“住みつなぎ”ができないマンションの行く末

マンションを取り巻くリスク高齢化社会
“住みつなぎ”ができないマンションの行く末

2025年の日本。
あと数年のうちに、3人に1人が65歳以上となり、10人に1人が認知症を患うともいわれる。
もちろん、マンション住民も同様に高齢化は進む。
国土交通省のデータによれば、60歳以上の区分所有者(世帯主)の年齢比率は、2013年には50%を超えた。2025年には70%を超えていく勢いなのだ。
さて、わたしたちの住む未来はどうなってしまうのだろうか。

「マンションの平均築年数30年」がやってくる

ファミリータイプのマンションは、購入者ターゲットを若いファミリーと想定し、おおよその年齢や年収、家族構成などを想定して販売される。その想定がだいたい35歳前後だ。その結果、同じような世代が一斉に入居し、30年が経過すると35歳前後で入居した多くの世帯が、みんな65歳前後ということになる。
その30年が経過したマンションが、2025年時点での平均築年数という話だ。
また、経年と共に永住志向は高まりやすい。自分のマンションを“終の棲家”と決め込む人々も増えてくる。そんな状況で、管理組合はどうなっていくのだろうか。

管理不全マンションは管理会社も“お手上げ”

管理組合の理事の実務は、体力も気力も必要になる。理事の成り手不足は、高経年マンションでよくいわれている問題だ。
理事会が機能しなくなれば、管理不全状態に陥ることになる。中古で購入した若い世代が徐々に管理組合運営の中核を担ってくれるのであれば、問題にはならないのだが、どうも循環がうまくいかないのが、日本のマンションの実態のようだ。

よくある管理不全マンションのストーリーは、お一人で頑張ってこられた理事長が、転居したり、入院したりして、理事長をリタイアすることで、直後に管理不全に陥ってしまうケース。そもそも、一人で頑張ってきたということは、彼に替わる人材がいなかった、ということ。

築年数の浅いマンションは、住んでいる方はまだ若くとも、無関心な人が多い。やる気にさえなれば、理事を務める体力も気力もある人がたくさんいる。しかし、高経年マンションの場合は、やる気はあっても体力と気力がついてこないのだ。

理事長は区分所有法でいう「管理者」だ。総会で決められたことを執行し、保存行為を行うのが役割。仮に、管理会社に委託していたとしても、理事長の承認なしでは管理会社が支払いを代行することはできない。要は、管理会社は理事長の代わりはできない。結果、「管理者」不在の管理組合では、管理委託契約に基づく業務を履行できなくなってしまう。この状態は、管理会社である企業にとっては十分すぎるリスク。当然、もうこれ以上、管理はできませんと解約を申し入れるしかなくなる。

追い打ちをかける“空き家問題”

もう一つは、「空き家」の問題だ。
日本の空き家率は13.5%(2013年総務省)。もちろん、これは限界集落や古い戸建てが底上げしている数字だが、2016年のニッセイ基礎研究所が発表した都市の持ち家マンションの空き家率は、東京都区部7.3%、福岡市9.4%、札幌市と名古屋市11.0%、大阪市14.7%だった。
空き家とはいっても、転勤で一時転居するが、戻ってくるので空き家にしておくなどの健全な空き家もあるだろう。

問題なのは、こんなケース。
長年暮らしたマンションを“終の棲家”とし人生を全うする。相続した子供たちは、すでに50歳代以上。自分の住まいもあり、結局、転売するか、賃貸に出すことになるが、若い世代にとって住みたいと思えないマンションであれば、売るに売れず貸すに貸せずで、空き家になってしまうケースだ。
若い世代への住みつなぎができないことは、理事の成り手不足だけでなく、空き家の増加につながっていく。そういったマンションを相続した子にとっては、固定資産税や管理費等を払い続ける負の資産でしかない。
また、相続を放棄されてしまうと、管理組合としては、管理費等の請求先がない住戸という特異点が発生してしまう。

ここまで、高齢化が進んだマンションの行く末を悲観的にまとめてみた。
解決策は他のコラムで紹介するが、ヒントは世代を超えて住みつなぐことだ。
コミュニティも良好で、建物の維持修繕や耐震改修などの改良がしっかりなされているなど、若い世代にとって住んでみたいと思える魅力が備わっていれば、住みつなぐことができる。
そうすれば、高経年マンションも明るい未来が見えてくるだろう。

丸山 肇
執筆者丸山 肇

マンション管理士。株式会社リクルートにて住宅情報北海道版編集長、金融機関への転籍を経て、大和ライフネクスト入社。管理企画部長・東京支社長などを歴任。マンションみらい価値研究所にてコラムニストとして活動。

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