改正区分所有法にも注目!マンション総合EXPO2025で学ぶ管理のヒント

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改正区分所有法にも注目!マンション総合EXPO2025で学ぶ管理のヒント

展示会に行ってみて

 20251030日(木)と31日(金)、インテックス大阪で開催された「住まい・建築・不動産の総合展 BREX関西2025」のマンション総合EXPOに行ってきた。当日はあいにくの雨だったが、会場内はマンション管理に関する多くの展示やセミナーでにぎわっていた。法改正や防災の新しい取り組みなど、印象に残ったポイントを紹介したい。

C196_1.png▲会場の様子

やはり注目は法改正

 

 区分所有法やマンション管理適正化法等の改正、マンション管理適正評価制度の最新動向、不動産業界におけるAI活用など、幅広いテーマのセミナーが開催されていた。その中でも、区分所有法・マンション管理適正化法等の法改正に関するセミナーは聴講者が多く、関心の高さがうかがえた。   
 法務省による『マンションと民事法制』と題したセミナーでは、改正区分所有法と関連法令の説明が行われた。その内容は、当研究所のセミナーやコラムで取り上げてきたものと重なる部分も多く、私は理解を深める心持ちで聴講した。その中でふと、「管理会社や管理組合の理事会、区分所有者にとっても重要な情報だが、果たしてどこまで住民に届いているのだろうか」と疑問が浮かんだ。
 たとえば、「出席者多数の原則」について、いつの総会決議から適用されるのか、正確に把握している人はどれほどいるだろうか。
 (参考コラム:集会室からの入退室に気を付けよう!出席者多数の原則 (改正区分所有法・改正マンション標準管理規約特集

施行日は令和8年4月1日なので、それ以降の総会から適用されることが原則である。ただ、当研究所のセミナーをご覧になった方はもちろんご存じだと思うが、改正区分所有法が適用されるかどうかは、総会の「開催日」ではなく「招集通知」のタイミングによって決まる。つまり、施行日前(令和8331日まで)に招集手続きが開始された集会は改正前の区分所有法が適用され、施行日後(令和841日以降)に招集手続きが開始された集会は改正区分所有法が適用される。※1

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4月に開催される総会であっても、招集手続きがとられたタイミングによって、適用される区分所有法が異なる、というわけだ。4月に総会の開催を予定している管理組合においては十分にご注意いただきたい。
 セミナーの後、大阪法務局のブースで資料を配付しているとのことだったので、立ち寄ってみた。多くの方が資料を受け取りに訪れており、担当の方が「こちらの資料もどうぞ」と関連する冊子を何冊も丁寧に渡してくださった。
 法律の条文そのものを読んでもなかなか理解しづらいかもしれないが、わかりやすく解説された資料や記事はさまざまある。当研究所のセミナーやコラムでも、法改正に関わる内容は非常に多くの方にご覧いただいている。改めて、マンションの未来に関わる法改正だからこそ、マンションを区分所有している方にはぜひ知っていただきたいと強く思った。 

1 老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律 附則2条2項
国土交通省ホームページ:https://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000224.html

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▲大阪法務局のブース。セミナー資料や改正に関わる資料を配付していた

防災関連のブースやセミナー

 昨年と同様に、大規模修繕工事や給排水工事に関連する企業など、建物設備に関するブースが並ぶ中、今年は防災用品・非常食といった防災に関するブースがより充実していたように思う。
 災害時、一般的にライフラインは電気、水道、ガスの順番で復旧すると言われている。2011年3月の東日本大震災では、電気の復旧に約1週間、水道とガスの復旧に約1ヶ月程度要したのに対し、2024年1月に発生した能登半島地震では、電気の復旧に約1ヶ月・水道の復旧に3ヶ月以上かかり、都市ガスは4日で復旧したという例もある。※2
 このように、災害の種類・規模・地域特性などによってライフラインの復旧にかかる時間は大きく異なるわけだが、「少し我慢すれば大丈夫」と思わずに「長期化するかもしれない」と考え、防災用品・非常食を備えたほうがよいだろう。
 そうした中で、非常食の進化は目覚ましいようだ。会場では、非常食コーナーが設けられ、4社がブースを設置していた。長期保存が可能なアルファ米や缶詰パンなどはもちろん、加熱不要でそのまま食べられるごはん入りのカレー、火や電気を使わずに水と発熱剤でレトルト食品を温めることができるセット、アレルギー対応食品や栄養強化食品など、予想以上に多くの種類の非常食が展示されていた。昨今は美味しい非常食が増えている印象があるが、それに加えて「手軽さ」「安全性」「温かさ」「栄養バランスの良さ」などの観点を重視したものも増えているようだ。災害が起こらないことを願うばかりだが、万一の時にもし復旧まで時間がかかったとしても、健康的で少しでも心休まる食事をとれるように備えたい。

