機械式駐車場装置は、保守点検費用だけでなく修繕費用も高額であることから「管理組合のお荷物」といわれる原因となっている。
とはいえ、立地にもよるが、駐車場使用料が高く設定できるなら支出よりも収入の方が上回るケースもある。そこで今回は、収支面から機械式駐車場を考えてみよう。
収入とは「駐車場収入」のこと。もちろん、駐車場に空きができ100%の使用料の獲得が期待できないケースも多いと思う。「駐車場収入」とは、駐車場使用料に稼働率をかけた実質の収入ということだ。支出には、電気代なども含まれるが、今回は、大きなところで「修繕費用」と「保守点検費用」から考察する。
機械式駐車場の収支とは
機械式駐車装置の保守をメーカーに依頼しているなら、将来発生する工事などのコストなどを提出してもらえ、長期修繕計画に組み込むことができる。竣工から部分的な修繕に加え、装置自体の入替まで含めた期間の修繕費用と保守点検費用の合計を総駐車場支出としよう。また、同期間の駐車場収入を総駐車場収入とする。
単純な話だが、(総駐車場収入)-(総駐車場支出)がプラスなら収支は黒字、マイナスなら収支は赤字となる。赤字になると、駐車場収入では採算が取れず、管理費や修繕積立金からの持ち出しということになってしまう。
単に管理費会計が圧迫気味で、機械式駐車場装置の保守点検費用のウェイトが大きく見えるだけなら、一概にこの装置がお荷物だとは断定はできない。管理費会計の収支構造そのものの問題である場合もあるからだ。お荷物になるのは、駐車場の収支がマイナスの場合であり、要因分析や見直しが必要になる。
まず、駐車場使用料でいえば、マンションで多い二段・多段式の装置では、概ね1万円程度以上なら、シミュレーション収支はプラスとなるケースは多い。反対に5千円以下だと収支をプラスにするのは難しい。管理費や修繕積立金からの持ち出しの状況になってしまう。
近隣相場より大幅に安く駐車場使用料を設定するケースもある。駐車場使用料の安さを目玉にして販売するような場合だ。そうすると、駐車場は「借りたもの勝ち」となり、機械式駐車場装置の維持のために駐車場を借りていない区分所有者の管理費や修繕積立金が、そっちに回ってしまう構図になる。平等の観点からいえば、駐車場使用料は近隣相場相当の設定で、かつ使用料も収支がプラスになる設定であるべきだろう。
修繕費用のヨミを当てるメーカー、外すメーカー
支出に関しては、長期修繕計画の精査がポイントになる。一部のメーカーは実際に故障が発生するタイミングで修繕周期を読み込み、修繕計画を作成してくれるところもある。よって、ヨミが大幅にずれない。しかし、多くのメーカーは大事を取った予防保全を周期として設定してしまっていることが多く、実際の倍以上の金額が、長期修繕計画に反映されるケースもある。さまざまなメーカーの機械式駐車場の改修経験のある管理会社などに相談し、修繕計画のカスタマイズが必要になるのだ。
機械式駐車場装置の保守点検会社の選び方
保守点検会社を選定するには、単に保守点検費用だけでなく、修繕工事の費用も含めて検討することが望ましい。独立系の保守点検会社が工事を実施する場合は、一般的にメーカーから部品を購入することになる。購入した部品代に経費等を上乗せしてしまえば、独立系の方がメーカーより高額な工事費になることもある。一般的には、保守点検費用の合計よりも、修繕工事費の合計額の方が、一桁以上大きい。この二つの支出を合計すると、メーカーの方が安価となる場合もある。管理費会計から支出する保守点検費と積立金会計から支出する修繕工事費用の両方を合わせて確認し、保守点検会社を選択するのが賢いやりかただといえる。
空き駐車場対策―撤去廃止から改造まで
マンションでは、駐車場が常に100%稼働するとは限らない。特に駅近のマンションでは、駐車場を借りる必要性が低下しやすい。駐車場賃料の相場が2万、3万円と高額な場合も車の保有が敬遠される。また経年と共にお住いの方の車離れも加速するだろう。契約台数が減り、空き区画が出やすくなるということだ。
駐車場の空き区画対策では、外部への貸し出しという方法もあるが、今回は技術的な面から解説しよう。
機械式駐車装置は契約車両がなくても、保守点検費用や修繕費用が発生する。装置の種類やブロックのサイズなど前提条件など調査は必要になるが、契約台数に合わせ、撤去したほうが良い場合も多い。一般的に、単純昇降装置なら上下の列単位で、横行昇降装置でもブロック単位で装置の撤去廃止は可能だ。契約台数の減少に合わせて、行政が定める附置義務台数の範囲内で部分的に廃止し、余計な支出を抑える対策は有効だ。撤去費用は発生してしまうが、トータルで見て、意外と大きな支出の削減が可能になる。
また、マンションで多い二段・多段式の装置は改造が可能な場合がある。改造とは、3段式を2段式に改造して、車高の高い車が駐車できるようにする様な方法だ。台数の削減に加え、今まで駐車できなかったハイルーフなど、外部の駐車場を使っている人の車を受け入れることができるようになる。なお、メリーゴーランド方式の様な大型装置でも部分廃止や改造が可能となるケースもある。いずれにしてもこれらの場合は、メーカーと相談する必要があるが、チャレンジする意味はあるだろう。