったが、「管理員」を見かけたのは2、3か所だけであった。
NYC Housing Maintenance Code(ニューヨーク市住宅維持管理法)ARTICLE 13(注1)によると、清掃サービスおよび管理員について以下の記載があった。
清掃サービスについて
(a) 清掃サービス(Janitorial services)とは、清掃および維持管理(軽微な修理を含む)、中央供給による暖房と給湯の提供、敷地内のごみ・廃棄物・灰の除去、ならびに歩道や側溝からの雪・氷・汚れその他の物質の除去をいう。
(b) 管理員(Janitor)とは、清掃サービスを行うために雇用された者をいう。
所有者の義務
(a) 複数住戸建物の所有者は、適切な清掃サービスを提供しなければならない。
(b) 9戸以上の複数住戸建物において、所有者は次のいずれかを行わなければならない:
(1) 所有者自身が居住している場合、自ら清掃サービスを行う。
(2) 管理員を配置する。
(3) 清掃サービスを24時間体制で、当局が承認する方法で提供する。
(c) 複数住戸建物の所有者または管理代理人は、建物内に管理員の氏名、住所(アパート番号を含む)、電話番号を記載した判読可能な標識を目立つ場所に掲示し、維持しなければならない。管理員が変更された場合、新しい標識は5日以内に掲示・維持すること。
日本の「管理員」の役割とは違うようである。たしかに筆者が訪ねた住宅は、戸数が少ないところが多かったので、この法律には該当しなかったのかもしれない。また、高級マンションには、清掃サービスとは別にConcierge / Doormanがいるところもあるようだが、日本の「管理員」とは異なる。(注2)
(注1)https://www.nyc.gov/assets/buildings/pdf/HousingMaintenanceCode.pdf
(注2)https://www.nycexclusiveapts.com/2023/08/luxury-building-new-york-city-concierge-the-ultimate-guide/
日本と違う?!ニューヨークの住環境(2008年当時)
住んでみて、日本と違うと感じた点をいくつかピックアップしてみよう。
1. 洗濯機
高級住宅や高層マンションであれば地下などに洗濯機が備え付けられていることもあるが、一軒家では洗濯機があるところは多くなかった。筆者が住んだ家にも洗濯機はなかったので、徒歩数分の距離にあるコインランドリーに行っていた。コインランドリーは有人の場合が多く、店員さんに洗濯から乾燥まで依頼することもできる(もちろん有料)。
2. 空調
クーラーと暖房は完備されており、暖房はセントラルヒーティングであった。暖房は、蒸気システムがメインらしく、街中で見かける白い蒸気はそのシステムが関係しているそうだ。また、クーラーは窓に設置するタイプが多かったと記憶している。
3. 公園が多い
とにかく公園が多い。有名なのはセントラルパークだが、ブライアントパークやリバーサイドパークなど中規模の公園も多く、散歩やジョギングだけでなく夏には野外映画館などのイベント、冬はセントラルパークでスケートも楽しめる。
(NYの公園、筆者撮影)
4. 地下鉄
地下鉄の路線が張り巡らされており、いろいろな場所に行くことができ住人達の足となっている。観光客にとってもとても便利である。聞いた話であるが、車の渋滞が激しいため、高級住宅に住む人々も車通勤でなく電車通勤が多いらしい。ただし、24時間運行といえども時刻表がなかったり、時間によっては本数が少なかったりするので注意が必要である。クイーンズボロ・プラザ駅(Queensboro Plaza)あたりから見るマンハッタンの景色は何度見ても素晴らしく、ある路線に乗ったときに車窓から自由の女神が見えたときは感動的だった。
5. エンタメ
ブロードウェイが有名だが、映画館や美術館・博物館が多いのも特徴だろう。観光名所として鉄板のメトロポリタン美術館やMOMA、アメリカ自然史博物館だけでなく、グッゲンハイムやホイットニー美術館など枚挙にいとまがない。
また、思わず足を止めてしまうようなストリートパフォーマンスに出会うことも多く、刺激の多い街である。
おわりに
クイーンズでのルームシェア先は、ニューヨークに着いてから見つけた場所である。行く前は、「本当に住む場所が見つかるのか」と不安もあったが、案外見つかるものだ。また、気に入る場所を見つけるまで何か所もめぐったことで、学校との往復では知ることができなかった場所に行けたのもよかった。
どの部屋もベッドやクーラーなど必要なものはだいたいそろっていたので、留学生にはありがたい限りだ。私はそこに、そのほかのこまごましたものを買い足していった。留学中とはいえ、スーツケースとボストンバッグで引っ越しができたのは興味深い経験であった。
ニューヨークの街並みや雰囲気を思い出しながら原稿を書いていると、とても懐かしい気持ちになった。現在のニューヨークのマンション事情も気になってきたので、また訪ねてみたい。
(筆者が住んでいた2000年代のことを中心とした記事となっており、現在の状況とは異なる可能性があります。)
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