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 また、『スポーツで防災に強くなる』という体験型セミナーでは、避難所の設営や物資の搬送をゲーム形式で体験する取り組みについて説明を聞いた。簡単なクイズゲームを通じてセミナー会場を動き回りながら、被災時に備えておくべきものや、考えておくべきことなどを学ぶことができた。
 もしマンションで助け合う必要が生じた時や、避難所に避難することになった時には、共同生活が前提となる。供給される物資をどこに、どのように収納するのか。けが人がいた場合にどう救助し、どのように看護するのか。実際に必要なスキル・知識は多岐にわたるということなどを聞き、私自身が「災害時の備え」として思い浮かべていたのは、あくまで家庭内の物的な備えに限られていたことに気がついた。
 非常食や水の確認、非常用トイレの設置といった作業に加えて、マンションや地域全体でどのようなことが起こりうるのかを考え、自分や家族の行動を具体的に想像してみよう。たとえば、隣に一人でお住まいの方の様子を見に行ったほうがいいかもしれない。ゴミはどこに、どのように保管するのが最適なのか。給水車から水を受け取ったらどうやって部屋まで運ぶのか。考えておくべきことは多岐にわたる。
 備蓄品を整えると、どれだけ備えているかが目に見える分、「これだけあればわが家は大丈夫」と安心してしまいがちだ。もちろん「物を備える」ことは重要だが、それだけではなく、行動や判断の準備も十分に備えておきたい。


※2 内閣府防災情報のページより参照(約9割の復旧を「復旧」として記載)
北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会 参考資料2 被害に関するデータ等
https://www.bousai.go.jp/kaigirep/chousakai/tohokukyokun/1/pdf/sub2.pdf
令和6年能登半島地震の電力・ガスにおける復旧対応等について
https://www.bousai.go.jp/jishin/noto/taisaku_wg_02/pdf/siryo2_1_3.pdf
令和6年能登半島地震による被害状況等について
https://www.bousai.go.jp/updates/r60101notojishin/r60101notojishin/index.html

展示会で得た学びとこれから

 分譲マンションの管理とは離れるが、宇宙と不動産に関するセミナーも印象的だった。最初は両者の結びつきが想像できなかったが、AIを活用し衛星画像と法務局や行政のデータを自動連携させ、価値ある不動産や空き家を発見するという内容であった。宇宙からの視点で空き家を探知できるとは、技術の進歩だけでなく、それを実際のサービスに結びつける人の発想に驚きを覚えた。
 会場に足を運び、実際に目で見て触れ、話を聞くことで、視野が広がり、多くの気づきを得ることができる。法改正や防災、AIなど、社会の変化はとにかく速い。こうした展示会は、最新動向を知るだけではなく、学びの場としても貴重だと感じる。マンション管理会社や管理組合がこうした情報を積極的に取り入れていくことが、安心で快適な暮らしを守ること、そしてよりよいマンションの未来につながるのではないかと思う。

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剱持 くるみ

執筆者

剱持 くるみ マンションみらい価値研究所

管理現場にて管理組合を担当する業務や、コンプライアンス・事業広報などを統括する業務を経験。現在は、事業の推進を担う部門に従事する傍ら、当研究所のコラムの執筆などをしている。

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